水質汚染の原因や影響とは?世界や日本の現状と私たちにできる対策を解説
環境

2026.02.26

水質汚染の原因や影響とは?世界や日本の現状と私たちにできる対策を解説

水質汚染とは、人間の活動が主な原因として引き起こされる深刻な環境問題の一つとされています。

生態系や人間の健康、経済への悪影響が懸念されているため、国や自治体はもちろん、世界中で対策が進められています。また、水質汚染の原因には私たちの日々の生活も関係しているので、個人による対策も欠かせません。

本コラムでは、水質汚染の原因や影響、世界や日本の現状を、私たちにできる対策とあわせてわかりやすく解説します。

水質汚染とは?定義をわかりやすく解説

水質汚染とは、川や湖、沼などが本来持つ自浄作用の限界を超えて汚れ、悪化した水質が戻りにくくなる状態を意味します。

そもそも水質とは、純水に、ナトリウムやカルシウムなどの溶解物質、粘土粒子や細菌、微生物といった不純物が含まれて生じる水の性質を表したもので、水質の良し悪しは不純物の種類や量によって決まります。

日本において河川や湖沼の水質が悪化する主な原因は、実は家庭から出る排水(生活排水)です。

日本の工場から出る排水(工場排水)については、厳しい規制を設けるなどの対策が取られ、その効果も目に見えています。

一方、生活排水に関しては、下水道法や浄化槽法などによる設備面の規定はありますが、家庭から出る排水そのものについては、個人に対して直接的な排出の規制や罰則が設けられているわけではありません。

また、すべての生活排水を処理施設で処理できるわけではなく、処理が行き届かない排水は川へ直接流れることになります。そのため、特に人が多く住む地域の湖、沼、池では、生活排水による水質汚染が進んでいます。

なお、世界の水問題としてよく耳にする海洋汚染も、水質汚染の一つです。

海洋汚染について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

海洋汚染に立ち向かうために私たちにできることとは?具体的な対策を7つ紹介

※ 汚れを沈める・吸着する・分解するといった自らの仕組みで、水質をきれいにする働きのこと

水質汚染の3つの原因

水質汚染の主な原因は、人間の活動と自然環境の2つに大きく分かれます。人間の活動によるものでいえば生活排水、産業排水などが挙げられます。自然による影響で言えば地球温暖化が主です。

ただし、地球温暖化や豪雨においても人間の活動が深く関わります。

ここでは、3つの原因による水質汚染と人間の活動の関係をわかりやすく解説します。

原因①生活排水

水質汚染を引き起こす主な原因の一つである生活排水とは、台所、洗濯、風呂、トイレなど、私たちの日常生活のなかで出る排水すべてを指します。

これらの生活排水は、通常、下水処理施設できれいにしてから川へと流されるため、適切に処理されれば大きな水質汚染は起こりにくいとされてています。しかし、油などの物質は完全には除去できず、食べ物くずや農薬などは下水処理施設の処理性能を低下させる原因にもなります。このことから、生活排水による水質汚染は依然として課題となっています。

なかでも、台所から出る排水は、食べ残しや油などで特に汚れています。台所で水を流す行為は日常的に行われているため、1回あたりの出す汚れが少なかったとしても、積み重なると深刻な水質汚染につながってしまうでしょう。

例えば、醤油の原液(小皿1杯分・15ml)が河川に流れた場合、この汚濁を魚が住める水質にまできれいにするには、450リットルもの水が必要となります。一般的な浴槽の容量は約200リットルであることを踏まえると、たった1杯分の醤油ですらも浄化するのが難しいとわかるでしょう。

原因②産業排水

水質汚染の原因の一つである産業排水とは、工場などでの生産活動から排出される排水のことです。

日本における水質汚染の主な原因は、かつては産業排水でしたが、現代では大きく改善されました。工場に対する規制の強化や排水処理対策が行われたためです。

しかし、世界的にみれば産業排水はいまだに、水質汚染を改善するための重要な課題です。

例えば、世界の産業排水による水質汚染の約20%は、繊維製品を染色・仕上げする工程に原因があります。海外では、繊維工場の近くを流れる川が、排水によって目に見えてわかるほど変色した事例もあります。

原因③地球温暖化

自然現象が水質汚染を招く原因として、地球温暖化が挙げられます。地球温暖化は、川や湖、海などの温度の上昇を引き起こし、これが水質汚染につながるのです。

地球温暖化が進むと、水流や水位に変化が起きます。水の量が少なくなれば水の循環が悪くなります。逆に増えてはんらんが起これば、沿岸域や湾のような閉ざされた海に濁った水や泥が流れ込み、水質が悪化する恐れがあります。

また、地球温暖化による豪雨で工場をはじめとする事業所が浸水して、有害物質や化学薬品が流出し、近隣の川や海などが汚染されるケースもあります。

また、湖や沼では、地球温暖化の原因となるメタンガスが自然発生しますが、自浄作用が弱まった水域ではこの発生量が増えます。これによってさらに地球温暖化が進行するという、悪循環も問題です。

地球温暖化について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

【その小さな一歩が未来を変える】一人ひとりができる地球温暖化対策について解説

水質汚染が及ぼす影響

水質汚染は、自然界の自浄作用を超えて水質が汚れ、自然環境や私たち人間に悪影響を与える環境問題として対策が求められています。

ここでは、水質汚染は自然環境や私たち人間に対して、具体的にどのような悪影響を及ぼすのかを解説します。

生態系を崩す恐れがある

水質汚染は、現在の生態系を崩す恐れがあります。

水環境は、水量と水質、水生生物、水辺地といったさまざまな要素から構成されており、互いに関係・影響しあっています。そのため、水質の汚染が起これば、水環境全体のバランスが崩れるのです。

実際に、淡水や海洋の汚染では、多くの水生生物が絶滅の危機にさらされています。

例えば、南アジアから東南アジアに生息するビロードカワウソは、2025年時点で絶滅の危機に瀕している生物です。その背景には、狩猟や湿地環境の開発もありますが、水質汚染により、ビロードカワウソの獲物である魚類や甲殻類が減少した影響もあると考えられています。

人間の健康に悪影響を与える恐れがある

水質汚染は、汚染された海や川に生息している魚介類の摂取や、汚染された水域周辺の土壌を通じて、人間の健康に悪影響を与える恐れがあります。

日本でも、1950年代や1960年代には、水質汚染を原因とする公害病が話題になりました。

しかし、その後、産業排水における汚染物質の許容限度が定められ、厳しい取り締まりなどの対策が取られたため、日本の水質汚染は過去に比べると大きく改善しました。実際に「水の安全性について日ごろから意識している」という方は、現代では少ないのではないでしょうか。

一方で、世界に目を向ければ、衛生設備が整っていない水道や下水設備などがない国や地域があります。そこでは汚染された水を飲んだり、料理に使ったりしなければならず、その結果、健康被害を訴える人々が数多くいて問題となっています。

経済に損害を与える恐れがある

水質汚染は、水生生物の減少による漁業への影響、景観を損なうことなどによる観光業への打撃などにより、経済に悪影響を及ぼす恐れもあります。

例えば、経済的な損失を生む水質の変化として、湖沼や海域の富栄養化(ふえいようか)が挙げられます。

富栄養化とは、水中の窒素・リンが水質汚染により必要以上に増え、それらを栄養として利用する植物プランクトンが急速に増えた状態のことです。この状態が進行すると、水面が緑色になる「アオコ」という現象が見られるようになります。

植物プランクトンはやがてバクテリアによって分解されますが、その際に酸素が使われます。異常増殖時には、水中の酸素が大量に使われるため、そこに住む魚をはじめとした水生生物が生息できなくなってしまうのです。その結果、魚が減って漁業に悪影響を及ぼします。

さらに、植物プランクトンは、分解されるときに腐ったようなにおいを発して水道水に嫌なにおいや味がつく原因となる場合があるうえ、景観を損なう原因になることもあります。美しい景色が損なわれ水辺が汚染されれば、観光客が減り、経済的な損失につながるという懸念もあります。

日本と世界における水質汚染の現状と対策

水質汚染は、生態系や人間の健康、経済などにさまざまな悪影響を与える恐れがあるため、日本を含む世界で対策が進められています。

ここでは、日本と世界における水質汚染の現状と対策を解説します。

日本の水質汚染の現状と対策

日本では、水質汚染対策の関連法を整備するなど、水質の改善に向けてさまざまな取り組みがこれまでに行われてきました。結果として、現在は過去に比べて大きく改善しています。

水質汚染対策に関連する法律は複数ありますが、代表的なところでは、1971年に施行された水質汚濁防止法があります。工場からの排水による汚染を防ぐための法律であり、排水に含まれる有害物質の許容限度や、違反した場合の刑罰が定められています。

生活排水による水質汚染についても、同じく水質汚濁防止法で「生活排水対策の推進」として定められています。

(国民の責務)第十四条の六

何人も、公共用水域の水質の保全を図るため、調理くず、廃食用油等の処理、洗剤の使用等を適正に行うよう心がけるとともに、国又は地方公共団体による生活排水対策の実施に協力しなければならない

引用元:デジタル庁(e-Gov)

法律でも定められているように、生活排水による水質汚染に関しては、私たち一人ひとりが生活のうえで対策を心掛けることが重要だといえるでしょう。

世界の水質汚染の現状と対策

水質汚染は、世界的に深刻な環境問題の一つだと考えられており、現在は世界規模で取り組みが進められています。

例えば、世界各国の政府や国際機関、学識者、企業、NGO(非政府組織)により、包括的な水の政策立案・政策提言を行なう研究機関として世界水会議(WWC)が1996年に設立されました。

世界水会議の設立以降、世界水フォーラム(WWF)が3年に1度開催されており、世界各国の水に関する関係者が集まり、水問題解決のための議論を行っています。

そのほかでは、2016年にスタートした国際目標SDGs(持続可能な開発目標)のなかには、「安全な水とトイレを世界中に」や「海の豊かさを守ろう」といった水質汚染に関連するものもあります。

世界の水問題やSDGsについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

世界水の日とは?水不足による問題や、私たちができることを解説

【小学生向け】SDGsって何だろう?わかりやすく17の目標などを解説!

水質汚染を防ぐために!私たちにできること

生活排水について、日ごろから気を配ることが、私たちにできる水質汚染対策です。

具体的には、次のような行動が挙げられます。

  • 流しの排水口に目の細かい水切りネットを取り付ける
  • 食器についた汚れは、キッチンペーパーなどで拭き取ってから洗う
  • 食事は食べ切れる量をつくる。捨てざるを得ないとき、特に汁物に関してはキッチンペーパーで吸い取るなどして、燃やせるゴミとして捨てる
  • 洗濯洗剤やシャンプーなどは、使い過ぎず、適量を使うように心掛ける
  • 家の周りの側溝、排水路を定期的に掃除する

汚れや油など、水質汚染につながるものが排水口へと流れないようにすることが大切です。

公益財団法人イオン1%クラブ「イオン チアーズクラブ」について

公益財団法人イオン1%クラブが運営する「イオン チアーズクラブ」は、全国の小学校1年生から中学校3年生までを対象とした活動団体です。

イオン チアーズクラブでは、環境や社会に対して興味・関心を持ち、考える力を育むため、さまざまな体験学習を実施しています。

体験学習では子どもたちがメンバーで協力し合い、一丸となって活動に取り組むため、集団行動における社会的なルールやマナーも学べます。

「楽しみながら環境や社会について学んでほしい」と考えている保護者の方は、ぜひお子さまのイオン チアーズクラブへの参加を検討してみてはいかがでしょうか。

「イオン チアーズクラブ」で開催された活動

ここでは、イオン チアーズクラブでこれまでに実施してきた活動内容の一部をご紹介します。

下水道科学館への訪問

イオン チアーズクラブのメンバーは夏休みを利用し、愛知県のメタウォーター下水道科学館あいちを訪れました。メタウォーター下水道科学館あいちは下水処理の仕組みや役割、地球をめぐる水についてわかりやすく学べる施設です。

館内に入るなり滝の流れる大きな山を見たメンバーは「すごい!」と声を上げていました。展示の内容に関するクイズにも意欲的に取り組み、スタッフと一緒に答え合わせをしながら盛り上がっていました。

ホタルの里で環境学習

イオン チアーズクラブのメンバーたちは愛知県にある岡崎市ホタル学校を訪れ、川の生き物を中心とした環境学習を行いました。

まずはペットボトルで魚を捕獲するための簡単な仕掛けを作り、重石を入れて川に沈めました。雨が降っていたこともあって捕れるか心配でしたが、あとで回収した際には少ないながらも魚が入っていて、メンバーたちは大喜びでした。

教室では川で見つけた生き物でビンゴをしたり、背中に生き物のカードを貼り付けて質問をしながら貼られた生き物を当てるゲームなどを行いました。

また、水に関連する言葉を模造紙に貼り付け、関係する言葉をつないでいく「水の言葉」という体験も実施しました。どのような言葉を選んだのか、どんな発見があったのかなどの発表も行いましたが、初めから積極的な意見交換が行われていました。

河川の水質調査

毎年6月5日は「環境の日」に合わせて所定の調査キットを使用し、水質汚染の度合いなどを計測しています。

メンバーは、身近な水環境について学び、魚や水生昆虫の生息地である河川への理解を深めました。

また、過去には環境省などが推進する「海ごみゼロウィーク」に賛同し、河川の清掃活動にも参加したこともあります。

この他にも、イオン チアーズクラブではさまざまな活動を行っています。

イオン チアーズクラブの活動をさらに詳しく知りたい方は以下のURLからご覧ください。

子どもたちが主役!環境・社会をテーマにした体験学習で楽しく学ぼう!

まとめ

水質汚染の原因には、産業排水や地球温暖化、豪雨などに加えて、私たちの暮らしのなかで出る生活排水の影響も挙げられます。

だからこそ、国や国際規模の対策に任せきりにはせず、私たち一人ひとりの意識や行動を変えていくことが大切です。

食器に残った食べ残しや油を排水口にそのまま流さずに拭き取ってから洗うなど、普段の行動を一つ、変えてみてはいかがでしょうか。本コラムを読むことをはじめ、環境問題に対する基礎知識を身に着けることも大切です。

まずは、負担なくできる小さなことから、水を守るための行動を始めましょう。

公益財団法人イオン1%クラブについて

公益財団法人イオン1%クラブは、1990年に設立され、「お客さまからいただいた利益を社会のために役立てる」という想いのもと、「子どもたちの健全な育成」「諸外国との友好親善」「地域の発展への貢献」「災害復興支援」を主な事業領域として、環境・社会貢献活動に取り組んでいます。

公益財団法人イオン1%クラブでは、小学生を中心とし、体験学習を通して自然や環境に向き合える「イオン チアーズクラブ」も運営しています。

他にも、中学生が環境に関する社会問題をテーマに、自ら考え、書く力を養う「中学生作文コンクール」や、高校生が日ごろ取り組んでいる環境保全に関する活動を発表し、表現力や発信力を高めることを目的とした「イオン エコワングランプリ」などさまざまな活動を実施しています。

小学生から高校生まで幅広い年齢のお子さんがさまざまな体験学習を通してSDGsに触れられる活動を多数実施していますので、ぜひ下のURLからご覧ください。

公益財団法人イオン1%クラブの活動内容を詳しく知りたい方はこちら

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