2024.07.23 (更新日: 2024.07.25)
リサイクルの種類は3つ!リサイクル後の例もあわせて簡単に解説
リサイクルという言葉は聞き慣れていると思いますが、実はリサイクルにはいくつか種類があることをご存じでしょうか。
具体的にはマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルの3種類があります。
本コラムでは、リサイクルの重要性から3種類のリサイクルの解説、またリサイクルされた後はどうなるのかなどについて紹介します。
目次
そもそもリサイクルとは?
そもそも「リサイクル」とは、不用品・廃棄物を再生して利用することを意味します。
不用品や廃棄物をリサイクルすることにより、資源の節約や環境保護に繋がります。
例えば、プラスチックは家庭や企業から回収され、種類ごとに分別されます。
その後細かく粉砕され、再び溶かして新しいプラスチック製品に成形されます。
このようにして本来はゴミになってしまうものでも、リサイクルすることにより新しい製品に生まれ変わることができます。
リサイクルはゴミの量を減らし、埋立地の利用を減少させるだけでなく、ゴミの処理で使用されるエネルギーの節約にも貢献します。
私たち一人ひとりがリサイクルに参加することで、持続可能な社会の実現に近づくことができます。
リサイクルはなぜ重要視されているの?
実はリサイクルは古くから行われており、江戸時代にはトイレの汚水を畑の肥料にしたり、ボロボロになった着物を雑巾や赤ちゃん用の布おむつとして再利用したり、日常的にリサイクルが行われていました。
しかし、1960年代の高度経済成長により、大量生産、大量消費社会の時代が到来しました。
この時期から耐久消費財の買い換えや使い捨て型の商品・容器の普及など、ライフスタイルが大きく変化し始め、工場や家庭から出るゴミの量が急激に増加し、ゴミ問題が深刻になりました。
またそれらのゴミは燃やして処分するのが当たり前だったため、処分の過程で発生する物質が大気汚染や地球温暖化などの環境問題を増長させました。
近年は環境問題の解決に向けて、プラスチックゴミなどの増加や廃棄物の処理方法が具体的課題として挙げられており、その対策としてリサイクルが重要視されています。
日本のリサイクルは3種類!具体例を交えて解説
実はリサイクルにはいくつかの種類があるのをご存知でしょうか?
リサイクルには大きく分けて3つの種類があります。
- マテリアルリサイクル
- ケミカルリサイクル
- サーマルリサイクル
それぞれのリサイクルの種類について、具体例を交えながら詳しく解説します。
マテリアルリサイクル
マテリアルリサイクルは、廃棄物を新たな製品の原材料として再利用する種類のリサイクルです。
同じ製品の原材料にリサイクルされることもあれば、別の製品の原材料にリサイクルされることもあります。
マテリアルリサイクルはさらに細かく以下の2つに分けられます。
- レベルマテリアルリサイクル
- ダウンマテリアルリサイクル
レベルマテリアルリサイクルは、廃棄されたペットボトルを新しいペットボトルにするように、廃棄物を原材料として廃棄前と類似の製品を製造する種類のリサイクルで、水平リサイクルとも呼ばれます。
プラスチックのレベルマテリアルリサイクルでは、石油からプラスチックを製造するよりも使用する資源やエネルギーが少なくて済むため、二酸化炭素排出量の削減が期待できます。
ダウンマテリアルサイクルは、廃棄物が廃棄前と同じ製品を製造するための原材料として品質を満たさない場合、回収した製品を細かく砕き、品質レベルを一段階下げた製品原材料として再利用する種類です。
マテリアルサイクルの例は次のとおりです。
リサイクル前 | リサイクル後 |
---|---|
プラスチック | ・ペットボトルを製造する(レベルマテリアルリサイクル) ・詰め替え容器を製造する(レベルマテリアルリサイクル) ・衣類や食品用トレーなどに作りかえる(ダウンマテリアルリサイクル) |
ビニール | ・ビニールパイプを製造する(レベルマテリアルリサイクル) ・ビニールタイルを製造する(レベルマテリアルリサイクル) ・床材などに作りかえる(ダウンマテリアルサイクル) |
アルミ | ・アルミ缶を製造する(レベルマテリアルリサイクル) ・自動車部品を製造する |
ケミカルリサイクル
ケミカルリサイクルは、廃プラスチックを化学合成によって他の物質に変え、新たな製品の原材料として再利用する種類のリサイクルです。
一般社団法人プラスチック循環利用協会によると、2021年の廃プラスチック総排出量は約824万トンで、全体の4%にあたる29万トンの廃プラスチックがケミカルリサイクルで処理されています。
廃プラスチックの処理問題が深刻化してきている昨今、注目を集めているリサイクルの種類です。
ケミカルリサイクルの例は次のとおりです。
リサイクル前 | リサイクル後 |
---|---|
廃プラスチック | ・廃プラスチックを溶かして分解し、水素や二酸化炭素などの合成ガスを取り出す ・廃プラスチックを分解して取り出した水素を原料としてアンモニアを製造する ・廃プラスチックを分解して取り出した二酸化炭素から炭酸ガスやドライアイスを製造する ・廃プラスチックを工場などでコークスの代わりの燃料として使う ・廃プラスチックを油に戻す |
サーマルリサイクル
サーマルリサイクルは、廃棄物を焼却する際に発生するエネルギーを回収して利用する種類のリサイクルです。
プラスチックや使用済みのてんぷら油、木材などを焼却した際に出る熱エネルギーを利用して、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルに適さないものをエネルギーとして有効利用しています。
サーマルリサイクルの例は次のとおりです。
リサイクル前 | リサイクル後 |
---|---|
プラスチック | ・温水プールの温度調整やビニールハウスの温度調整に利用する ・工場などの暖房、給湯に利用する |
使用済みのてんぷら油 | ・バイオディーゼル燃料を生成する |
木材 | ・バイオマス燃料を生成する |
先に挙げた一般社団法人プラスチック循環利用協会の公表によると、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルによるプラスチックの有効利用率は約87%にのぼっています。
さらに有効利用率を高めていくために、リサイクルについての知識を深め、リサイクルできるものは積極的にリサイクルしていきましょう。
3種類のリサイクルに対する課題
マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルの3つのリサイクル方法を紹介してきました。
これらのリサイクル方法は環境にいいことばかりではなく、それぞれ課題もあります。
どのような課題があるのか、それぞれのリサイクル方法ごとに具体的に解説します。
マテリアルリサイクルの課題
マテリアルリサイクルの課題としては以下の3つがあります。
- リサイクル設備の課題
- リサイクルされた原材料の品質の課題
- コストの課題
日本は分別や再利用のためのリサイクル設備が不足していることから、マテリアルリサイクルの割合は21%にとどまっており、マテリアルリサイクルに積極的に取り組んでいるヨーロッパ諸国と比べると低いのが現状です。
マテリアルリサイクルをより普及させるためには、分別や再利用のためのリサイクル施設の増設が必要です。
他にも、マテリアルリサイクルをすると原材料の品質が劣化してしまうという課題があります。
リサイクルの過程で熱により物質の性質が変化してしまったり、別の材料が混入してしまったりすることで品質が落ちてしまいます。
最後に、マテリアルリサイクルには高いコストがかかるという課題があります。
マテリアルリサイクルの過程には廃棄物の収集、分別、再生処理、製品化、輸送などがあります。
再生処理や製品化する設備の費用、廃棄物の収集や分別、輸送の際の人件費など、マテリアルリサイクルの過程でさまざまなコストがかさんでしまいます。
今後はこれらの課題を解決し、マテリアルリサイクルを普及していくことが重要です。
ケミカルリサイクルの課題
ケミカルリサイクルの課題としては以下の3つがあります。
- リサイクル技術の課題
- リサイクル処理で使用される資源の課題
- コストの課題
ケミカルリサイクルは高度なリサイクル技術を必要とします。
低品質な廃プラスチックをケミカルリサイクルの過程で熱分解すると、生成される油に有害物質が含まれる可能性があり、これを防ぐためには熱分解前に選別や洗浄が必要です。
そのため、安全の都合上、高度なリサイクル技術が求められます。
他にも、ケミカルリサイクル処理にはエネルギーが必要で、エネルギーを生み出すためには石油や石炭などの資源が必要です。
資源を有効活用するためのリサイクルが、逆に資源を消費し節約にならないことがあるのです。
最後に、ケミカルリサイクルはマテリアルリサイクルよりも高いコストがかかる傾向があります。
ケミカルリサイクルでは廃プラスチックを分子に分解する工程があり、そのための設備投資のコストが高くなります。
中でも油化という手法では、特に設備投資額が大きくなりやすいことが課題となっています。
サーマルリサイクルの課題
サーマルリサイクルの課題としては以下の2つがあります。
- 二酸化炭素やダイオキシン発生リスクの課題
- コストの課題
サーマルリサイクルは廃棄物を焼却する際に、温室効果ガスである二酸化炭素や、有害物質のダイオキシンが発生してしまうリスクがあります。
また、サーマルリサイクルは焼却設備や排ガス処理設備が必要なため、設備投資に高いコストがかかることが課題となっています。
どのリサイクル方法も固有の課題があり、それらの課題を解決しつつ、普及させていくことが重要です。
リサイクルを含めた5つのR
環境に配慮した活動は、本コラムで紹介した3つのリサイクルだけではありません。
ここでは、リサイクルを理解した方に向けて、さらにリサイクルを含む環境に配慮した5つのR(5R)について解説します。
- リサイクル
- リデュース
- リユース
- リフューズ
- リペア
リサイクル
リサイクルは、ここまで説明してきた通り、一度使用したものを再度資源に戻すことです。
【リサイクルの例】
- ペットボトルをリサイクルして洋服などを作る
- 不要になったチラシなどの古紙をリサイクルしてトイレットペーパーなどを作る
- 廃棄物をゴミ焼却炉で燃やしてその熱を工場で利用する など
リデュース
リデュースは、ゴミを減らすことです。
【リデュースの例】
- エコバッグ、マイバッグを持参してレジ袋を使わない
- マイボトルを使ってペットボトルを使わない
- マイ箸を使って割り箸を使わない など
リサイクルも環境にとっては良いことですが、費用やエネルギーなどがかかるため、費用やエネルギーをかけなくてもできる「ゴミの量を減らす」という心がけがとても大切なのです。
リユース
リユースは、一度使用したものを繰り返し使うことです。
【リユースの例】
- 着なくなった洋服をリサイクルショップやフリマに出す
- リターナブル瓶製品を使う
- シャンプーや洗剤などは詰め替え用を使う など
使ったものをすぐゴミに出してしまうのではなく、何度も使えるよう工夫したり、リサイクルショップやフリマを利用したり、リユースを実践することで結果的にゴミの減量化にもつながります。
リフューズ
リフューズは、不要なものを受け取らない・断ることです。
【リフューズの例】
- 駅前や店舗など、街で配られているチラシやティッシュを受け取らない・断る
- エコバッグやマイバッグを持参してレジ袋を受け取らない・断る
- 今すぐに使う予定がないものは受け取らない・断る など
配られているチラシやティッシュをもらったり、買い物でレジ袋を使ったりして、家に持ち帰ったあと、不要になって捨ててしまうことも多いのではないでしょうか?
今すぐに使う予定がない場合や、エコバッグやマイバッグなど代用できるものがある場合は、ゴミを増やさないためにもリフューズを心がけてください。
リペア
リペアは、壊れたものをすぐに捨てず、修理して長く使うことです。
【リペアの例】
- 壊れてしまったコップを接着剤などで修理して使う
- 家電製品など壊れてしまったものを修理店で修理してもらって使う
- 破れやほつれがある服を修繕・リメイクして使う など
ものが長く使われるようになると、ゴミの減量につながるのはもちろんのこと、新たな資源の採掘や加工、製造に伴う環境への負担軽減にもなります。
まとめ
本コラムでは、そもそもリサイクルとは何か、リサイクルが注目されている理由やリサイクルの種類について紹介しました。
リサイクルの種類や課題について知ることは、持続的で住みやすい環境を維持していくための第一歩です。
今後は各家庭で取り組めるリサイクルを意識して、正しいゴミの分別を心がけるようにしましょう。
また、本コラムを読んで「もっとSDGsについて知りたい」「私たちにできることが知りたい」という皆さまは、公益財団法人イオン1%クラブのホームページをぜひご覧ください。
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