大気汚染の原因とは?健康・環境への影響や対策までわかりやすく解説
環境

2026.01.27

大気汚染の原因とは?健康・環境への影響や対策までわかりやすく解説

大気汚染の主な原因は、人々の経済活動や社会活動により排出される汚染物質です。

大気汚染は私たちの健康や地球環境に多大な悪影響を及ぼすため、日本をはじめ世界各国で対策が進められています。

大気汚染にかかわるPM2.5や黄砂といった言葉は天気予報などでも耳にしますが、その危険性がいまいちわからないという方も多いでしょう。

本コラムでは、大気汚染の原因だけでなく、その影響や、国内外における現状と対策についてまとめました。これを読めば、大気汚染の基礎知識を広く学べるでしょう。

大気汚染とは何?日本で問題になり始めたのはいつから?

大気汚染とは、空気の質が悪化した状態のことを指し、現代社会が抱える環境問題の一つです。しかし、その意味や発生の背景を正しく理解している方は少ないのではないでしょうか。

ここでは、大気汚染の定義と原因物質、さらには日本で社会問題として認識されるようになった背景を解説します。

大気汚染の定義と原因物質

大気汚染の定義は、「空気中に放出された微粒子や特定の気体、あるいはそのほかの汚染物質が、自然の状態よりも増加すること」です。

<主な大気汚染物質>

物質名特徴
二酸化硫黄・硫黄酸化物の一種
・硫黄を含む石油や石炭などの化石燃料の燃焼や火山の噴火などにより発生
二酸化窒素・窒素酸化物の一種
・石油や石炭などの化石燃料が燃焼する際に排出される一酸化窒素が酸化して発生
浮遊粒子状物質・大気中を浮遊する粒子状の物質で直径10μm以下のもの
・工場の煙や自動車の排気ガス、揮発性有機化合物※1が含まれたモノによる塗装などから主に発生
・火山の噴火など自然からも発生
一酸化炭素・主に自動車の燃料に含まれる炭素などの不完全燃焼時に発生
光化学オキシダント・光化学スモッグ※2の原因物質
・工場や事業所、自動車などから排出された窒素酸化物や揮発性有機化合物が大気中で光化学反応※3を起こして発生
※1 蒸発しやすく、大気中で気体となる化学物質の総称
※2 光化学オキシダントの濃度が高まり、もやがかかったような状態のこと
※3 物質が紫外線をはじめとした光を受けて発生する化学反応のこと

これらの大気汚染物質について、日本では環境基本法に基づき、それぞれ環境基準の数値が設定されています。

環境基準は、「維持されることが望ましい基準」として設定されており、健康や環境に影響を与えないラインよりも高水準となっています。具体的な基準値は、環境省のWebサイトで確認できます。

日本で大気汚染が問題になり始めたのは1950年代以降

日本で大気汚染が深刻な社会問題として認識され始めたのは、1950年代から1960年代ごろ、戦後の高度経済成長期のころです。

当時は産業の急速な発展により、都市部では空気が著しく汚れました。

特に1955~1965年頃には、大気汚染物質により肉眼で見渡せる範囲が30~50mにまで落ち、自動車を運転するには日中でもライトをつけなければならないほど視界が悪い状況でした。

このような事態を受け、日本では1967年に公害対策基本法が施行されました。公害を防止するうえで必要な環境基準や、企業および国や自治体の責任を明確に定めた法律です。

1974年には、大気汚染が原因の気管支ぜん息などをはじめとした公害病の補償基準を定めた公害健康被害補償制度も施行されました。

このような法制度の整備によって、日本の大気汚染は大きく改善されましたが、人々が生活するうえで産業の発展は欠かせず、環境問題とは絶えず向き合い続ける必要があります。そのため、日本では1993年に、公害対策基本法をより発展させた環境基本法が施行され、今日に至るまで環境保全に尽力しています。

大気汚染が起こる3つの原因

大気汚染の原因は、人間の活動によるものと、自然由来のものに分けられます。

ここでは、大気汚染が起こる原因のなかでも「産業の排出ガス」「自動車による排気ガス」「自然由来の汚染物質」の3つにしぼって解説します。

原因①暮らしを支える産業の排出ガス

私たちの暮らしを支える工業・産業活動は、大気汚染の主な原因の一つです。

工場や発電所、建設現場などからは、さまざまな大気汚染物質を含むガスが排出されています。

例えば、火力発電所や工場にて、石油・石炭などの燃料を燃やす過程では、硫黄酸化物の一種である二酸化硫黄をはじめとした汚染物質が発生します。

二酸化硫黄は呼吸器に影響を及ぼす恐れがあり、四日市ぜんそくなどの公害の原因となった汚染物質です。大気中で酸化し水に溶ける性質を持つため、雨に溶ければ酸性度が高まることで酸性雨になり、建物を腐食させるなどの被害を及ぼす恐れがあります。

また、農業においても大気汚染物質が排出されています。主な原因は化学肥料の使用です。

化学肥料には、植物が成長するために必要な反応性窒素が含まれているのですが、その半分以上は植物に吸収されず、土壌や大気に流出しています。この大気中に流出してしまった反応性窒素こそが、大気汚染物質の一つなのです。

※ 空気中に含まれている安定な窒素ガスを除いたアンモニアや硝酸などの窒素化合物の総称

原因②自動車による排気ガス

自動車による排気ガスも、大気汚染を引き起こす原因です。

ガソリンや軽油を燃料とする自動車からは、燃料の燃焼に伴い、さまざまな大気汚染物質が排出されます。

代表的なものが一酸化窒素をはじめとした窒素酸化物です。窒素酸化物は大気中で酸化し、二酸化窒素に変化します。二酸化窒素は、気管支をはじめとした呼吸器系に刺激を与えるため、多量摂取は健康被害につながる恐れがあります。

また、窒素酸化物は太陽光と反応して光化学オキシダントという物質になり、光化学スモッグを発生させますが、これの影響を受けると目がチカチカとしたり、喉が痛んだりといった症状が現れることもあります。

原因③火山噴出物や黄砂など自然由来の汚染物質

大気汚染の原因は、何も人工的なものだけではありません。自然由来の現象もまた、大気を汚す原因になり得ます。代表的なのが、火山の噴火です。

火山が噴火すると、二酸化硫黄や浮遊粒子状物質などの大気汚染物質が放出されます。

大規模な森林火災も大気汚染を招く原因の一つです。森林火災では、PM2.5などの大気汚染物質が広範囲、かつ大量に拡散されるため、地球規模での大気汚染が問題視されます。

さらに、日本で春先に話題になる黄砂も大気汚染と関連しています。黄砂は、中国大陸内陸部の砂漠から巻き上げられた砂塵が、偏西風に乗って日本に飛来する現象です。

黄砂が大気汚染物質が多いエリアを通って日本に飛来する場合、そのエリアの大気汚染物質も取り込んだ状態で飛来する可能性が指摘されています。

大気汚染が及ぼす健康や環境への影響

ここまで大気汚染の定義や原因について解説してきましたが、大気汚染が具体的にどのような影響を及ぼすのか気になっている方もいるのではないでしょうか。

ここでは、大気汚染が及ぼす健康への影響や、環境への影響について詳しく解説します。

大気汚染による「健康」への影響

大気汚染は、呼吸器の感染症や心臓病、脳卒中、肺がんなどのさまざまな健康リスクを高めます。

例えば、PM2.5は肺の奥まで入り込み、喘息や気管支炎を引き起こす恐れがあります。さらに、肺がんのリスク上昇、循環器系への悪影響も懸念されています。

そのため、日本国内ではPM2.5の濃度が一定以上を超える日は、外出を控えるよう注意喚起を行っています。

日本国内でいえば、そのほかの大気汚染物質に関しても法規制が整備されているため、必要以上に怖がる必要はありません。正しい知識を身に着け、正しい対策を取ることが大切です。

しかし、海外では今もまだ、大気汚染による被害が甚大です。アメリカを拠点として活動している独立非営利研究機関「HEI(健康影響研究所)」によると、世界の5歳未満児の死亡リスク要因の第2位は大気汚染だといいます。

日本が比較的安全だからといって、良しとするだけではなく、他国ひいては地球全体に目を向ける意識を持つことが大切です。

大気汚染による「環境」への影響

大気汚染は、私たちの健康のみでなく、地球環境にもさまざまな悪影響を与えます。

例えば、化石燃料の燃焼や火山活動により排出される二酸化硫黄や窒素酸化物は、酸性雨の原因です。これらの大気汚染物質が大気中の水分と反応すると、硫酸や硝酸などの物質となって雨に溶け込み、酸性雨として地上に降り注ぎます。

酸性雨が河川や湖沼、土壌に降り注ぎ酸性化させると、生態系に悪影響を及ぼします。さらに、酸性雨の酸は金属を錆びつかせたり、コンクリートを劣化させるため、建造物や重要文化財への被害も免れません。

そのほかにも、化石燃料の燃焼により排出される二酸化炭素やメタンなどは、大気汚染の要因だけでなく、地球温暖化を引き起こす温室効果ガスでもあります。地球温暖化は、異常気象や海面上昇、生態系の変化などを引き起こしています。

酸性雨や地球温暖化について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

酸性雨とはどういう雨のこと?原因や仕組みから影響・対策までわかりやすく解説

地球温暖化とは?原因や影響、対策の取り組みなどわかりやすく解説

日本と世界における大気汚染の現状と対策

さまざまな悪影響を及ぼす大気汚染は、世界的な環境問題です。改善させるための取り組みは、日本だけでなく世界中で行われています。

ここでは、日本と世界における大気汚染の現状と対策をわかりやすくまとめました。

日本の大気汚染の現状と対策

日本は世界的にみると、大気汚染度が低い傾向にあります。これは下表のような対策が功を成している結果だといえるでしょう。

<日本の主な大気汚染対策>

分類内容
法制度・環境基本法(環境基準の設定など)
・大気汚染防止法(大気汚染物質の排出基準の設定など)
・自動車NOx・PM法(都市部での排出抑制)
技術的な対策・排煙脱硫装置や・排煙脱硝装置の導入
・VOC(揮発性有機化合物)の排出抑制
モニタリング体制・大気汚染物質広域監視システムそらまめくんによる現状モニタリング
・大気汚染予測システムVENUSによる明後日までの予測
啓発・連携・自治体による注意喚起
・黄砂などの越境する汚染に対する国際的な協力

このように日本では、幅広い方向性から大気汚染対策が進められています。

現状についてさらに詳しく知りたい方は、環境省が提供する「大気汚染物質広域監視システム そらまめくん」を活用すると良いでしょう。大気汚染物質のモニタリングが継続的に実施されています。

2023年度の国の調査によると、大気汚染物質のうちPM2.5の環境基準達成率は、全国の測定地点で100%を達成しました(出典:環境省)。

一方で、光化学オキシダントの環境基準達成率は、ほぼ0%と極めて低い水準です(出典:環境省)。このように、日本であっても大気汚染対策すべてが万全ということではなく、改善の余地はあります。

世界の大気汚染の現状と対策

2024年度において大気汚染指数が特に高かったのは、上位からチャド共和国、バングラデシュ、パキスタン、コンゴ民主共和国、インドです(出典:IQ Air)。いずれも開発途上国に含まれます。

かつては日本でもそうであったように経済成長を迎えた国では、まず化石燃料を用いた工業化が進められます。特に急激な人口増加や経済成長が起こった開発途上国では、工業化も爆発的に進められるため、大気汚染も一気に進行しやすいのです。

しかし、開発途上国であればこそ、法整備も技術革新もすぐには進められません。だからこそ、先進国を筆頭に世界規模で協力・連携した対策が必要になります。

例えば、SDGsもその一環です。環境に優しい生産活動を可能にするための達成目標が掲げられています。

2030年までに、さまざまな支援プログラムを通じて、開発途上国、特に、最も開発が遅れている国、小さな島国や内陸の国で、すべての人が現代的で持続可能なエネルギーを使えるように、設備を増やし、技術を高める

引用元:ユニセフ-SDGs目標7「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」より

2030年までに、消費と生産において、世界がより効率よく資源を使えるようにしていく。また、先進国が主導しながら、計画にしたがって、経済成長が、環境を悪化させることにつながらないようにする。
※「持続可能な消費と生産に関する10カ年計画枠組」のこと。2012年に、二酸化炭素の排出の少ない生活スタイルや社会の仕組みを作ることを目的に採択された計画

引用元:ユニセフ-SDGs目標8「働きがいも経済成長も」より

開発途上国が、より持続可能な消費や生産の形をすすめられるよう、科学的および技術的な能力の強化を支援する。

引用元:ユニセフ-SDGs目標12「つくる責任、つかう責任」より

日本もまた先進国である以上は、過去の経験を踏まえた新しい知識や技術を用いて他国を支援することが求められるでしょう。

大気汚染対策として私たちにできること

国や企業の努力だけでなく、私たち一人ひとりの行動も大気汚染を減らす大きな力になります。

ここでは、日常生活で実践しやすい取り組みを紹介します。

  • 節電を心がける
  • ごみの分別を徹底する
  • 食べ残しを減らす
  • 移動を徒歩や自転車に切り替える
  • 公共交通機関を積極的に利用する
  • 電気自動車やハイブリッド自動車を活用する

家庭で不要な電力消費を減らすことは、発電所からの大気汚染物質の排出量を抑えることにつながります。

また、ごみの分別や食べ残しを減らせば、焼却場でのごみ燃焼量を減らせるため、汚染物質の発生を減らせます。

さらに、排気ガスを出す自動車をなるべく利用しないことも、大気汚染対策として効果的です。

私たちの暮らす地域の空気を守るため、できることから始めてみましょう。

公益財団法人イオン1%クラブ「イオン チアーズクラブ」について

公益財団法人イオン1%クラブが運営する「イオン チアーズクラブ」は、全国の小学校1年生から中学校3年生までを対象とした活動団体です。

イオン チアーズクラブでは、環境や社会に対して興味・関心を持ち、考える力を育むため、さまざまな体験学習を実施しています。

体験学習では子どもたちがメンバーで協力し合い、一丸となって活動に取り組むため、集団行動における社会的なルールやマナーも学べます。

「子どもを自然と触れ合わせたい」や「楽しみながら環境や社会について学んでほしい」と考えている保護者の方は、ぜひお子さまのイオン チアーズクラブへの参加を検討してみてはいかがでしょうか。

イオン チアーズクラブの活動をさらに詳しく知りたい方は以下のURLからご覧ください。

子どもたちが主役!環境・社会をテーマにした体験学習で楽しく学ぼう!

まとめ

大気汚染は、工場や自動車から排出されるガス、自然現象など多くの要因によって引き起こされ、私たちの健康や地球環境に深刻な影響を与えます。

世界では国内における法整備などはもちろんのこと、国際的な協力・連携も進められていますが、まだまだ課題も多いのが現状です。

大気汚染対策には、私たち個人の取り組みも欠かせません。大気汚染は生産活動、すなわち私たちの生活に密接に関わっているためです。

一人ひとりの選択が、未来の地球を守る力になります。小さなことからでも、まずは一歩を踏み出すところから始めてみませんか。

公益財団法人イオン1%クラブについて

公益財団法人イオン1%クラブは、1990年に設立され、「お客さまからいただいた利益を社会のために役立てる」という想いのもと、「子どもたちの健全な育成」「諸外国との友好親善」「地域の発展への貢献」「災害復興支援」を主な事業領域として、環境・社会貢献活動に取り組んでいます。

「子どもたちの健全な育成」事業の一つである「イオン チアーズクラブ」では、小学生を中心に、環境や社会貢献活動に興味・関心を持ち、考える力を育む場として体験学習を全国で行っています。

また、中学生が環境に関する社会問題をテーマに、自ら考え、書く力を養う「中学生作文コンクール」や、高校生が日ごろ取り組んでいる環境保全や社会貢献に関する活動を発表し、表現力や発信力を高めることを目的とした「イオン エコワングランプリ」など、さまざまな活動を実施していますので、ぜひ下のURLから詳細をご覧ください。

公益財団法人イオン1%クラブの活動内容を詳しく知りたい方はこちら

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