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2025.02.13
本当に地球を守れるの?環境保全の実際の取り組みと個人でもできることを解説
「環境保全って何?」「私たちに何ができるの?」と考えている方へ。
近年、世界各国や日本でも環境保全に向けたさまざまな取り組みが進められています。
本記事では、これまでに行われてきた環境保全の取り組みや、私たち一人ひとりが日常生活でできるアクションについて詳しく解説します。
目次
環境保全とは?
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環境保全とは、私たちが住む地球上の自然環境や生態系を保護し、持続可能な世界を維持するための活動です。
近年、環境問題では「地球温暖化」「生物多様性の損失」「公害の発生(大気汚染・水質汚濁)」などが話題に上がっています。
環境保全の目標は、こういった地球が抱える環境問題を抑制し、人間や動物、植物が住み続けられる地球を維持することです。
環境保全には国や自治体による政策や制度、事業者による環境に配慮した活動、そして私たちが同じ目標に向かって行動する姿勢が大切です。
環境保全のために世界で定められている条約
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世界各国では、環境保全のために次のような取り組みを開始しています。
- 気候変動枠組条約(UNFCCC)
- オゾン層保護のためのウィーン条約
- 生物多様性条約
- グリーン成長戦略
以下で、それぞれについて詳しく解説します。
気候変動枠組条約(UNFCCC)
気候変動枠組条約(UNFCCC)は、1994年3月に定められた地球温暖化や気候変動の対策に関する国際条約です。
また、気候変動枠組条約に基づいて作られた、より具体的な温室効果ガス削減目標を定めた国際的な条約として、「京都議定書」、京都議定書を引き継ぐものとして「パリ協定」があります。
条約の目的は「地球温暖化がもたらすさまざまな悪影響を防止するために、主要な原因となる温室効果ガスの濃度を安定化すること」です。
締約国※では温室効果ガスの排出及び吸収の目録作成や定期更新、具体的な対策を含んだ計画の作成や実施を行っています。
2022年時点で、198か国が条約を結び、日本も締約国です。
※条約を守ることを国として表明している国のこと
オゾン層保護のためのウィーン条約
オゾン層保護のためのウィーン条約は、1985年3月22日に定められたオゾン層保護のための国際的な対策の枠組みを定めた国際条約です。
条約の目的は「オゾン層破壊による人体や環境への影響を食い止めること」です。
また、オゾン層を保護する取り組みとして以下の3つを締約国に求めています。
- オゾン層の変化により生ずる悪影響から人の健康及び環境を保護するために必要な措置をとること
- オゾン層保護のための研究及び組織的な観測などに協力すること
- 法律や科学、技術などに関する情報を交換すること
オゾン層は、地球を覆っている層のことで、人間や動植物に悪影響となる太陽光の紫外線を吸収する役割があります。
しかし、フロンを含む化学物質がオゾン層を破壊することが明らかになったことから、世界中で早期的な対策が必要だと考えられているのです。
2021年9月時点で、198か国が条約を結び、日本も締約国です。
生物多様性条約
生物多様性条約は、1992年5月に策定された国際条約です。
個別の野生生物種や、特定地域の生態系に限らず、地球規模の広がりで生物多様性を考え、保全を目指すことが掲げられています。
条約の目的は以下の3つです。
- 生物の多様性の保全
- 生物多様性の構成要素の持続可能な利用
- 遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平(こうへい)な配分
生態系のバランスは、少しずつ崩れ続けており、生物多様性が失われると「食料が失われる」「土砂崩れや洪水などの自然災害が起きる」などさまざまな影響が出ます。
これ以上生物多様性を失わないために定められたのが、生物多様性条約なのです。
2023年4月時点で、194か国が条約を結び、日本も締約国です。
グリーン成長戦略
グリーン成長戦略とは、2050年までに日本でカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量の差をゼロにする取り組み)を達成するために、2020年10月に作成された国の政策です。
二酸化炭素の排出・削減を目標に、削減しきれなかった分は森林の保全活動を行い、カーボンニュートラルの達成を目指しています。
また、グリーン成長戦略は環境保護と経済成長の両立を目指しています。
2024年現在、国は産業政策・エネルギー政策の両面から、今後成長が期待される14分野の産業に対して高い目標を設定し、政策支援を行っています。
今、何がされている?日本が取り組む環境保全
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環境保全への取り組みは日本でも始まっています。
- 「環境保全型農業」農林水産省
- 「クリーンエネルギー」経済産業省
- 「グリーンインフラ」国土交通省
- 「自然環境保全」環境省
以下で、それぞれについて詳しく解説します。
「環境保全型農業」農林水産省
環境保全型農業は、農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和などに留意しつつ、土づくり等を通じて化学肥料、農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業を指します。
農業は私たちの食事や生活を支える、大事な存在です。
しかし、近年は効率よく作物を育てるために化学肥料や農薬を使用するケースが増え、土壌や河川の汚染、生態系バランスへの影響も問題視されています。
こういった問題を改善するために、化学肥料や農薬の使用を減らし、自然と共存しながら持続可能な農業を実現するための取り組みが環境保全型農業です。
環境保全型農業は、食料生産と環境保全を両立させる重要な取り組みなのです。
また、環境保全型農業の具体的な取り組みに「全国共通取組」があり、次の3つの取り組みが挙げられます。
カバークロップ | ・主作物の栽培期間の前後を利用し、畑の空いているスペースで栽培される作物 ・天然の肥料となるほか、土壌の保護・改善、病害虫の防除などに役立つ |
たい肥の利用 | ・枯れ草や枯れ葉、家畜のふんを積み重ねて、微生物により完全に分解されたたい肥を利用する ・土壌の中に炭素を貯留するため地球温暖化防止に貢献したり、資源の循環利用、土壌の改善効果がある |
有機農業 | ・化学的に合成された肥料・農薬を使用しない農業 ・遺伝子組み換え技術を利用しない |
また、地域特認取組と呼ばれる「地域の環境や農業の実態などを踏まえた取組」を行う都道府県も増えており、全国共通取組とあわせて注目されています。
「クリーンエネルギー」経済産業省
クリーンエネルギーは、太陽光や風力、地熱といった自然由来のエネルギーです。
地球温暖化の原因とされる温室効果ガス(二酸化炭素など)を排出しない、又は排出量を抑えられるとして、グリーン成長戦略とともに推進しています。
国としての取り組みには、クリーンエネルギーを含む再生可能エネルギーの導入を国が補助する制度「固定価格買取制度(FIT)」や、電力の小売全面自由化が挙げられるでしょう。
固定価格買取制度(FIT) | 再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度 |
電力の小売全面自由化 | すべての家庭や事業者において電気をどの会社から購入するか自由に選択できる |
他にも、令和5年度の補正予算では「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」という補助金が組まれました。
クリーンエネルギー自動車は、走行時の排出ガスが少ない、又はまったく出ない、環境に優しい車のことで、私たちの日常生活から環境保全につながる取り組みが増えています。
「グリーンインフラ」国土交通省
グリーンインフラは、自然環境が持つ様々な機能や仕組みを社会の様々な課題解決に活用しようとする取り組みです。
例えば、豪雨対策として道路に樹木を植えたり、都心で生き物が住めるような緑地や水辺を整備したりすることもグリーンインフラとしての取り組みにあたります。
グリーンインフラが国内で注目されるようになった大きなきっかけとして、2011年3月に発生した東日本大震災があげられます。
海岸の竹林が津波の勢いをやわらげ、被害の軽減に役立ったと広く報道されたのです。
近年では、集中豪雨に対してグリーンインフラとして田んぼダムや、都市緑地などを活用して洪水被害を防ぐ「流域治水(流域※にかかわる水害対策)」への期待も高まっています。
グリーンインフラは、防災や減災によって私たちの暮らしを豊かに、そして生態系の保全など様々な良い効果を生み出してくれます。
これは、「SDGs(持続可能な開発目標)」のゴールの一つである「自然と共生した持続可能な社会」へと近づける第一歩ともいえるでしょう。
※流域:河川に流れ込む雨水などが集まる地域
「自然環境保全」環境省
「自然環境保全」とは、環境省が様々な省庁と協力しながら進めている取り組みの総称です。
「自然環境保全」の目的は、生物多様性の維持や生態系の保護、そして私たちの暮らしに欠かせない自然環境を守ることにあります。
具体的には、「世界自然遺産の保護」「里地里山の保全」「特定外来生物への対応」といった、生き物や自然環境を守るための活動が挙げられます。
また、自然環境保全地域の指定は、原生的※な自然環境を保全するための取り組みの一つで、希少な生態系や絶滅危惧種の生息地を長期的に守ることを目指しています。
一例として、優れた自然環境を維持している湖沼・海岸・湿原・河川・海域が、自然環境保全地域に指定されています。
※原生的:人間の活動による手が加えられていない、そのままの自然
次に、生物多様性や希少な野生動物の保全については、絶滅の危機に瀕している種やその生息環境を保護するために、国立公園の管理や自然環境調査が行われています。
さらに、海洋の生物多様性やサンゴ礁の保全は、ラムサール条約に基づき、保護区域や海洋保護区を設置することで進められています。
サンゴ礁は様々な要因で失われやすいため、これらの保護区域を設定し、生態系を守る取り組みが行われているのです。
他にも、2003年月1日より施行されている「自然再生推進法」では、河川や湿原、森林やサンゴ礁など失われた自然を再生するための取り組みも行われています。
個人でもできる!環境保全につながる行動
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環境保全の取り組みは、私たち一人ひとりの協力が必要です。
- ゴミを削減する
- 省エネを心がける
- 自然環境に配慮した製品を選ぶ
- 再生可能エネルギーを選ぶ
個人でもできる取り組みには何があるか、以下で、それぞれについて詳しく解説します。
ゴミを削減する
個人ができる身近な環境保全の一つは、ゴミを削減する取り組みです。
ゴミを減らす取り組みは、ゴミの処理に必要な「燃やしたり埋めたりする際に発生する温室効果ガスの削減や、それに伴う環境汚染」を防止します。
ゴミを削減する具体例は以下のとおりです。
- 買い物ではレジ袋ではなく、マイバッグを使う
- マイボトルを使う
- 食品ロスを減らす
- 包装の少ないものを選ぶ
- 使い捨ての容器を減らす
- 必要なものだけを買う
- リサイクルと分別を意識する
一人ひとりが意識して取り組めば、環境保全につながります。
省エネを心がける
省エネは、電気やエネルギーの消費量を減らすために大切な取り組みです。
日本における発電量の約70%以上を占めるのは「天然ガス」や「石炭」などの化石燃料による火力発電であり、消費量が増えると二酸化炭素の排出量も増えます。
そこで、私たち一人ひとりが毎日の生活で省エネを意識し、二酸化炭素の排出量を削減できれば、環境保全につながるのです。
また、省エネは環境保全だけでなく、電気料金の節約にも役立ちます。
- 照明をこまめに消す
- 照明をLEDに替える
- 不要な電気製品のプラグを抜く
- 家電製品を買い替える際は、省エネ性能の高い製品を選ぶ
- 冷暖房を使う際は、設定温度を調整する
日常生活のちょっとした工夫で省エネにチャレンジしてみましょう。
自然環境に配慮した製品を選ぶ
私たちが環境負荷の少ない製品を選ぶことも環境保全につながる取り組みです。
自然環境に配慮した製品を選ぶ際に注目したいポイントは以下のとおりです。
- 原材料:再生可能な資源や、環境負荷の少ない素材でつくられている
- 廃棄処理:リサイクル可能な製品や、環境負荷の少ない方法で廃棄できる
- 認証マーク:環境保護に配慮した製品に付与される認証マークがついている
有名な認証マークには「MSC認証ラベル」と「FSC認証ラベル」があります。
MSC認証ラベル※1![]() | ・「海のエコラベル」とも呼ばれているマーク ・水産資源や環境に配慮しているとして認証された、持続可能な漁業で獲られた天然の水産物につけられる ・MSC認証ラベルのついたものは20,000品目以上もある |
FSC認証ラベル※2![]() | ・「森のエコラベル」とも呼ばれているマーク ・管理が環境や地域社会に配慮して適切に行われている森林からの生産品につけられる ・適切な森林管理を行う林業者や地域を支援し、その生産品を原材料として使う法人や事業者を支持することになる |
他にも、自然環境に配慮した製品についているマークは「エコマーク」「再生紙使用(R)マーク」「有機JASマーク」も挙げられます。
エコマーク※3![]() | ・環境保全に役立つと認定されたものにつけられるマーク ・「生産」から「廃棄」にわたるライフサイクル全体を通して環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた生産品につけられる ・文房具からエンジンオイルまで幅広い生産品についている |
再生紙使用(R) マーク※4 ![]() | ・再生紙の古紙パルプ配合率を表示するためのマーク ・古紙パルプ配合率100%再生紙を使用している生産品についている ・ゴミ減量化を目指し、再生紙の利用促進・普及啓発を図るシンボルマークとして知られている ・再生紙使用(R)マークにはさまざまな種類がある |
有機JASマーク※5![]() | ・農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないことを基本として自然界の力で生産された食品につけられるマーク ・「自然に優しい農法」としての有機栽培の基準を定めたもの |
買い物の際、意識的に認証マークがついているものを選ぶことは、環境保全の支持や貢献にもつながるため、積極的に選ぶようにしましょう。
※1:出典元「Marin Steward ship Coucil」
https://www.msc.org/jp/what-we-are-doing/what-does-the-blue-msc-label-mean-JP
※2:出典元「FSC」
https://jp.fsc.org/jp-ja/FSC_trademarks
※3:「エコマーク事務局」
https://www.ecomark.jp/
※4:出典元「3R・資源循環推進フォーラム
https://3r-forum.jp/activity/r_mark/index.html
※5:出典元「農林水産省」
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html
再生可能エネルギーを選ぶ
再生可能エネルギーは、太陽光・風力・水力・地熱を活用した自然エネルギーです。
再生可能エネルギーは、化石燃料のように二酸化炭素を排出せず、枯渇する心配もないと考えられており、地球に優しいエネルギーとして注目されています。
環境保全への取り組みとして再生可能エネルギーを積極的に取り扱っている電力会社も増加しているため、興味がある方は一度調べてみましょう。
まとめ
本記事では、環境保全に対する世界の取り組みや、個人でもできる取り組みについて解説しました。
年々、環境問題は深刻化しており、早急な対策が必要です。
地球の環境を守り、次世代へ豊かな自然を引き継ぐためには、環境問題への意識を高め、一人ひとりができることを始めていきましょう。
以下の記事では「今日から始められるエコ活動17選」を解説しています。
エコ活動とはどんな活動?今日から始められるエコ活動17選をご紹介!
本記事を読んで「もっと私たちにできることが知りたい」とお考えの方は、あわせてご覧ください。
公益財団法人イオン1%クラブについて
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公益財団法人イオン1%クラブは、1990年に設立され、「お客さまからいただいた利益を社会のために役立てる」という想いのもと、「子どもたちの健全な育成」「諸外国との友好親善」「地域発展の貢献」「災害復興支援」を主な事業領域として、環境・社会貢献活動に取り組んでいます。
公益財団法人イオン1%クラブでは、小学生を中心とし、体験学習から自然や環境に向き合うことができる「イオン チアーズクラブ」も運営しています。
イオン チアーズクラブではリサイクル工場の見学や、過去にはサトウキビを使ったさまざまなリサイクルの体験など、環境に関する体験や学習をしています。
また、高校生が日ごろ学校で取り組んでいる環境活動を発表し、表現力や発信力を高めることを目的とした「イオン エコワングランプリ」などさまざまな活動を実施していますので、ぜひ下のURLからご覧ください。