2024.12.19
【水力発電の可能性と課題】水力発電のメリットとデメリットをわかりやすく解説
【キャラクター紹介(しょうかい)】
愛称(あいしょう)
イオン チアーズクラブの男の子
愛称(あいしょう)
博士
愛称(あいしょう)
先生
この前テレビのニュースで水力発電についてやっていたんだけど、水力発電ってすごい発電方法なの?
おお、そうじゃよ。水力発電はとてもエコで、地球に優しい発電方法なんじゃ。
へぇー!じゃあ、もっとみんなやれば良いのにね。
博士、水力発電には悪いところもあるってことを説明しないとダメですよ!
おっと、忘れるところじゃった。今回は水力発電のメリットとデメリットについて話していくから、しっかり聞いていくんじゃぞ。
目次
世界に大きく遅(おく)れをとっている日本の水力発電の現状
日本は山や川が多いので、一見すると水が流れ落ちる力を利用した水力発電がしやすい地形のように思えます。
しかし世界と比べると、日本の水力発電の割合は驚(おどろ)くほど低いのが現状です。
以下のグラフは、日本国内でつくられている電気の割合を示したものです。
2022年のデータによると、水力発電が日本の電力供給に占(し)める割合はわずか7.1%です。
世界平均での水力発電が占(し)める割合は15.5%なので、世界と比べると半分程度しか水力発電を活用できていません。
日本は水力発電で世界に大きく遅(おく)れをとっているのです。
ええ!?日本の水力発電ってそんなに少ないんだ……
意外じゃったか?日本の電気のほとんどは、石炭や天然ガスといった化石燃料を燃やしてつくられているんじゃ。
日本は水がたくさんあるのに、どうして水力発電が増えないんだろう。
その話をする前に、まずは水力発電の仕組みについて学んでいきましょうか。
そもそも水力発電の仕組みは?
水力発電は、水の持つエネルギーを利用して発電を行う発電方法です。
水力発電の大まかな仕組みは、水の流れる力や高いところから低いところへ水が落ちる力を利用して、発電しています。
水力発電は、構造物によって大きく3つのタイプに分けられます。
- ダム式
- 水路式
- ダム水路式
3つの構造物について、それぞれ解説していきます。
ダム式
水力発電の代表的な方法が、ダム式です。
ダム式は、河川をせき止めて建設したダムに水を貯め、その水を利用して発電を行います。
ダムに貯められた大量の水を、下流にある発電所内の水車に向けて落下させることで、水車を回して電気をつくっているのです。
ダム式は、ダムの水量があれば一度にたくさんの電気を一度につくります。
また、水量によって発電量を調整できるので、必要なときには電気をたくさんつくり、必要がないときは電気をあまりつくらないといったこともできます。
ただ、ダムの水量が少ないときは、発電できる電気の量も少なくなってしまうデメリットがあります。
水路式
水路式はダム式とは異なり、川の流れを使って電気をつくる方法です。
まず、川の下の方に発電所をつくり、川の上の方では「取水ダム」という水をせき止める場所をつくります。
取水ダムから流れ出した水は、ゆるやかな坂道になっている水路をゆっくりと流れていき、沈砂池(ちんさち)、水槽(すいそう)を通ります。
発電所は水槽(すいそう)より低いところにあるため、水が勢い良く流れ落ち、発電所内の水車を回して電気がつくられるのです。
ダム水路式
ダム水路式は、ダム式と水路式の良いところを組み合わせた発電方法です。
ダムで水を貯め、その水を発電所まで水路を使って流したあと、水が勢い良く流れ落ちる力で発電所内の水車を回して発電します。
また、ダム水路式は、ダムの高低差に加えて水路を引けばさらに高低差をつくれることから、水の勢いを確保し、より多くの発電量が期待できる点も魅力(みりょく)です。
さらに、ダムと発電所を別々の場所に設置できるので、ダム式よりも建設できる場所の選択肢(せんたくし)が広がるという特徴(とくちょう)もあります。
画像引用:MITSUI 脱炭素ソリューション
水力発電にも色々な形があるんだね。
場所や地形によって、ぴったりの方法を選ぶことで、たくさん発電できるようになるんじゃ。
博士、水力発電には発電方法の違(ちが)いもあるってことを説明しないと。
おお!忘れるところじゃった!次はその話をしよう。
水力発電の発電方法は4つある
水力発電は、ダム式か水路式かといった構造物の種類だけでなく、発電方法によってもいくつかの種類があります。
- 流れ込(こ)み式
- 調整池式
- 貯水池式
- 揚水式(ようすいしき)
以下で、4つの水力発電の発電方法について、それぞれ解説していきます。
流れ込(こ)み式
水力発電には色々な方法がありますが、一番シンプルなのは流れ込(こ)み式です。
流れ込(こ)み式による水力発電は、川をせき止めずに、そのまま流れる水の力を使って発電する方法です。
流れ込(こ)み式の発電方法では、新たにダムをつくる必要がないため、お金があまりかからないというメリットがあります。
しかし、雨が降らない日が続くと川の水の量が減ってしまい、発電できる電気の量が減ってしまうデメリットもあります。
調整池式
調整池式の水力発電は、調整池という場所に水をためておく方式の発電方法です。
電気をたくさん使いたいときに調整池から水を流して発電します。
例えば、平日の昼間は学校や会社で電気をたくさん使うため、昼間の時間帯に調整池から水を流して、たくさんの電気をつくります。
一方、みんなが寝(ね)ている間など電気をあまり使わない時間帯は、発電せずに川から水を調整し、池に貯めておくのです。
調整池式での水力発電は、電気をたくさん使いたいときに合わせて1日や1週間単位で発電量を増やせる点もメリットです。
貯水池式
貯水池式の水力発電は、貯水池に水を貯めて電気をつくる発電方法です。
調整池式とよく似ていますが、短い期間で電気の量を調整する調整池と異なり、貯水池式は季節による水量の変化に合わせて、長い期間での発電量を調整できます。
貯水池式では、貯水池に梅雨や台風シーズンなどの雨がたくさん降る季節に、できるだけたくさんの水を貯めておきます。
そして、真夏や真冬などの電気をたくさん使う季節になると、貯水池から水を流して、電気をたくさんつくり、年間を通して安定した電力供給をしているのです。
揚水式(ようすいしき)
揚水式(ようすいしき)の水力発電は、2つの貯水池を使って、電力を水の形で蓄(たくわ)えて蓄電池(ちくでんち)のような働きをする発電方法です。
2つの貯水池は高い場所と低い場所にあり、夜などの電気をあまり使わない時間帯には、下の貯水池から上の貯水池に水をくみ上げておきます。
そして、昼間の電気をたくさん使う時間帯になったら、上の貯水池から水を落として発電します。
揚水式(ようすいしき)は、水を蓄電池(ちくでんち)のようにして貯めて使えるため、他の方法とは異なり、水を再利用できるとてもエコな発電方法です。
画像引用:MITSUI 脱炭素ソリューション
発電方法もこんなにたくさんの種類があるんだ!
びっくりしたじゃろ?これだけの種類を使い方や環境(かんきょう)によって使い分けて、水力発電は行われているんじゃよ。
水力発電ってすごいんだなぁ。もっと色々教えてよ!
では、水力発電の良さをもっと教えましょう。
地球を救う!?再生エネルギーである水力発電のメリット
水力発電のメリットは5つです。
- 地球に優しい
- 資源が足りなくならない
- 電気量の調整が簡単にできる
- エネルギー変換(へんかん)効率が良い
- 発電にかかるコストが安い
以下で、それぞれについて解説していきます。
地球に優しい
水力発電のメリットとして、一番に挙げられるのは地球に優しいという点です。
テレビや冷蔵庫を使ったり、お風呂(ふろ)のお湯を沸(わ)かしたりするためにはたくさんのエネルギーが必要です。
しかし、エネルギーをつくるために石炭や石油、天然ガスを燃やすと、地球温暖化の原因となる温室効果ガスが出てしまいます。
一方、水力発電は再生可能エネルギーであり、水の力を使って電気をつくるため、石炭や石油を燃やす火力発電のように、温室効果ガスを出しません。
再生可能エネルギーは、太陽光や風、水といった自然の力を使って発電する方法で、温室効果ガスを出さないため、地球に優しいエネルギーなのです。
水力発電は、地球に優しいエネルギーをつくり出すことができる、とても頼(たよ)りになる発電方法と言えるでしょう。
資源が足りなくならない
水力発電のすごいところは、地球に優しいだけではありません。
水は地球上で循環(じゅんかん)し続けるため、私たちが発電に利用することで減ってしまうということがないのです。
例えば、水力発電で使うエネルギー資源は水ですが、水は雨として降ったあと、川に流れ込(こ)み、海にたどり着きます。
そして、太陽の光で温められた海水は蒸発して、雲になって、また雨を降らせます。
つまり、水は石炭や石油といった化石燃料とは異なり、何度でも繰(く)り返し使うことができるエネルギーなのです。
電気量の調整が簡単にできる
水力発電は、電気の量を調整するのが簡単という特徴(とくちょう)もあります。
水力発電は、ダムから流す水の量を増やせば、発電する電気の量をすぐに増やせます。
一方で、夜のみんなが寝(ね)ている時間帯には、電気をあまり使わないため、ダムから流す水の量を減らせば、無駄(むだ)な電気をつくらなくて済むのです。
他の発電方法では電気の量をすぐに増やしたり減らしたりするのは難しい場合もありますが、水力発電は時間や季節に合わせて電気の量を調整できるのです。
エネルギー変換(へんかん)効率が良い
エネルギー変換(へんかん)効率とは、つくったエネルギーをどれだけ電力に変換(へんかん)できるかを示す割合のことです。
数値が高いほど、無駄(むだ)なく効率的に発電できているとわかります。
以下の表は、発電方法に対するエネルギー変換(へんかん)効率の割合を示したものです。
発電方法 | エネルギー変換(へんかん)効率(%) |
---|---|
水力 | 80 |
液化天然ガス複合 | 55 |
火力蒸気 | 43 |
ガスタービン | 35 |
原子力 | 33 |
風力 | 25 |
太陽光 | 10 |
地熱 | 8 |
海洋温度差 | 3 |
バイオマス | 1 |
地熱発電や太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーは、エネルギー変換(へんかん)効率が約8~25%なのに対して、水力発電の場合はなんと約80%にもなります。
水は重く、エネルギー密度が高いため、水力発電は高い変換(へんかん)効率を実現できるのです。
水力発電は効率的に電気をつくり出す素晴らしい発電方法と言えるでしょう。
発電にかかるコストが安い
水力発電は、他の発電方法よりも安く電気をつくれる発電方法でもあります。
水力発電で使う水は自然に手に入るため、電気をつくる燃料を買う必要がありません。
さらに、水力発電所は一度つくってしまえば、メンテナンスにお金もあまりかかりません。
地球にもお財布にも優しい水力発電は、まさに未来を担うエネルギーと言えるでしょう。
こんなにたくさんの良いところがあるなんてすごい!これからは水力発電をもっと増やしていかないと!
そんな水力発電じゃが、実は良いところだけじゃなく、悪いところもあるんじゃよ。
えーっ! そうなの?どんな悪いところがあるの?
では、次は水力発電のデメリットについて解説しますね。
水力発電のデメリット、知られざるリスクとは?
水力発電のデメリットは3つです。
- ダム建設に多くの時間と費用がかかる
- 環境(かんきょう)が悪くなってしまう可能性がある
- 降水量が少ないと発電量に影響(えいきょう)が出る
以下で、それぞれ解説していきます。
ダム建設に多くの時間と費用がかかる
水力発電に必要なダムは大きくて頑丈(がんじょう)なものでなければいけないため、つくるのにとてもたくさんの時間とお金がかかります。
ダムの建設には、規模によって異なりますが、10年〜20年の時間がかかります。
また、ダム建設の費用も「黒部ダム」というダムを例にすると、当時の金額で513億円以上のお金がかかったといわれているのです。
ほかにも、ダムをつくる場所は、山の上や山奥(やまおく)など町から離(はな)れた場所にある場合が多く、工事をするのも大変なのです。
加えて、ダムをつくるためには、そこに住んでいる方々が引っ越(こ)しをしなければいけない可能性もあります。
みんなが引っ越(こ)しをする場所を見つけたり、話し合いをしたりするときにも、たくさんの時間やお金が必要になるのです。
環境(かんきょう)が悪くなってしまう可能性がある
水力発電は地球に優しいエネルギーと言われていますが、環境(かんきょう)が悪くなってしまう可能性もあります。
大きなダムをつくるためにはたくさんの木を切ったり、土を掘(ほ)ったりする必要があります。
そうすると、森に住んでいる動物たちは住む場所を失ってしまったり、川の生き物たちが住む川や湖の水が汚(よご)れてしまったりする恐(おそ)れがあるのです。
また、ダムができて川の流れが変わると、魚が上流に行けなくなったり、下流に水が流れなくなってしまったりする場合もあります。
水力発電を導入するときは、環境(かんきょう)への影響(えいきょう)もきちんと考える必要があります。
降水量が少ないと発電量に影響(えいきょう)が出る
水力発電は、雨が降って川に水が流れ込(こ)まないと、電気をたくさんつくれません。
ダムや調整池をつくれば、ある程度は水を貯めておくことができます。
しかし、長い間雨が降らなかったり雨が少なかったりすると、ダムや調整池の水が減ってしまい、発電できる電気の量も少なくなります。
水力発電は良いことばかりじゃないんだね。動物たちを苦しめちゃう可能性もあるなんて知らなかった。
ダムをつくるにはお金も時間も必要だし、場所も必要になってしまう。それに、いつでもたくさんの電気がつくれるわけじゃないんじゃ。
自然の力を使うのって難しいんだね……
そうなんです。日本の偉(えら)い方々もそう思っているので、今後はどうやって水力発電を増やしていくかを考えているんです。そうですよね、博士。
そうじゃ!国も将来のために、色々な取り組みを進めているんじゃよ。
今後水力発電を導入していくための課題と取り組み
水力発電は、たくさんの電気を作り出すために大きなダムが必要で、たくさんのお金と時間がかかってしまう課題があります。
加えて、近年注目されている「大きなダムをつくらず、小さな川を利用する発電方法(中小力発電)」も、以下の課題が挙げられています。
- 小さな川は山の上や山奥(やまおく)にある場合が多いので工事が難しい
- 川の周りにある環境(かんきょう)を壊(こわ)さないように色々調査しなければならないので時間や手間がかかる
そこで日本の政府は、水力発電をつくる方々を応援(おうえん)するために、「改正FIT法」という法律をつくりました。
改正FIT法によって、水力発電をつくる方々は国からお金を出してもらえて、つくった電気は高い値段で国が買ってくれるため、安心して水力発電をつくれるのです。
改正FIT法のおかげで、水力発電はさらに増えていくでしょう。
日本の法律が助けてくれてるんだ!これなら安心だね。
大変なことも多いが、みんなで力を合わせれば解決できる!そのことがよく分かるじゃろ?
うん!みんなで頑張(がんば)って水力発電を増やしていければ良いね。
地球の未来のためにできること
今私たちが使っている電気のほとんどは、石炭や石油といった化石燃料を燃やしてつくられており、このまま使い続けると地球温暖化を進めてしまう原因になります。
そこで、地球温暖化がこれ以上進まないように世界中で注目されているのが、地球に優しい再生可能エネルギーです。
日本では、2030年までに二酸化炭素の出す量を46%減らし、地球に優しい再生可能エネルギーをさらに増やすという目標を立てています。
しかし、太陽光発電は雨の日に発電しにくい、風力発電は風の強さによって発電量が安定しないなど、それぞれの発電方法には得意な点と苦手な点があります。
どうすれば良いかを偉(えら)い方々が相談した結果、複数の発電方法を組み合わせて、それぞれの足りない部分を補いながら、安定した電力を供給しようという答えが出ました。
このように、色々な発電方法を組み合わせる方法を「エネルギーミックス」と言います。
今はまだ太陽光発電や風力発電、水力発電でつくれる電気の量は少ないですが、これからはどんどん増やしていく計画です。
私たちも、地球に優しい再生可能エネルギーについてもっと知って、地球の未来を守るためにできることを考えてみましょう。
地球温暖化を止めるためにも、地球に優しい再生可能エネルギーをたくさん使えるようにしなきゃ!
日本も色々な取り組みを進めているから、たくさん使える未来も遠くないはずじゃ。
まとめ
今回は、水力発電について、メリットとデメリットを詳(くわ)しく見てきました。
水力発電は、水の力を使って電気をつくる、地球に優しい発電方法です。
一方で、ダムをつくるためには、たくさんのお金と時間が必要だったり、環境(かんきょう)に悪い影響(えいきょう)を与(あた)えてしまう可能性があったりといった課題もあります。
水力発電は良いところだけでなく、難しいところもありますが、地球の未来を救う大切な発電方法の一つです。
みんなが水力発電について学び、増やしていこうと頑張(がんば)れば、水力発電はどんどん広まっていくでしょう。
水力発電は地球に優しいけど、まだまだ上手くいかないところもあるんだね。
そうじゃ。水力発電はまだ課題もあるが、きっといつかはみんなの生活を支えてくれる発電方法になる。だから、今後に期待じゃな。
遠くない未来、頼(たよ)れる発電方法になりますよ。
楽しみだなぁ。
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公益財団法人イオン1%クラブでは、小学生を中心とし、体験学習から自然や環境に向き合うことができる「イオン チアーズクラブ」も運営しています。
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