
2025.09.30
土壌汚染とは?汚染を引き起こす原因や影響、私たちにできる対策法を解説!
土壌汚染は工業排水や農薬、廃棄物などによって引き起こされます。
土壌汚染が進むと、農作物への影響や地下水の汚染につながり、私たちの健康や生活に深刻な影響を与える問題となります。
本コラムでは、土壌汚染の原因や影響、私たちにできる対策について詳しく解説します。
目次
土壌汚染とは?

私たちの身近にある土壌は植物を育て、水を蓄え、生態系の維持に欠かせない存在ですが、さまざまな要因によって土壌が汚染されることがあります。
ここでは、土壌汚染の概要や特徴について詳しく解説します。
土壌汚染の概要
土壌汚染とは、本来は植物の生育や水の浄化などさまざまな働きを持つ土壌が、有害な物質によって汚染された状態のことです。
私たちの足元にある土壌は、植物の成長を支え、水を蓄え、生態系を維持する重要な役割を担っています。
そのため、土壌が工場の排水や廃棄物などに含まれる有害物質によって汚染されると、周囲の環境や人の健康に深刻な影響を及ぼしてしまうのです。
土壌汚染の主な原因は、工場からの有害物質を含む排水漏れや、不適切に処理された廃棄物の埋め立てや、自然由来の物質も含まれます。
土壌汚染の特徴
土壌汚染には、いくつかの特徴があります。
まず、汚染が発生しても、土の色や臭いが変わらない限り、見た目ではほとんど分かりません。
そのため、気づかないうちに汚染が進行し、健康や環境に悪影響を及ぼすことがあります。
また、土壌中に入り込んだ有害物質は、水質汚染や大気汚染とは異なり移動しにくいため、汚染物質は長期間にわたって土壌にとどまりやすく、汚染の原因を取り除いても、影響は長期間にわたって続きます。
このように、土壌汚染は目に見えにくく、気づきにくい上に、長期的な影響をもたらすという厄介な特徴を持っています。
土壌汚染が発生する原因は?

土壌汚染は、私たちの健康や生活環境、そして生態系に深刻な影響を及ぼす、決して他人事ではない問題です。
土壌汚染の原因は、大きく分けて「人為的な要因」と「自然由来の要因」の2つがあります。
人為的な要因
私たちの身の回りには、土壌汚染を引き起こす可能性のあるさまざまな要因が存在します。
まず、大きな要因の一つが工場や事業場からの有害物質の漏洩・排出です。
工場や事業場から有害物質を含む液体が漏れ出したり、工場の排気ガスに含まれる有害物質が地表に落下することで、土壌が汚染されることがあります。
過去に有害物質を使用していた工場や事業場の跡地では、地中に有害物質が残留している可能性が高く、再開発時に汚染が発覚することもあります。
工場や事業場以外でも、廃棄物の不適切な処理が土壌汚染の原因となることもあります。
例えば、廃油・廃プラスチック・建設廃材・電子機器などの有害物質を含む廃棄物が不法投棄されたり、適切な処理が行われず埋め立てられたりすることで、土壌に有害物質が蓄積されてしまいます。
また、生活排水や自動車の排気ガス、洗剤に含まれる化学物質、ゴミの不適切な廃棄など、私たちの日常生活における活動も、土壌汚染の原因となっているのです。
環境省の調査によると、2022年度に国内で実施された土壌汚染調査では、調査対象となった1,576件のうち、590件で土壌汚染が確認されました。
土壌汚染は目に見えないところで静かに進行し、気づいたときには取り返しがつかない状況になっていることも少なくありません。
そして、その原因の多くは、私たちの生活や経済活動にあるのです。
土壌汚染を防ぐためには、工場や事業場だけでなく、私たち一人ひとりが適切な廃棄や環境に配慮した生活を心がけることが重要です。
自然的な要因
土壌汚染は、人間の活動だけでなく、自然環境の影響によっても発生します。
自然由来の土壌汚染とは、その土地がもともと持っている成分や地質によって、有害物質が自然に土壌中に存在する状態のことです。
例えば、鉱山地帯や海成堆積物※が広がる地域では、もともと土壌汚染の原因となる自然由来の有害物質を多く含んでいることがあります。
鉱山地帯では、銅や水銀などを含む鉱物が多く存在し、雨水や地下水の作用によって、それらの金属成分が土壌中に溶け出すことがあります。
また、海成堆積物には、黄鉄鉱などの硫化鉱物が含まれていることがあり、これも土壌汚染の原因の一つです。
黄鉄鉱は、鉄と硫黄が結びついた鉱物で、空気に触れると酸化して硫酸を生成します。
この硫酸の影響で土壌が酸性化し、周囲の金属成分が溶け出しやすくなることで、結果的に土壌汚染を引き起こすことがあるのです。
自然由来の土壌汚染は、人間の活動による汚染と同様に、私たちの健康や生活環境に悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、土地の利用や開発を行う際には、その地域の地質や土壌成分を事前に調査し、適切な対策を講じることが重要です。
※ 昔は海だった場所に海洋由来の砂や泥、生物の死がいなどが長い時間をかけて積み重なってできた地層
土壌汚染による影響

土壌汚染は、単に地面が汚れるだけではなく、環境全体や私たちの生活にも影響をもたらします。
ここでは、土壌汚染がもたらす具体的な影響について解説します。
環境への影響
土壌汚染は、土壌そのものだけでなく、水や大気、そしてそこに生きるすべての生物に、悪影響を及ぼします。
土壌にはミミズや昆虫、微生物など、多くの生き物が生息しており、分解や栄養循環を担うことで生態系のバランスを維持しています。
しかし、土壌が有害物質で汚染されると、地中に住む生き物の生息環境が悪化し、死滅や繁殖能力の低下を引き起こし、生態系のバランスが崩れる恐れがあります。
さらに、雨水や地下水を通じて、汚染物質が河川や海へ流れ込み、水質汚染を引き起こすこともあります。
これにより、魚や貝などの水生生物が死滅したり、体内に有害物質が蓄積されたりすることもあり、汚染の影響は地中だけに留まりません。
また、重金属や農薬由来の有害物質が土壌に蓄積すると、微生物の減少によって土壌の肥沃度(ひよくど)※が低下し、農作物の生育や品質にも悪影響が及ぶのです。
※ 土壌が作物の成長に適した状態にある度合い
人間への影響
土壌汚染は、人間の健康や生活にも深刻な影響を及ぼします。
例えば、汚染された土壌では有害物質が広がることで農作物(野菜や米など)の生育に影響を与える可能性があり、その農作物を摂取することで有害物質が体内に取り込まれ、健康被害を引き起こす恐れがあります。
また、汚染された地下水が川や湖に流れ込み、その水を飲料水として利用したり、そこで獲られた魚介類を食べたりすることでも、有害物質が体内に取り込まれる危険性があるのです。
また、土壌汚染は健康被害だけでなく、生活環境の悪化にもつながる要因です。
例えば、汚染された土地では悪臭が発生したり、汚染の影響を受ける地域に住む人々が健康被害を受けたりする恐れもあります。
このように、土壌汚染は自然環境と人間社会の両方に多大な影響を与えるため、早期の対策が不可欠です。
土壌汚染によって発生した公害

土壌汚染は、ときに深刻な被害をもたらし、過去には公害を引き起こしたこともあります。
こうした公害問題から、土壌汚染がもたらすリスクやその対策の重要性が認識されるようになりました。
足尾銅山鉱毒事件
栃木県で発生した「足尾銅山(あしおどうざん)鉱毒事件」は、日本で最初の公害事件と言われています。
足尾銅山は、古くから銅の採掘が行われていましたが、明治時代に入ると近代化が進められ、大規模な採掘や精錬(せいれん)※が行われるようになりました。
機械化の導入や新技術の発展により、足尾銅山は日本の銅産出量の約40%を占める、日本一の銅山へと成長しました。
しかし、その一方で、銅の精錬過程で発生する有害物質が、環境に深刻な影響を与えるようになったのです。
足尾銅山から排出された鉱毒(硫酸銅などの有害な鉱山排水)は、渡良瀬川(わたらせがわ)に流れ込み、流域の生態系と人々の暮らしをおびやかしました。
魚はほとんど姿を消し、農作物も成長不良を起こすなど、渡良瀬川流域に壊滅的な打撃を与えたのです。
さらに、銅の精錬所から排出される亜硫酸ガスは、周辺の森林を枯死させました。
森林が失われたことで水を蓄える力が低下し、大雨のたびに大規模な洪水が起きてしまうことで土壌汚染が引き起こされ、被害がさらに拡大してしまいました。
足尾銅山鉱毒事件は、産業発展の陰で環境破壊と健康被害が引き起こされた公害です。
※ 粗金属から不純物を取り除いて純度を高めること
イタイイタイ病
イタイイタイ病は、日本の四大公害病のひとつで、富山県で多くの人々を苦しめた公害病です。
患者が激しい痛みのあまり「イタイ、イタイ」と叫ぶことが、この病名の由来となりました。
イタイイタイ病の原因は、岐阜県にある神岡鉱山(かみおかこうざん)から排出されたカドミウムによる環境汚染でした。
カドミウムは、銅や亜鉛などの鉱石に含まれる重金属の一種であり、人体に有害な物質です。
神岡鉱山では、亜鉛や鉛の採掘・精錬が行われ、その過程で発生したカドミウムを含む排水が、岐阜県と富山県を流れる神通川(じんづうがわ)へと流れ込みました。
汚染された神通川の水は農業用水として使用され、その水で育った米や野菜を摂取した住民が長年にわたってカドミウムを体内に取り込んだ結果、イタイイタイ病を発症し、患者は激しい痛みを伴う症状に苦しむことになってしまいました。
イタイイタイ病は多くの患者やその家族、地域社会に深刻な被害をもたらした公害です。
土壌汚染対策法とは?

土壌汚染対策法は、土壌汚染による人の健康被害の防止を目的として、2002年5月に制定され、2003年2月15日に施行された法律です。
この法律は、土壌汚染の調査や対策を義務付けることで、私たちの健康と環境を守る役割を果たしています。
土壌汚染の状況を把握するために、次のタイミングで土壌の調査が実施されます。
- 特定有害物質を使用していた施設の廃止時
- 一定規模以上の土地の形状を変更する届出を出す際に、都道府県知事などが土壌汚染の可能性を認めた場合
- その他、都道府県知事などが土壌汚染の可能性を認めた場合
土壌汚染状況調査の結果、基準を超える汚染が確認された場合には、「措置区域」に指定され、汚染の拡散防止や土壌の除去に必要な対処を行います。
土壌汚染に対して私たちができる対策は?

土壌汚染は、私たちの健康や生活環境だけでなく、未来の世代にも影響を及ぼす深刻な問題です。
今後土壌汚染が引き起こされないように、私たちができる対策についても把握しておきましょう。
方法 | 内容 |
---|---|
土壌汚染について知る | ・インターネットや図書館で、土壌汚染の原因や影響について調べてみる ・土壌汚染について学び、有害物質について知ることで特定の有害物質に関連するモノの購入や使用を避けられる |
土壌汚染の原因となる特定有害物質について知る | ・何にどのような特定有害物質が使われているのかを知り、特定有害物質が使われているモノの使用を避ける (参照:公益財団法人日本環境協会) |
私たち一人ひとりが、土壌汚染について正確に把握することで、土壌汚染を防ぎ、持続可能な社会の実現に貢献できます。
公益財団法人イオン1%クラブ「イオン チアーズクラブ」について

公益財団法人イオン1%クラブが運営する「イオン チアーズクラブ」は、全国の小学校1年生から中学校3年生までを対象とした活動団体です。
イオン チアーズクラブでは、環境や社会に対して興味・関心を持ち、考える力を育むため、さまざまな体験学習を実施しています。
体験学習では子どもたちがメンバーで協力し合い、一丸となって活動に取り組むため、集団行動における社会的なルールやマナーも学べます。
「子どもを自然と触れ合わせたい」や「楽しみながら環境や社会について学んでほしい」と考えている保護者の方は、ぜひお子さまのイオン チアーズクラブへの参加を検討してみてはいかがでしょうか。
イオン チアーズクラブの活動をさらに詳しく知りたい方は以下のURLからご覧ください。
子どもたちが主役!環境・社会をテーマにした体験学習で楽しく学ぼう!
まとめ
本コラムでは、土壌汚染の原因や影響について解説しました。
土壌の汚染が進むと、浄化には長い時間と多額の費用がかかるため、土壌汚染は未然に防ぐことが最も重要です。
土壌汚染の深刻さを理解し、私たち一人ひとりができる対策を実践することが求められています。
生活排水の削減やゴミの適切な処理など、環境を守るためにできることから始めてみましょう。
公益財団法人イオン1%クラブについて

公益財団法人イオン1%クラブは、1990年に設立され、「お客さまからいただいた利益を社会のために役立てる」という想いのもと、「子どもたちの健全な育成」「諸外国との友好親善」「地域の発展への貢献」「災害復興支援」を主な事業領域として、環境・社会貢献活動に取り組んでいます。
「子どもたちの健全な育成」事業の一つである「イオン チアーズクラブ」では、小学生を中心に、環境や社会貢献活動に興味・関心を持ち、考える力を育む場として体験学習を全国で行っています。
また、中学生が環境に関する社会問題をテーマに、自ら考え、書く力を養う「中学生作文コンクール」や、高校生が日ごろ取り組んでいる環境保全や社会貢献に関する活動を発表し、表現力や発信力を高めることを目的とした「イオン エコワングランプリ」など、さまざまな活動を実施していますので、ぜひ下のURLから詳細をご覧ください。