酸性雨とはどういう雨のこと?原因や仕組みから影響・対策までわかりやすく解説
環境

2026.01.20

酸性雨とはどういう雨のこと?原因や仕組みから影響・対策までわかりやすく解説

酸性雨とは、工場や自動車の排出ガスなどに含まれる酸性の汚染物質が原因となり、通常よりも酸性値が高くなった雨を指します。工場や自動車の排出ガスなどに含まれる汚染物質が原因で発生します。

しかし、このような概要だけではいまいち理解できない方も多いのではないでしょうか。

本コラムでは、酸性雨の定義や、降る仕組みをはじめとした基礎知識を初心者向けにまとめました。さらには「酸性雨が及ぼす影響は?」や、「日本では降っているの?国は何か対策しているの?」といった疑問についても解説しています。

本コラムを読めば、酸性雨に関する基礎知識が一通り身に着くでしょう。興味のある方はぜひご覧ください。

酸性雨とは?基礎知識をわかりやすく解説

酸性雨とは、人の活動が原因となって、雨のpHが通常よりも低く、酸性に傾いた雨のことです。
しかし、このような専門用語での概要解説では、あまり理解ができないのではないでしょうか。

ここでは、誰でもわかりやすいように、酸性雨の定義や仕組みを解説します。

※ 液体が酸性かアルカリ性かを示す数値のこと。pH7を中性とし、これよりも低ければ酸性寄り、高ければアルカリ性寄りとなる。

酸性雨とは「人の活動によって排出された酸性物質を取り込んだ雨」のこと

酸性雨とは、生産や運搬など、人の活動によって排出された酸性の大気汚染物質を取り込むことで酸性化した雨のことです。

「人の活動による」という内容がなぜ定義に含まれているのかというと、空気中には自然発生する酸性物質も多数あるためです。

例えば、空気中に含まれる二酸化炭素は、水に溶けると酸性を示すので、どのような雨であっても少なからず酸性化はしています。

また、火山のそばで降る雨は、一般的な地域よりも酸性化しています。火山近くの空気中には、二酸化炭素だけでなく二酸化硫黄も多く含まれており、これがまた雨の酸性化を進めるためです。

このような自然現象による酸性化した雨のことは、酸性雨には含まれません。

「酸性雨=pH値が5.6以下」というのはあくまで目安である

酸性雨を判断する目安として、「pH値が5.6以下」という話もありますが、これには注意が必要です。「二酸化炭素をよく溶かした水のpH値が5.6程度であるため、5.6を一つの基準とすることもある」といった話であり、絶対的な定義ではありません。

そのため、5.6より少し低いだけでも酸性雨といわれます。

酸性雨というと、ただちに自然や人体に影響を与えそうな怖いイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実はそうではないのです。人の活動によって、酸性値が強まった雨は、影響のあり・なしに関わらず、すべて酸性雨です。

酸性雨が発生する原因と仕組み

酸性雨の原因は、人間の活動によって排出された「酸性物質」です。これが空気中で雨に溶けることで酸性雨になります。

火山のそばの空気には二酸化硫黄が多く含まれていて、この影響で雨の酸性化が進むと前述しました。この二酸化硫黄は、工場や自動車を動かすために使われるエネルギー源の一つである石油や石炭といった化石燃料を燃やすときにも排出されます。

化石燃料を燃やすときには、窒素酸化物も排出されます。これもその名前の通り酸性物質であり、酸性雨の原因です。

酸性雨が及ぼす2つの影響

酸性雨は、水質の悪化によって生態系のバランスを崩す恐れがあるほか、建造物や文化財の劣化を早めます。

ここでは、酸性雨が及ぼす生態系への影響と、建造物・文化財に与える影響をそれぞれわかりやすく解説します。

影響①湖や川の水質を酸性化させ、生態系を壊す

酸性雨が湖や川に流れ込むと、水質を酸性化させて、水中生物の生態系に悪影響を与える恐れがあります。

例えば、過去に研究機関が行った検証では、通常より少しだけ酸性値の強い環境下に置かれたニジマスやヒメマスは繁殖率が下がったといいます。繁殖に必要な体の機能に障害が出たためです(出典:国立研究開発法人 水産研究・教育機構)。

また、北欧では酸性化によってタイセイヨウサケをはじめとしたサケの仲間が激減してしまったそうです。

このように生き物にとって適切な水のpH値は異なりますが、それは何も魚だけの話ではありません。水の酸性化は、水中に住む虫や甲殻類、さらには水草などの植物にも影響を与えます。

水草が減ればそれを餌にしていた虫が減り、虫が減れば……というように生態系は複雑に絡み合って保たれています。酸性雨が生態系に与える影響は、非常に大きいものだといえるでしょう。

影響②建物や文化財を劣化・腐食させる

酸性雨は、建造物や文化財の劣化を早める要因となります。金属を錆びつかせたり、石灰岩や大理石を溶かしてしまうためです。

過去には、ロンドンのウェストミンスター寺院やドイツのケルン大聖堂などが酸性雨による被害によって、補修に多額の費用がかかったこともありました。

一方、鉄筋コンクリート製の建物や文化財は、酸性雨をはじめ外的要因による劣化や腐食には比較的強いといわれています。鉄筋を覆うコンクリートは、強いアルカリ性のため、一般的な酸性雨程度のpH値であれば、大きな問題にはならないのです。

ただし、経年劣化などによってひび割れができてしまっている場合には別です。すき間から酸性雨がコンクリートの内部にまでしみ込み、酸化に弱い鉄筋にまで到達すれば、腐食が起こってしまいます。

文化財は、かけがえのない国の財産であり、その長期保存を脅かすという意味でも酸性雨は大きな問題だといえます。

日本における酸性雨の現状と対策

日本で降っている雨のpHは、2023年度の加重平均で、4.98です。少し酸性に偏っていますが、現時点では生態系への影響などの明らかな問題には発展していません。

しかし、酸性雨の影響はすぐに出るとは限らないため、日本ではさまざまな対策を実施しています。

<日本における酸性雨の対策例>

  • 「大気汚染防止法」による取り決め…工場における硫黄酸化物や窒素酸化物の排出規制など
  • 自動車などの脱炭素政策…電気自動車の開発支援や購入支援、エコドライブの普及・推進など
  • 東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)の構築…東アジア13か国による協力体制

酸性雨の原因となるのは、工場や自動車から排出される硫黄酸化物や窒素酸化物といった酸性物質です。

大気汚染防止法では、硫黄酸化物や窒素酸化物を工場などの発生源で直接規制しています。また、排気ガスを出さない電気自動車への乗り換えや、ガソリンの消費自体を抑えるエコドライブの実践も、自動車から排出される窒素酸化物の削減に直接つながる取り組みです。

さらに、酸性雨は国境を越えてやってくる性質があるため、「EANET」のように近隣諸国と協力し、地域全体で大気汚染の状況を監視・対策していく国際的な枠組みも重視されています。

※ 数値の持つ重要度を考慮して平均を算出する方法。酸性雨の場合、降水量を考慮して平均値を算出する。

酸性雨を防ぐために!私たちにできること

酸性雨を防ぐための対策と聞くと、「国が行うことであり、自分には関係のないことだ」と感じてしまうかもしれません。しかし、国際規模でしなくてはいけないことの多くは、国民一人ひとりの日常的な行動や考え方の変化が大切だといわれています。

酸性雨対策もその一つです。なぜなら、雨を酸性に傾ける原因となる酸性物質は、私たちの日常生活のなかからも排出されているためです。

例えば、ごみの焼却時や自動車の運転中にも酸性物質は排出されます。だからこそ、次に述べるような一人ひとりの行動により酸性物質の排出を減らすことが、酸性雨を防ぐことにつながります。

  • 積極的に公共交通機関や自転車などエコな移動方法を利用する
  • リサイクルをはじめとした5Rを意識してゴミを減らす

日々の小さな選択で、美しい地球を守りましょう。

地球のためにできることについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

エコ活動の取り組みを知りたい方へ!12の方法と法人の事例を解説

リサイクル・リデュース・リユースを含む5つのRとは?日常生活での取り組み例も紹介

酸性雨に関するよくある質問

酸性雨について調べていくと、「いつから降っているの?」「どの地域で多いの?」など、ふと気になる疑問が出てきませんか。ここでは、そのような酸性雨に関するよくある質問を、わかりやすく解説していきます。

日本はいつから酸性雨が降り始めたの?

日本で、酸性雨の影響が指摘され始めたのは1970年代前半です。

日本の高度経済成長期がちょうど1955〜1974年にあたり、開発が一気に進むのに比例して、酸性物質も多量に排出されたためでしょう。当時は今ほどの規制がなく、生産効率ばかりが重視されたという背景もあります。

酸性雨が多い県はどこ?

酸性雨の強さは細かな地域や、観測したタイミングによって異なるため、「この県が多い」とは一概には言い切れません。

最新の情報を知りたい場合は、環境省のモニタリングデータを確認するか、各自治体でも記録していることがあるので、そちらを探してみるのがおすすめです。

公益財団法人イオン1%クラブ「イオン チアーズクラブ」について

公益財団法人イオン1%クラブが運営する「イオン チアーズクラブ」は、全国の小学校1年生から中学校3年生までを対象とした活動団体です。

イオン チアーズクラブでは、環境や社会に対して興味・関心を持ち、考える力を育むため、さまざまな体験学習を実施しています。

体験学習では子どもたちがメンバーで協力し合い、一丸となって活動に取り組むため、集団行動における社会的なルールやマナーも学べます。

「楽しみながら環境や社会について学んでほしい」と考えている保護者の方は、ぜひお子さまのイオン チアーズクラブへの参加を検討してみてはいかがでしょうか。

イオン チアーズクラブの活動をさらに詳しく知りたい方は以下のURLからご覧ください。

子どもたちが主役!環境・社会をテーマにした体験学習で楽しく学ぼう!

まとめ

本コラムでは酸性雨とはどういう雨なのか、定義と原因、さらには影響についても解説しました。

酸性雨は、一般的には「人間の活動の影響によって酸性化が進んだ雨」のことを指します。私たちの暮らしが雨の性質に変化を与え、水中の生物や大切な建造物に影響を与えているのです。

酸性雨に限らず環境問題は、地球に暮らす一人ひとりの意識と行動が大切だといわれています。まずは「どうして起こるのか、何が問題なのか」を知ることも、行動の一つです。

この機会に、未来の地球のために何ができるのかを一緒に考え、行動していきましょう。

公益財団法人イオン1%クラブについて

公益財団法人イオン1%クラブは、1990年に設立され、「お客さまからいただいた利益を社会のために役立てる」という想いのもと、「子どもたちの健全な育成」「諸外国との友好親善」「地域の発展への貢献」「災害復興支援」を主な事業領域として、環境・社会貢献活動に取り組んでいます。

「子どもたちの健全な育成」事業の一つである「イオン チアーズクラブ」では、小学生を中心に、環境や社会貢献活動に興味・関心を持ち、考える力を育む場として体験学習を全国で行っています。

また、中学生が環境に関する社会問題をテーマに、自ら考え、書く力を養う「中学生作文コンクール」や、高校生が日ごろ取り組んでいる環境保全や社会貢献に関する活動を発表し、表現力や発信力を高めることを目的とした「イオン エコワングランプリ」など、さまざまな活動を実施していますので、ぜひ下のURLから詳細をご覧ください。

公益財団法人イオン1%クラブの活動内容を詳しく知りたい方はこちら

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