
2025.12.02
世界水の日とは?水不足による問題や、私たちができることを解説
3月22日は、国連によって定められた「世界水の日(World Water Day)」です。
世界には安全な水を手に入れられず、日常生活や健康に深刻な影響を受けている人が数多く存在します。そのような現状を多くの方に知ってもらい、水資源を守ることの大切さを広めるために、世界水の日が設けられました。
本コラムでは、世界水の日が生まれた背景や世界で起きている水不足の現状、そして私たちができるアクションについて、分かりやすく解説します。
目次
世界水の日とは?

毎年3月22日の「世界水の日」は、水の重要性を改めて考え、具体的な行動につなげることを目的とした国際デーです。
世界水の日は1993年から始まりました。ここでは、世界水の日が生まれた理由・由来や、各地のイベントについて解説します。
世界水の日が生まれた理由・由来
世界水の日は、世界中の人々に「水資源の大切さ」を広く認識してもらい、各国政府や事業者、個人が協力して水問題の解決に取り組むきっかけをつくるために生まれました。
地球上のあらゆる経済活動や社会生活は、良質な淡水の安定した供給に支えられていますが、人口の増加や都市化、経済活動の拡大により、水資源環境の危機は年々高まっています。
そうした課題を共有し、水資源の重要性を世界中で見直すために、1992年12月の国連総会で毎年3月22日を「世界水の日」とすることが決まりました。
そうして迎えた1993年3月22日に世界水の日が始まり、今日まで続いています。
世界水の日に関する各地のイベント・取り組み例

世界では、世界水の日の当日やその前後に、シンポジウムやキャンペーン、チャリティーイベントなどが実施されています。
イベント内容はいずれも「水の大切さや、世界の現状について改めて考える」ように設計されています。
ただし、具体的な内容は毎年異なるため、ここでは過去に開催されたものを参考までにチェックしてみましょう。
国連水会議
2023年3月22日〜24日、「国連水会議」が46年ぶりに開催されました。
会議には、約1万人が国連本部、あるいはオンラインで参加し、世界の水問題についてさまざまな視点から討議が進められました。
「具体的な解決策を練り、実施するうえでは資金が不足している」ことも取り沙汰され、その結果として700以上の機関や団体(各国政府を含む)などが、資金援助の名乗りを上げました。
そのなかには日本政府も含まれており、2023年から5年間で約5,000億円の資金援助を行うことを約束しています。
Blue4Waterキャンペーン
Blue4Waterキャンペーンは、NPO法人(特定非営利活動法人)「ウォーターエイドジャパン」が毎年3月22日の世界水の日に実施している参加型キャンペーンです。
このキャンペーンの目的は水に関する問題への関心を高めることです。参加者は、青いアイテムを身につけたり、青いアイテムの写真を撮ってハッシュタグ「#Blue4Water」をつけSNSに投稿したりして、「世界中を青く染めるアクション」を起こします。
自治体や事業者が協力し、建物やランドマークを青い光でライトアップする活動も行われています。例えば、これまでには、札幌市のさっぽろテレビ塔や熊本県の熊本城天守閣など、全国でブルーライトアップが実施されました。
Walk in Her Shoes
「Walk in Her Shoes」は、国際NGO「CARE」が主催している参加型キャンペーンです。CARE※に加盟している各国で実施されており、日本では2025年度が第14回目となります。
※ 女性や子どもにフォーカスし、貧困や人道危機の解決を目指す国際NGO
催しは国や開催年度によって異なりますが、2025年度の日本の場合は、複数のイベントを実施しています。
メインとなるのは、毎日、遠くまで水を汲みに歩かなくてはいけない人々を疑似体験する「好きな時間、好きな場所で歩く」といったイベントです。
団体でも個人でも、Webから事前エントリーで参加※でき、歩数を報告すると、500歩につき1円が協賛企業各社から公益財団法人ケア・インターナショナルジャパンへ寄付されます。
このほかに、水にまつわる写真をアップするといったイベントも開催されており、水問題やそのためのアクションについて認知度を高める取り組みとなっています。
※ 「好きな時間、好きな場所で歩く」イベントのみは、エントリーが有料。
世界ではどんな水問題が起きているの?

日本は幸運にも、降水量が多く水が豊かな国ですが、それだけに「水不足で苦しんでいる人々が世界には多くいること」を身近に感じづらいのではないでしょうか。
ここでは世界で起こっている代表的な水問題についてわかりやすく解説します。
世界水の日の重要性を改めて実感するためにも、ぜひ目を通してみてください。
安全な飲み水を手に入れられない人が多くいる
私たちは自宅の蛇口をひねれば安全に管理された飲み水が手に入る環境にいます。しかし、それが当たり前ではない人が2022年の時点で22億人(世界人口における4人に1人)もいるといいます。
22億人のうち17億9,200万人は、飲み水を手に入れるために、水源まで向かわなくてはいけません。
水汲み場までの距離はさまざまですが、なかには非常に遠く、多くの時間と体力が奪われている人々もいます。
水汲みを担うのが、主に子どもであるのも問題です。1日の大半を水汲みに費すケースもあるため、教育の機会が奪われ続け、彼らの将来にまで悪影響を与える恐れがあるのです。
また、22億人のうち4億1,100万人は、「人や動物の排泄物から守られていない状態の水源」「川や池などの水源」から飲み水を得ています。これらは汚染されている可能性が高く、飲むのには不適切な水です。
汚染された水は、体調不良を引き起こす原因となります。特に抵抗力の弱い子どもたちは体調不良になりやすく、最終的には脱水症状などによって命を落とすことも珍しくありません。
水にまつわる課題は、生活の質や健康に大きな影響を及ぼしているのです。
地球温暖化の影響を受けて水不足が深刻化している国や地域がある
地球温暖化の影響により、水がより手に入りづらくなっている国や地域があります。
地球の温度が上がると、気象が極端化しやすいことが分かっています。つまり、雨の降る日数も量も少ない傾向にあった地域は、地球温暖化が進行するほど、さらに雨が少なくなってしまうのです。
例えば、イラクの一部地域では、降水量が例年の10分の1ほどに減ってしまい、川が干上がるほどの状況に陥っているケースもあります。
これほど大規模かつ長期間に及ぶ水不足は、農業や畜産にも影響を与え、飲み水だけでなく食料の確保すらも難しくします。
また、日本は数々のモノを海外から輸入しています。輸入先が水不足により生産量激減となれば、モノが手に入りづらくなる、値段が高騰するなど、私たちの暮らしにも影響を及ぼすでしょう。
水不足が原因で争っている地域もある
川や湖が近くにある地域では、水の所有権や水資源の配分が争いの火種となっています。
特に「国際河川」と呼ばれる、いくつかの国にまたがって流れる河川を持つ地域では、国同士の対立が起きやすいとされています。
世界には270本以上の国際河川があり、ナイル川(エジプト)、ライン川(ヨーロッパ)などが代表例です。
なかでも、ナイル川流域では、エチオピアが建設を進める「グランド・エチオピア・ルネッサンス・ダム(GERD)」をめぐり、エチオピア・エジプト・スーダンの3カ国が激しく対立しています。
こうした水資源をめぐる争いは地域の発展や住民の暮らしに影響を及ぼし、持続可能な水管理を妨げる要因にもなっています。
世界水の日をきっかけに考えたい「バーチャルウォーター」のこと

水は私たちの暮らしに欠かせない資源です。その消費は飲み水や生活用水に限られた話ではありません。実は、日々の「食べる」「買う」といった行動の裏側でも、大量の水が使われているのです。
ここでは、世界水の日をきっかけに「バーチャルウォーター」に注目し、私たちにできる行動について考えてみましょう。
バーチャルウォーターとは?
バーチャルウォーターの削減を意識して生活することは、世界の水問題に対して私たちができることの一つです。
バーチャルウォーターとは、農作物や工業製品、食料を輸入している国が、「もし自分の国でこれらを生産するとしたら、どれほどの水が必要になるか」を推定したものです。
例えば、牛肉1kgを生産するのに必要なバーチャルウォーターは、約3,600万リットルといわれています。これには牛の飲み水だけでなく、飼料の栽培など間接的に使われる水も含まれています。
バーチャルウォーターの量が増えるということは、直接的に水を輸入したわけではなくても、仮想的に水を輸入したことになります。結果的にその国や地域に住む人々が使用できる水の量は減ってしまうのです。
日本が1年間で消費しているバーチャルウォーターは、約800億立方メートル※といわれており、大半は食料品の輸入によるものです。
私たち一人ひとりがバーチャルウォーターについて知り、その削減を意識して日々の選択や消費行動を見直すことが、世界の水不足を防ぐためにも非常に重要なことなのです。
※ 東京ドーム(124万立方メートル)約6万4,500個分の体積/琵琶湖の貯水量(275億立方メートル)の約3杯分の水量
食品ロスを避けて、限りある水資源を大切にしよう
バーチャルウォーターの削減に貢献したいのなら、食品ロスを避けることから始めてみませんか。
食品ロスによって、本来食べられるはずだった食品が無駄になることは、その生産や輸送などに使われた大量の水も一緒に浪費されたことと同じなのです。
食品ロスを避けるためのポイントは、次の通りです。
- 必要な分だけ食品を買う
- 食べきれる分だけつくる・注文する
- 保存方法を工夫する など
食材を購入するときはもちろん、つくるときや注文をするときも適量を心掛けましょう。
食材に合った保存方法を選び、長持ちさせる工夫も大切です。
食品ロスを避けるための方法をより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
SDGs達成のため「食品ロス」を減らそう!私たちにできる12の方法を解説
安全な水を世界へ届けるために!寄付も私たちができることの一つ

支援団体への寄付もまた、世界の水問題に対して、私たちができることの一つです。
日本を含む世界各地では、水問題をはじめとした環境・社会問題に取り組むさまざまな団体が存在し、支援活動を行っています。
団体によって活動内容はさまざまで、例えば次のようなものがあります。
- 井戸や給水施設の建設支援:遠くまで水を汲みに行く負担を減らし、安全な水を確保する
- 衛生教育や設備整備のサポート:トイレや手洗い場を設置して、感染症のリスクを下げる
- 災害時の緊急援助:地震や干ばつなど、緊急性の高い事態への迅速な対応 など
寄付を検討する際は、団体のWebサイトや活動報告を確認し、「どのようなプロジェクトに資金が使われているのか」「どの地域への支援なのか」をチェックしましょう。
オンライン寄付に対応している団体も多いため、自分の意志で、いつでもどこでも水問題への支援に参加できます。
公益財団法人イオン1%クラブ「イオン ユニセフ セーフウォーターキャンペーン」について

公益財団法人イオン1%クラブでは、カンボジア等の子どもたちに安全な水を供給するため、全国から寄せられた募金と当財団からの拠出金を、公益財団法人日本ユニセフ協会を通じて寄付しています。
このキャンペーンは、2010年からカンボジア・ラオス等の水・衛生事業を支援するためにスタートしました。
遠方への水汲みに時間をとられ、学校の授業に参加できない子どもたちや、健康を害する恐れのある物質を含む地下水を生活用水として使う子どもたちを給水施設の設置等により、教育・健康の両面でサポートしています。
安全な水と衛生環境は、子どもたちの命を守り、健やかな成長を支える基盤です。
公益財団法人イオン1%クラブでは、今後もイオン ユニセフ セーフウォーターキャンペーンを通じて世界が抱える水問題の解決に取り組んでいきます。
公益財団法人イオン1%クラブのイオン ユニセフ セーフウォーターキャンペーンについて、さらに詳しく知りたい方は、下記のURLからご覧ください。
イオン ユニセフ セーフウォーターキャンペーンについて詳しく知りたい方はこちら
公益財団法人イオン1%クラブ「イオン チアーズクラブ」について

公益財団法人イオン1%クラブが運営する「イオン チアーズクラブ」は、全国の小学校1年生から中学校3年生までを対象とした活動団体です。
イオン チアーズクラブでは、環境や社会に対して興味・関心を持ち、考える力を育むため、さまざまな体験学習を実施しています。
体験学習では子どもたちがメンバーで協力し合い、一丸となって活動に取り組むため、集団行動における社会的なルールやマナーも学べます。
「子どもを自然と触れ合わせたい」や「楽しみながら環境や社会について学んでほしい」と考えている保護者の方は、ぜひお子さまのイオン チアーズクラブへの参加を検討してみてはいかがでしょうか。
イオン チアーズクラブで開催された活動
ここでは、イオン チアーズクラブでこれまでに実施してきた活動内容の一部をご紹介します。
河川の水質調査
イオン チアーズクラブでは、環境の日(6月5日)に合わせて、全国で近隣の河川の水質調査を行っています。
調査キットを使用して水質汚濁の度合いなどを計測し、身近な水環境について学ぶとともに、魚たちが住みやすい環境かどうかを調査しています。
結果は、全国水環境マップ実行委員会によって公開され、水環境の変化の把握や、水質改善や水辺の環境整備など水環境を守る活動に役立てられています。
下水道科学館の見学
愛知県のメタウォーター下水道科学館を見学し、下水処理の仕組みや水循環の大切さを学びました。
メンバーたちは滝が流れている大きな山に驚きの声を上げていました。下水道に関するクイズにも熱心に取り組み、イオン チアーズクラブのスタッフと共に答え合わせをしながら知識を深めました。
この他にも、イオン チアーズクラブではさまざまな活動を行っています。
イオン チアーズクラブの活動をさらに詳しく知りたい方は以下のURLからご覧ください。
子どもたちが主役!環境・社会をテーマにした体験学習で楽しく学ぼう!
まとめ
本コラムでは、世界水の日の解説に始まり、世界各地で起こっている水問題や私たちにできる取り組みまで解説しました。
世界水の日は、水の大切さを改めて認識し、水環境・水資源を守る行動を起こすための日です。
地球上にある水の中で、実際に使える水資源は限られています。
気候変動や紛争、貧困など多様な要因が絡み合う水問題を解決するため、節水やバーチャルウォーター削減など、まずは私たちにできることから始めてみましょう。
公益財団法人イオン1%クラブについて

公益財団法人イオン1%クラブは、1990年に設立され、「お客さまからいただいた利益を社会のために役立てる」という想いのもと、「子どもたちの健全な育成」「諸外国との友好親善」「地域の発展への貢献」「災害復興支援」を主な事業領域として、環境・社会貢献活動に取り組んでいます。
「子どもたちの健全な育成」事業の一つである「イオン チアーズクラブ」では、小学生を中心に、環境や社会貢献活動に興味・関心を持ち、考える力を育む場として体験学習を全国で行っています。
また、中学生が環境に関する社会問題をテーマに、自ら考え、書く力を養う「中学生作文コンクール」や、高校生が日ごろ取り組んでいる環境保全や社会貢献に関する活動を発表し、表現力や発信力を高めることを目的とした「イオン エコワングランプリ」など、さまざまな活動を実施していますので、ぜひ下のURLから詳細をご覧ください。