
2026.07.14
海洋酸性化とは?原因や仕組みのほか世界の現状・求められる対策について
海洋酸性化とは、簡単にいえば海の酸性濃度が上がる現象を指します。しかし、なぜ海の酸性濃度が上がるのかを疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、海洋酸性化の定義から起こる原因に至るまで、基礎知識を誰にでもわかりやすく解説します。さらには影響や対策まで広くまとめているので、一読すれば海洋酸性化について一通り学べるでしょう。
目次
海洋酸性化とは?定義と仕組み

海洋酸性化とは、大気中にある二酸化炭素が海に溶け込むことで、本来弱アルカリ性である海水が酸性に近づく現象のことです。
ここでは、このような仕組みをよりわかりやすく解説するほか、深刻化しているという現状についてもまとめました。
海洋酸性化が起こる仕組み
海洋酸性化が起こる理由は、大気中の二酸化炭素が多く海に溶け込むためです。
二酸化炭素は大気から海へ、海から大気へと、取り込まれたり放出されたりを常に繰り返しています。
しかし、二酸化炭素が海に取り込まれると化学反応が起き、やがて水素イオンを発生させます。海水中の水素イオン濃度が一定値を超えると、通常なら弱アルカリ性の海水が酸性へと傾いてしまうのです。
なお、一時的にpH※が酸性に傾く程度であれば、海洋酸性化とはいいません。長期にわたってpHが低下したままの状態が続く場合のみを指します。
※ pHとは、水の性質を示す指標の一つ。pH7を中性とし、7よりも数値が低いほど酸性、高いほどアルカリ性となる。
海洋酸性化の現状と深刻化の原因
IPCC※の報告書によれば、「このまま二酸化炭素を削減できなければさらに酸性化が進み、2100年までにはpHが最大で約0.3下がる(出典元:気象庁)」といわれており、海の生態系への壊滅的な影響が懸念されています。
海洋酸性化を深刻化させている主な原因は、人間の生産活動によって排出される二酸化炭素です。
国際エネルギー機関(IEA)の発表によれば、2024年のエネルギーに関連した二酸化炭素の世界排出量は前年比よりも0.8%増加して、378億トンでした。エネルギー関連の二酸化炭素排出量は年々増加を続けており、海の酸性化を加速させています。
※ IPCCとは、世界各国の気候変動を科学的に分析し、報告書を作成・発表する国際的な組織
海洋酸性化がもたらす主な影響

大気中における二酸化炭素の量が増え、海の酸性化が進むことは、具体的にどういった影響をもたらすのでしょうか。
ここでは、海洋酸性化がもたらす主な影響について解説します。
海洋生態系への悪影響
海洋酸性化が進むと、サンゴや貝類・甲殻類など海洋生態系に深刻な影響が出ます。
サンゴの骨格や貝類・甲殻類の殻は、主に炭酸カルシウムという物質でできています。炭酸カルシウムは酸性が強くなると水に溶け出す性質があるため、酸性化した海では殻が薄くなったり、生育が遅くなったりするのです。
実際、アメリカでは海洋酸性化の影響で、2005〜2009年にカキの子どもが大量死したり、甲殻類を食べて成長するサケやニジマスの漁獲量が減少したりする事態が起きました。
日本でも、ホタテの養殖が盛んな青森県の陸奥湾(むつわん)で、酸性化の傾向が確認されています。このまま海洋酸性化が進めば、将来的にサイズの縮小や絶滅などが起こる可能性もあります。
海が持つ二酸化炭素を吸収する力の低下
海洋酸性化が進行していった場合、海の二酸化炭素を吸収する力の低下が懸念されています。
IPCCによれば、海は人間が排出してきた二酸化炭素の約25%を吸収し、気候変動が起こる速度の緩和に役立ってきたといいます。しかし、海洋酸性化が進むとともに吸収能力が急速に低下しているのです。
海の二酸化炭素を吸収する力が低下すれば、大気中の二酸化炭素の量が増えやすくなります。結果、地球温暖化など二酸化炭素の増加が原因となって起こっている環境問題は、悪化する恐れがあるでしょう。
日本や世界における海洋酸性化への対策例

これ以上海洋酸性化が進まないように、日本や世界ではさまざまな取り組みが行われています。
ここでは、海洋酸性化の対策例についていくつか紹介します。
パリ協定やSDGsなどによる世界的な意識改革
海洋酸性化の原因である二酸化炭素の排出を削減するには、一般市民も含め、世界全体で意識的に行動を起こすことが重要です。そのため、各国が協力してパリ協定やSDGsなどを採択し、周知することで世界的な意識改革を行っています。
パリ協定とは、二酸化炭素を含む温室効果ガスの削減を目指す国際的な取り決めのことです。参加国は、温室効果ガスの抑制・達成目標をそれぞれ掲げ、目標を達成するための取り組みを進めています。
SDGsとは、世界のさまざまな問題を解決するために定められた、具体的な17の目標のことです。目標14の「海の豊かさを守ろう」のなかで、海洋酸性化の影響を最小限にするよう定められており、世界的な意識の向上が図られています。
SDGsについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
SDGsで私たちにできることは?17の目標から小・中・高・大学生向けに解説
クリーンエネルギーの開発・普及
環境にやさしいクリーンエネルギー※の開発や普及は、海洋酸性化の対策として有効です。
普段の生活で多く使われる電気やガソリンは、主に石油や石炭といった化石燃料から生み出されています。しかし、化石燃料は使用に伴い二酸化炭素が排出されるため、これを防ぐために環境にやさしいエネルギーの開発・普及が進められています。
例えば、日本では2030年までに新築戸建て住宅の6割に太陽光発電を設置する目標を掲げ、各ハウスメーカーや工務店などと連携し、設置が行われてきました。そのほかにも、風力発電や地熱発電など、幅広いクリーンエネルギーの導入が日本各地で行われています。
※ クリーンエネルギーとは、太陽光や風力、水力など、使用する際に二酸化炭素といった地球に害のある物質を出さないエネルギーのこと
太陽光発電や地熱発電について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
【我が家が発電所に!?】あまり知られていない太陽光発電のメリットとデメリットをわかりやすく解説
地熱発電の仕組みとは?メリット・デメリットや日本の取り組みも解説
各種建物や機器などの省エネルギー化
建物や機器を省エネルギーなものに変えていくことも、海洋酸性化の対策につながります。
生活に必要なエネルギーを、すべてクリーンエネルギーに代替することは、コストや安定供給といった面からまだ難しいのが現状です。そのため、建物や機器に省エネルギー技術を導入し、二酸化炭素の排出量をできる限り少なくするといった方向性の取り組みも行われています。
例えば、日本の住宅ではエネルギー効率の良いLED照明の導入を促進したり、HEMS(ヘムス)の普及を目指したりしています。HEMSとは、家電製品や給湯器などを管理・自動制御するシステムのことです。
HEMSを導入することで、家の外からでも家電のオンオフを操作できるほか、機器ごとのエネルギー消費量が確認できます。上手に活用することで、エネルギーの無駄使いをより効率的に防げるでしょう。
酸性化から海を守るために私たちにできること

ここまで、世界や日本が行っている取り組みについて紹介しましたが、海洋酸性化を防止する取り組みは個人でも行えます。
ここでは、海洋酸性化を防ぐため、私たちにできることを紹介します。
5Rの徹底やフードロス対策でごみを削減
ごみの運搬・焼却を行う際には二酸化炭素が発生するため、ごみを減らすことは海洋酸性化の防止につながります。
ごみを減らすことにつながる「5R」を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
- Refuse(リフューズ・断る):ごみになるものは不要であれば断る
- Reduce(リデュース・減らす):詰め替え品など、ごみが発生しにくいものを選ぶ
- Reuse(リユース・再利用):マイボトル・マイ箸などを用意し、繰り返し使う
- Repair(リペア・修理):壊れても、修理して使う
- Recycle(リサイクル・再生利用):ペットボトルなどのごみはきちんと分別して回収してもらい資源の有効活用につなげる
また、食品も食べ切れる量をつくる、必要な分だけ買うなどしてフードロス対策をするのも効果的です。
省エネ生活を心掛ける
日々の生活のなかで使う、電気やガソリンといったエネルギーを効率的に使い、無駄を削減することも、海洋酸性化の原因である二酸化炭素の削減に役立ちます。
例えば、次のような行動を意識してみると良いでしょう。
- 電灯をLEDに変える
- 冷暖房の設定温度を見直す
- なるべく公共交通・自転車・徒歩で移動する
- 宅配物は一度で受け取る
公共交通機関を積極的に利用したり、宅配便の再配達を避けたりすることは、車から出る二酸化炭素の削減につながります。
より多くの省エネ方法を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
エコ活動とはどんな活動?今日から始められるエコ活動17選をご紹介!
緑化や森林整備ボランティアに参加する
植物は光合成を行う際に大気中の二酸化炭素を吸収してくれるため、街の緑化や森林整備のボランティアに参加することも、海洋酸性化の防止につながります。
例えば、ボランティアでは次のような活動を行っています。
- 公園にある花壇の花植え・管理
- 樹木の移植や植樹
- 樹木の簡単なせん定 など
さまざまな地域や団体がボランティアを募集しているため、自分の住む地域のWebサイトなどを見て、緑化や森林整備の募集がないかチェックしてみましょう。
公益財団法人イオン1%クラブ「イオン チアーズクラブ」について

公益財団法人イオン1%クラブが運営する「イオン チアーズクラブ」は、全国の小学校1年生から中学校3年生までを対象とした活動団体です。
イオン チアーズクラブでは、環境や社会に対して興味・関心を持ち、考える力を育むため、さまざまな体験学習を実施しています。
体験学習では子どもたちがメンバーで協力し合い、一丸となって活動に取り組むため、集団行動における社会的なルールやマナーも学べます。
「環境問題に取り組むことの大切さを子どもに体験してもらいたい」と考えている保護者の方は、ぜひお子さまのイオン チアーズクラブへの参加を検討してみてはいかがでしょうか。
「イオン チアーズクラブ」で開催された活動
ここでは、イオン チアーズクラブでこれまでに実施してきた活動内容の一部をご紹介します。
七ヶ浜菖蒲田海岸の松林の間伐

イオン富谷 チアーズクラブのメンバーが、七ヶ浜菖蒲田浜(しちがはましょうぶたはま)周辺で間伐(かんばつ)※ 体験を行いました。
間伐に取り組んだ松林は、5年前に自分たちで植樹した防災林です。なかには植樹当時のことを覚えているメンバーもいました。
メンバーたちは地域の高齢化により手入れが難しくなっている現状も教えてもらい、植えるだけではなく、継続的に手入れをしていくことの大切さも学びました。
※ 樹木の一部を伐採し、森林の密度を調整すること
白浜の豊かな海と生き物について学ぼう
イオン チアーズクラブのメンバーが、「白浜の豊かな海と生き物について学ぼう」イベントに参加しました。これは京都大学フィールド科学教育研究センターと環境財団による「新しい里山・里海共創プロジェクト」の一環として実施されたものです。
講義室で海の生態系について学んだ後、実験所の設備を見学しました。
さらに、白浜水族館での展示観覧に加え、バックヤードツアーも体験しました。普段はなかなか見られない水族館の裏側に、メンバーは興味津々の様子でした。
このほかにも、イオン チアーズクラブではさまざまな活動を行っています。
イオン チアーズクラブの活動をさらに詳しく知りたい方は以下のURLからご覧ください。
子どもたちが主役!環境・社会をテーマにした体験学習で楽しく学ぼう!
まとめ
海洋酸性化は、海が二酸化炭素を吸収するのに伴ない、pHが低下する現象のことです。現象が進行すると、サンゴや貝類などに悪影響を与えます。
美しい海やそこに住む生き物たちを守りたいと思ったのなら、海洋酸性化の原因となる二酸化炭素の排出量を抑えることが重要です。
二酸化炭素の排出量を抑える方法には、ごみの削減や節電など、個人で取り組めるものも多いのが特徴です。自分にできることを考え、無理のない範囲で一つずつ取り組んでみてはいかがでしょうか。
公益財団法人イオン1%クラブについて

公益財団法人イオン1%クラブは、1990年に設立され、「お客さまからいただいた利益を社会のために役立てる」という想いのもと、「子どもたちの健全な育成」「諸外国との友好親善」「地域の発展への貢献」「災害復興支援」を主な事業領域として、環境・社会貢献活動に取り組んでいます。
「子どもたちの健全な育成」事業の一つである「イオン チアーズクラブ」では、小学生を中心に、環境や社会貢献活動に興味・関心を持ち、考える力を育む場として体験学習を全国で行っています。
また、中学生が環境に関する社会問題をテーマに、自ら考え、書く力を養う「中学生作文コンクール」や、高校生が日ごろ取り組んでいる環境保全や社会貢献に関する活動を発表し、表現力や発信力を高めることを目的とした「イオン エコワングランプリ」など、さまざまな活動を実施していますので、ぜひ下のURLから詳細をご覧ください。