
2026.07.07
SDGs9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とは?目標として設けられた理由や私たちにできることを知ろう
SDGs9「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、すべての人が取り残されない持続可能な社会を実現するために必要な目標です。
先進国と開発途上国の間には、教育や雇用の機会、衛生環境を支えるインフラなどさまざまな分野において大きな差があります。SDGsが掲げている「すべての人が取り残されない」を実現するためには、十分に発達した産業や技術が必要です。
本コラムでは、SDGs9が具体的にどのような目標であるのか、また達成するための身近な取り組みや個人でできることについてわかりやすく解説します。
目次
SDGs9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とは?概要を解説

SDGs(持続可能な開発目標)とは、世界中がかかえている課題を整理し、2030年までに解決しようと立てられた目標のことです。SDGs9「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、こうした目標の一つであり、産業と技術革新に関わる課題の解決をテーマとしています。
SDGsについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
SDGsで私たちにできることは?17の目標から小・中・高・大学生向けに解説
SDGs9とは「すべての人が取り残されない持続可能な産業の基盤づくりを目指す目標」
SDGs9は、「すべての人が取り残されない持続可能な産業の基盤づくり」を目指すための目標です。
SDGs9における「産業と技術革新の基盤」とは、主に水道や電気、ガスなどインフラのことを指します。
世界には、インフラが十分に整備されていない国や地域があります。このような国や地域では、一刻も早い産業や技術の発展が望まれますが、インフラが不十分では発展は難しいのが実情です。
例えば、日々の生活に精一杯で知識や技術を学ぶ時間が取れなかったり、電力の安定供給がないために新しい技術の導入が難しかったりするためです。
また、インフラはただ使えるだけでなく、強く、柔軟性に長けたものでなければいけません。
自然災害をはじめ、インフラに危害を及ぼす要因をすべて取り除くことはできない以上、どのようなときでも社会機能が停滞しないような環境づくりをする必要があるのです。
SDGs9が掲げる8つのターゲット
SDGs9「産業と技術革新の基盤をつくろう」では、8つのターゲットが掲げられています。
「産業と技術革新の基盤をつくろう」における8つのターゲット
| No | 目標 |
|---|---|
| 1 | すべての人のために、安くて公平に使えることを重視した経済発展と福祉を進めていけるように、質が高く、信頼でき、持続可能な、災害などにも強いインフラをつくる。それには、地域のインフラや国を越えたインフラも含む。 ※インフラ:道やダム、電気をつくる発電所など、私たちの毎日の生活を支えている基本的なものや、病院や学校や公園など、安心・安全に暮らしていくためになくてはならない施設(しせつ)のこと |
| 2 | だれも取り残されない持続可能な産業化※1をすすめて、2030年までに、それぞれの国の状況に応じて、雇用と国内総生産(GDP)※2に占める農業や漁業など以外の割合を大きく増やす。もっとも開発が遅れている国については、その割合を2倍にする。 ※1 産業化:技術がすすんで、農産物を加工したり、工場で物をつくったりできるようになること。 ※2 国内総生産(GDP):その国で1年間に新しく生み出されたモノやサービスの合計金額 |
| 3 | 特に開発途上国の規模の小さな工場や会社が、安く資金を借りるなどの金融サービスをより利用できるようにし、モノやサービスの流れやその市場に、より広く組み込まれるようにする。 |
| 4 | 2030年までに、資源をよりむだなく使えるようにし、環境にやさしい技術や生産の方法をより多く取り入れて、インフラや産業を持続可能なものにする。すべての国が、それぞれの能力に応じて、これに取り組む。 |
| 5 | 2030年までに、イノベーションをすすめたり、研究や開発の仕事をしている人の100万人あたりの人数を大きくふやしたり、政府と民間(会社など)による研究や開発への支出をふやしたりして、開発途上国をはじめとするすべての国で、さまざまな産業での科学研究をすすめ、技術能力をのばす。 ※イノベーション:今までなかった新しい技術やアイディアをうみだすことや、今あるものを今までになかった方法で結び付けること |
| a | アフリカの国ぐに、もっとも開発が遅れている国ぐに、内陸の開発途上国、開発途上の小さな島国に対し、資金・テクノロジー・技術面での支援を強めて、開発途上国における、持続可能で、災害にも強いしっかりしたインフラの開発をすすめる。 |
| b | さまざまな産業が発展したり、価値のある商品を創り出したりするための政策を整えることなどによって、開発途上国の国内の技術開発や研究、イノベーションを支援する。 |
| c | 特に、最も開発が遅れている国で、情報通信技術がより広く利用できるようにし、2020年までに安い値段でだれもがインターネットを使えるようにする。 |
このうち、数字で表された5つのターゲットは、SDGs9を達成するための小目標です。
アルファベットで表された3つのターゲットはSDGs9を達成するために必要不可欠だと考えられている具体的な方法です。
なぜこれらのターゲットが定められているのか、どのようにして産業と技術革新の基盤をつくることにつながるのかについては、次の見出しで詳しく解説します。
SDGs9が目標となった背景と現状の課題

産業と技術革新の基盤が十分でない場合、どのような問題が起こるのでしょうか。
ここでは、SDGs9およびそのターゲットについてより具体的に知るために、「産業と技術革新の基盤をつくろう」が目標として定められた背景と課題について解説します。
水道や電気などインフラ整備が不十分な国や地域がある
2015年時点で水道が整備されていない国は、開発途上国で51%、後発開発途上国※に至っては88%もあるといいます(出典元:JICA)。また、国際エネルギー機関(IEA)によると、2023年の時点で7億7,500万人が電気を利用できていないのだそうです。
水道が整備されていないと、水汲みに多くの時間が割かれてしまう可能性があります。身体的な負担があるのはもちろん、学習時間を十分に確保できない子どもも多くいるでしょう。
電気がない地域では、冷蔵庫が使えないことで食料の保存が難しかったり、部屋を暖めるために石炭や薪などを燃やすことで空気が汚染されたりなど、健康にも大きな影響が出ています。
そのほかでは、インターネットも、2024年時点で約26億人もの人々が利用できていません。
インターネットが利用できない環境では、IT事業が発展しないほか、先進国との情報格差が生まれます。IT化が進む現代においては、産業と技術革新における国際的な格差をさらに深刻化させる原因になるでしょう。
※ 後発開発途上国とは、開発途上国のなかでも特に開発が遅れているとされる国々のこと
インフラに起因する経済発展や健康上の問題に対応しているSDGs9のターゲット
【1】すべての人のために、安くて公平に使えることを重視した経済発展と福祉を進めていけるように、質が高く、信頼でき、持続可能な、災害などにも強いインフラをつくる。それには、地域のインフラや国を越えたインフラも含む。
※インフラ:道やダム、電気をつくる発電所など、私たちの毎日の生活を支えている基本的なものや、病院や学校や公園など、安心・安全に暮らしていくためになくてはならない施設(しせつ)のこと
引用元:ユニセフ
【a】アフリカの国ぐに、もっとも開発が遅れている国ぐに、内陸の開発途上国、開発途上の小さな島国に対し、資金・テクノロジー・技術面での支援を強めて、開発途上国における、持続可能で、災害にも強いしっかりしたインフラの開発をすすめる。
引用元:ユニセフ
【c】特に、最も開発が遅れている国で、情報通信技術がより広く利用できるようにし、2020年までに安い値段でだれもがインターネットを使えるようにする。
引用元:ユニセフ
SDGs9のターゲット1・a・cは、開発途上国も含むすべての人が安全かつ経済発展が可能な基盤のもとで暮らせることを目指し、設けられています。
雇用や生産の割合が一次産業に偏っている国や地域がある
開発途上国では、雇用や生産の割合が一次産業に偏っている傾向が見られます。産業や技術革新の基盤が整っていないため、工業化やIT化などが進みづらいためです。
雇用が一次産業に偏っている国では、人々が貧困に陥りやすい傾向にあります。
例えば、農業の場合、収穫期にしか収入が発生しないためです。さらには、天気により生産量が左右されることもあり、生計はどうしても不安定になります。
貧困から抜け出すため都市部や海外へと移住し、二次・三次産業に転職するといった手段もあります。しかし、開発途上国ゆえの情報格差や教育格差により思うように行動できない人々も多いのが実情です。
開発途上国の雇用に関連する問題に対応しているSDGs9のターゲット
【2】だれも取り残されない持続可能な産業化をすすめて、2030年までに、それぞれの国の状況に応じて、雇用と国内総生産(GDP)に占める農業や漁業など以外の割合を大きく増やす。もっとも開発が遅れている国については、その割合を2倍にする。
引用元:ユニセフ
【b】さまざまな産業が発展したり、価値のある商品を創り出したりするための政策を整えることなどによって、開発途上国の国内の技術開発や研究、イノベーションを支援する。
引用元:ユニセフ
SDGs9のターゲット2とbは、二次産業、三次産業の発展を促進するうえで特に重要なものとなっています。
金融サービスを十分に利用できない国や地域がある
預金やローンなどといった金融サービスを十分に利用できない国や地域があります。
例えば、銀行口座を所有している成人の割合は、先進国では94%なのに対し、開発途上国では54%です。銀行口座を持てない理由には、口座開設に伴う費用が出せないケースのほか、銀行までのアクセスが悪いといったインフラ面での問題もあります。
銀行口座を保有していないと、預金もできなければ、積み立てやローンといった未来への投資もできません。結果、洪水や地震といった自然災害やそれに伴う農作物の不作、価格の変動、病気による収入の低下、失業など、不測の事態に備えることも難しいでしょう。
金融サービスに関連した問題に対応しているSDGs9のターゲット
【3】特に開発途上国の規模の小さな工場や会社が、安く資金を借りるなどの金融サービスをより利用できるようにし、モノやサービスの流れやその市場に、より広く組み込まれるようにする。
引用元:ユニセフ
SDGs9のターゲット3は、特に世界中の誰もが十分な金融サービスを利用できるようにすることを目的としたものとなっています。
持続可能性の高い社会をつくるための技術革新が求められている
持続可能性の高い社会をつくるための技術革新が、現代は求められています。
持続可能な社会とは、「環境保全が行き届き、遠い未来に至るまで人々が幸せな生活を送れる社会」のことです。
これまで人々は産業発展に伴ない、環境に大きな負荷をかけてきました。その結果、世界中で平均気温が上昇したり、大雨や干ばつが増加したりなど、著しい気候変動をはじめとした環境問題が起きています。
産業発展は人々の生活を豊かにするうえで欠かせないものであり、失くすことはできません。だからこそ、例えば二酸化炭素の排出量が少ない発電方法を開発するなど、環境負荷を減らすための技術革新が必要とされているのです。
持続可能な社会をつくるための技術革新に関連しているSDGs9のターゲット
【4】2030年までに、資源をよりむだなく使えるようにし、環境にやさしい技術や生産の方法をより多く取り入れて、インフラや産業を持続可能なものにする。すべての国が、それぞれの能力に応じて、これに取り組む。
引用元:ユニセフ
【5】2030年までに、イノベーションをすすめたり、研究や開発の仕事をしている人の100万人あたりの人数を大きくふやしたり、政府と民間(会社など)による研究や開発への支出をふやしたりして、開発途上国をはじめとするすべての国で、さまざまな産業での科学研究をすすめ、技術能力をのばす。
引用元:ユニセフ
【b】さまざまな産業が発展したり、価値のある商品を創り出したりするための政策を整えることなどによって、開発途上国の国内の技術開発や研究、イノベーションを支援する。
引用元:ユニセフ
SDGsのターゲット4・5・bは、各国が持続可能な社会を前提とした技術革新を起こすことを目的としたものとなっています。
開発途上国を筆頭に、技術革新を起こそうにも技術や資金が不足しているケースにおいて、適切な支援を受けられるようにするための内容も含まれています。
日本や世界におけるSDGs9に関連する取り組み

SDGs9「産業と技術革新の基盤をつくろう」という目標を達成するため、世界中の人々が日々協力し合って取り組みを実施しています。
ここでは、日本や世界におけるSDGs9の取り組みの一部を紹介しましょう。
まず日本では、内閣府がSDGs達成のための科学・技術イノベーション政策を推し進めています。イノベーションのなかでも科学技術に関するイノベーションは「STI(Science, Technology, Innovation)」と呼ばれ、持続可能性の高い社会を実現するために重要な要素です。
2021年に閣議決定した「第6期科学技術・イノベーション基本計画」では、持続可能かつ柔軟で強い社会づくりのために、デジタル化の推進や研究の強化、教育・人材の育成などに力を入れていくことが宣言されています。
世界に目を向けると、世界銀行グループが開発途上国の経済状況に基づいて、融資を行っています。世界銀行グループは、開発途上国に対して資金や技術などを支援する国際機関であり、日本やアメリカなど100か国以上の国が加盟国です。
世界銀行グループが融資したプロジェクトは1,500件以上にのぼり、総額で2,500億ドル(当時)に及んでいます。
SDGs9を達成するために私たちにできること

SDGs9が世界の共通目標として設けられた背景や課題を知ったことで、「個人でもできることがないだろうか」と考えた方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは、「産業と技術革新の基盤をつくろう」という目標を達成するためにできる身近な取り組みを解説します。
日本や世界のインフラおよび生活の事情を調べてみる
日本や世界のインフラおよび生活の事情などを調べ、比較することから始めてみてはいかがでしょうか。まずは、自分たちの身の回りにあるインフラが当たり前のものではないことを知るなど、興味を持つことが大切です。
日本では、資源エネルギー庁が世界の電力事情についてのデータを、経済産業省が世界の水道事情などのデータを公開しています。
また、インターネットで調べれば、現地の暮らしぶりを写真や動画などで確認できます。
開発途上国の支援につながる募金をする
開発途上国の支援につながる募金をすることは、私たちにできることの一つです。
開発途上国の支援を目的とした募金活動を行っている団体はさまざまあります。まずは、インターネットで検索をかけて団体の活動理念や募金の使い道などに目を通してみて、興味関心が引かれるところを探すのがおすすめです。
SDGs9の達成につながるものとしては、例えば、水道をはじめとしたインフラ整備のための募金や、教育を促進するための募金(学校の建設、鉛筆やノートの支給など)が挙げられます。
こうしたプロジェクトに参加すれば、開発途上国への具体的な支援が個人でも可能です。
公益財団法人イオン1%クラブ「イオン チアーズクラブ」について

公益財団法人イオン1%クラブが運営する「イオン チアーズクラブ」は、全国の小学校1年生から中学校3年生までを対象とした活動団体です。
イオン チアーズクラブでは、環境や社会に対して興味・関心を持ち、考える力を育むため、さまざまな体験学習を実施しています。
体験学習では子どもたちがメンバーで協力し合い、一丸となって活動に取り組むため、集団行動における社会的なルールやマナーも学べます。
「子どもには社会問題について広く学んでほしい」と考えている保護者の方は、ぜひお子さまのイオン チアーズクラブへの参加を検討してみてはいかがでしょうか。
イオン チアーズクラブの活動をさらに詳しく知りたい方は以下のURLからご覧ください。
子どもたちが主役!環境・社会をテーマにした体験学習で楽しく学ぼう!
公益財団法人イオン1%クラブ「イオン ユニセフ セーフウォーターキャンペーン」について

公益財団法人イオン1%クラブでは、カンボジア等の子どもたちに安全な水を供給するため、全国から寄せられた募金と当財団からの拠出金を、公益財団法人日本ユニセフ協会を通じて寄付しています。
遠方への水汲みに時間をとられ、学校の授業に参加できない子どもたちや、健康を害する恐れのある物質を含む地下水を生活用水として使う子どもたちを給水施設の設置等により、教育・健康の両面でサポートしています。
安全な水と衛生環境は、子どもたちの命を守り、健やかな成長を支える基盤です。
公益財団法人イオン1%クラブのイオン ユニセフ セーフウォーターキャンペーンについて、さらに詳しく知りたい方は、下記のURLからご覧ください。
イオン ユニセフ セーフウォーターキャンペーンについて詳しく知りたい方はこちら
まとめ
SDGs9「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、SDGsで掲げられた「誰一人取り残されない」というスローガンを実現するために必要な目標の一つです。
世界には水道や電力、交通網など人々にとって必要なインフラが十分になく、その影響で産業発展や技術革新が滞っている国があります。
まずは、このような世界の状況を知ることが大切です。知ったうえで、自分が暮らす国に対して、また危機的な状況にある他国に対して、自分がいま何をするべきかを考えてみてはいかがでしょうか。
公益財団法人イオン1%クラブについて

公益財団法人イオン1%クラブは、1990年に設立され、「お客さまからいただいた利益を社会のために役立てる」という想いのもと、「子どもたちの健全な育成」「諸外国との友好親善」「地域の発展への貢献」「災害復興支援」を主な事業領域として、環境・社会貢献活動に取り組んでいます。
公益財団法人イオン1%クラブでは、小学生を中心とし、体験学習を通して自然や環境に向き合える「イオン チアーズクラブ」も運営しています。
他にも、中学生が環境に関する社会問題をテーマに、自ら考え、書く力を養う「中学生作文コンクール」や、高校生が日ごろ取り組んでいる環境保全に関する活動を発表し、表現力や発信力を高めることを目的とした「イオン エコワングランプリ」などさまざまな活動を実施しています。
小学生から高校生まで幅広い年齢のお子さんがさまざまな体験学習を通してSDGsに触れられる活動を多数実施していますので、ぜひ下のURLからご覧ください。