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「地域の水を守る」
十勝産資材を利用した人工湿地の開発

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「地域の水を守る」十勝産資材を利用した人工湿地の開発

北海道帯広農業高等学校

活動内容について

水質浄化班の活動内容はこちらよりご覧ください。

目標・今後の計画

十勝では、農業を原因とする水質汚染が問題となっており、各農家において汚染物質の流出を抑制する必要性が高まっています。帯広農業高校水質浄化班では、水質浄化の方法として人工湿地に着目し、平成23年より実験を開始、平成24年に十勝初となる人工湿地を本校牛舎前に完成させました。
活動7年目を迎えた私たちの目標は、「地元資材を利用し、十勝の環境に適した人工湿地技術を開発する」、そして「水質モニタリング結果から浄化能力を検証し、システムを改善・向上させる」「導入事例が少ない十勝で人工湿地の普及を進める」の3点です。
現在、改良工事後の水質モニタリングを継続しており、実際の農家に導入可能な安定した技術としての確立を目指しています。また、学校の人工湿地における研究成果について、各種研究発表会での発表や情報発信を行っており、十勝に人工湿地技術を広める拠点となることを目指しています。今年度中に地元農家との意見交換会を実施し、実際の農家施設において、人工湿地の設計・施工を目指します。

活動内容

参加人数…2、3年生計14名
基礎学習…帯広畜産大学との連携による、地域の水環境学習と水質分析の基礎
ろ過材料選定実験…改良延長工事のろ過材料として、黒ボク土のろ過能力実験を実施
設計・施工…改良延長工事の設計と施工
施工後の水質モニタリング、研究会での発表
昨年度の人工湿地施工5年経過後の水質モニタリング結果から、今年度はリン酸態リンの除去率向上を目的とした改良延長工事を計画することとしました。計画にあたり、企業、大学の専門家の方に相談したところ、炭酸カルシウム、黒ボク土の利用について助言をいただきました。
そこで、新たなろ過材料の選定へ向けた予備実験として、リン酸態リンのろ過能力を確認することにしました。実験では、火山礫、黒ボク土、炭酸カルシウム粉末を用い、それらの混合割合を変えて化成肥料溶液のろ過を行いました。
結果、すべての材料においてリン酸態リンの低下が確認できました。特に、黒ボク土の低下率が最も高いことが分かりました。3つを混合した割合では、重量比で火山礫8:黒ボク土1:炭酸カルシウム1の割合のものが最も低下しました。
この結果から、改良延長工事では学校林内で採取した黒ボク土、上士幌産火山礫、白線用の炭酸カルシウムを混合したろ過材料を用いることとしました。
ろ過部の長さ、内径、勾配については最初の施工時と同じものとし、これまでの人工湿地の浄化槽と接続する形で延長工事を行いました。施工期間は6月12日から約2カ月間、放課後と授業の実習時間に実施しました。私たちが主体となって、測量・丁張り、コルゲート管の加工、ろ過材料の充てんおよび現地土の土工を行いました。延長後はこれまでの浄化槽を浄化槽1、新たな浄化槽を浄化槽2としました。
完成後の8月2日からのパックテスト結果は次のとおりです。低下率が向上した項目では、アンモニア態窒素が82%から88%と6ポイント向上、リン酸態リンについては、51%から86%と35ポイント向上しています。COD(有機物の指標)の値も低下していますが、分析時の気温との関係もあり、分析の継続が必要です。
水質分析については、より正確な分析結果を得るため、帯広畜産大学・宗岡寿美先生より継続してご支援をいただいています。今後、大学での分析結果と併せて、改良延長工事の結果を評価していきます。
こうした成果は、第12回人工湿地ワークショップ2017in上川にて発表し、全国の大学、企業の研究者から助言・講評をいただいています。

成果・実績

・地域に適した人工湿地技術の開発
帯広農業高校独自の設計、施工方法を開発し、水質浄化を継続しています。
・水質浄化能力の検証と改善
帯広畜産大学の協力を受け、より信頼性の高い分析結果を得ています。検証結果をもとに、今年度の改良延長工事を実施することができました。
・地域農家への普及
報道等でも取り上げられる機会が増え、認知度は高まってきています。今後、人工湿地を導入した農家との懇談会を企画し、農家の求める技術や、協力体制を築きたいです。
平成29年度農業農村工学会学会賞優秀技術レポート賞受賞「農業高校の生徒による人工湿地の施工と水質浄化の取組み」

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