イノシシとの共生 ~学校全体での取組を目指して~
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愛知県立豊田東高等学校
活動内容について
獣害対策プロジェクトチームの活動内容はこちらよりご覧ください。
目標・今後の計画
本校は、ESD(持続可能な開発のための教育)を推進している。本校では、ESD の取組の一つとして、本校のある豊田市の中心部を流れる矢作川とその流域(特に中山間地)の生物多様性保全を考え、そのより良い在り方を探究し、目指すべき姿の実現に向け行動することを目標としている。今回、理科や家庭科で豊田市の深刻な課題である獣害を取り上げ、その原因と対策を探ることにより、森林やそこに生息するイノシシ等の大型ほ乳類と人間の関わりの在り方を生物多様性保全の視点で考え、それを守るために自分たちで何が行動できるか模索し、実際の行動につなげたい。
平成 25 年度から本格的に実践を始めたが、理科、家庭科から他の教科や課外活動につなげ、学校全体の活動にしていきたい。
活動内容
現在は理科と家庭科「調理・栄養プラン」(総合学科における調理に関する授業を中心に選択した生徒のグループ)の授業中心で行われている。
1.理科「生物基礎」1年生全員
「生物基礎」の「生態系とその保全」の単元で展開し、事前・事後のアンケートを行い、成果を検証した。実践に当たっては、外部機関(愛知県農業総合試験場、愛知教育大)と連携して進めていった。
ア)課題をつかむ1時間
•獣害についての専門家である愛知県農業総合試験場主任専門員に三河地域における獣害の実態とその深刻さについて、映像などを用いたプレゼンテーションを聞く。
•獣害の原因について理解する。
イ)課題を深める4時間
•グループで獣害について多面的に考える(害獣の視点からも考える)。
•グループで獣害についてどう対処するか考える。さらに、自分として何が行動できるか考える。
•大学教授から生物多様性の保全についての話を聞き、最終的な意見形成の参考にする。
ウ)課題について主体的に解決する1時間
•グループで考えた「獣害対策と自分ができること」の発表会を行い、最終的に自分の意見をまとめる。発表に際しては、愛知県農業総合試験場主任専門員から講評をいただくようにした。
2.2年生SPP(サイエンス・パートナーシップ・プログラム)理科特別授業2年生希望者
1年生で学んだ獣害について、実際にフィールドに出て、その実態を体験した。
•愛知県農業総合試験場において、イノシシを捕らえる効果的なわなについて実物を見て学んだ。
•害獣からおいしい獣肉を取るための工夫を学び、実際に獣肉を食べ、その効果を確認した。•実際にイノシシの被害に遭う農家を訪ね、害獣から農作物を守る大変さを現場で聞いて、獣害の深刻さを確認した。
•害獣から田畑を守るには緩衝帯といわれる草木のないゾーンを作ることが大切といわれている。実際に草刈りをして、緩衝帯作りを体験した。
3.家庭科調理・栄養プラン「イノシシ肉を使った調理レシピ」2、3年生選択者
豊田市農政課からイノシシ肉や地元の食材を使った調理品の開発を依頼され、「調理・栄養プラン」の生徒が課題として考えた。
•レシピを提出し、優秀作品を、道の駅「どんぐりの里」のメニューに提供したり、高校生F級グルメグランプリに出品したりした。
4.家庭科調理・栄養プラン「市内食肉加工場設立に向けての担当者との打ち合わせ」3年生選択者
豊田市には、捕獲した害獣の食肉加工場が現在なく、害獣の肉の有効利用が図られていない。平成27年度中に、その食肉加工場が豊田市に完成する予定である。
•食肉加工場の担当者と事前打ち合わせし、イノシシ肉に抵抗感がある人でも、見た目よく、おいしくたべられる調理品を調理・栄養プランの生徒で開発していくことを決めた。
成果・実績
「生物基礎」の授業では、ほとんどの生徒が前向きに授業に取り組み、獣害について自分の意見を持つことができた。さらに、9 割近い生徒が、獣害の解決に向け、何か行動したいという気持ちをもつことができた。また、「理科特別授業」の参加生徒は、獣害の解決に向けてさらに強い決意をもつことができた。生徒は最終的に、「まずは、森林整備をしっかりする、害獣が畑に近寄らない工夫をすること。そして、害獣の頭数が増えすぎ、生物多様性の保全のため減らさなければならない時は、田畑にやってくるグループを効果的に捕獲し、獣肉を資源として活用すること」という獣害対策を考えた。
調理・栄養プランの「イノシシ肉を使った調理レシピ」では、25 年度開発した味付けしたイノシシ肉を地元産米粉でできた饅頭状のもので包んで蒸した「いのっちもちもち」という作品が、道の駅「どんぐりの里」のメニューとなり、とても好評であった。全員の生徒がレシピを考え、獣肉の有効活用を目指して努力することができた。
今後は、獣肉活用の重要性を市民に対して啓発することや獣肉の流通、獣害対策の普及を学校全体で取り組んでいく予定である。