カラーLEDによる
未来型エコ養鶏への挑戦
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青森県立三本木農業高等学校
活動内容について
生産環境研究室、農業問題研究室の活動内容はこちらよりご覧ください。
目標・展望
研究テーマ:「僕らが照らす未来型養鶏〜青・赤色 LED電球によるエコ養鶏に関する研究〜」
●活動のきっかけ(平成 20 年開始)
全てのきっかけは、鶏舎が夏場高温になり鶏が死ぬことがあるという問題を解決するために壁面緑化(アサガオ使用)による温度上昇抑制を試みたことであった。その結果温度上昇は抑えられたが卵の産卵率が落ちるという新たな課題に生徒たちはぶつかることとなる。平成20 年のことである。
●鶏は光で卵を産む
農業機械科の生徒で始まったこの研究であるので、履修科目で鶏について学習することはない。そこで、性質を自分たちで調べたところ鶏は光を感じることにより性腺刺激ホルモンの分泌が促進され卵を産むことが分かった。つまりは、光がないと卵をあまり産まないので壁面緑化において鶏舎内が暗くなった結果、産卵率が落ちたことが分かった。
●地元養鶏業者との連携(調査)
実際に地元養鶏業者を訪ね調査したところ、青森県の一戸当たりの平均飼養羽数は 16 万 4 千羽と全国 1 位であり、とても大きな鶏舎をいくつも持っていることを知る。さらに驚いたのがウインドレス鶏舎といわれ窓が一つもなく、白熱灯による人工光ですべてを賄っており年間電気料金が 300 万円(16 万羽飼養)にも及ぶことを知る。一業者でこれほどの消費電気量であれば全国では莫大なエネルギー消費となっていることが容易に計算できた。
●白熱灯国内生産終了への動き
しかも、経済産業省「白熱電球中止計画」に関連して白熱灯の国内生産を終了する企業が出てきており、白熱灯は将来的に無くなっていく方向に進んでいることも知った。
●研究の目的
そこで「エコで生産性を落とさない白熱灯に替わる新しい照明方法を開発する」という目的のもと研究を開始した。
活動内容
(目標に向けた生徒の活動状況)
●白色 LED 電球に着目
さっそく生徒たちは白色 LED 電球に着目。よく電気店で売られている白色 LED 電球を使えば十数分の1まで消費電気量を減らすことができると考えた。
●白色 LED 電球と白熱灯での産卵率の比較実験
無照明区、白熱灯区、白色 LED 区で産卵率の比較実験を行った。
●白色 LED 電球では産卵率が低い
結果として白熱灯に比べ白色 LED 電球の産卵率は73.0%と低いものとなった。また生徒たちの前に大きな壁が現れる。
●防犯灯(青色 LED)による犯罪抑止効果
話し合いの中で、班員の一人が街灯に青色 LED 電球を使用したところ、犯罪率が低下したというニュースを見たといってきた。「光色が人間に影響するのなら、光色が産卵に影響してもおかしくないのでは?」という仮説をたてた。
●様々な色の鶏舎用 LED 電球について東京の企業との連携(共同開発)
その時点では、白以外の鶏舎用 LED 電球(薬剤散布に耐えうる防水の製品)は存在していなかったので、飛び込みで電話をし、自分たちの研究に賛同していただいた企業に製品を作っていただいた。
●青・緑・赤・白色 LED 電球と白熱灯での比較実験
青・緑・赤色の鶏舎用 LED 電球を制作してもらい、無照明区、青・緑・赤・白色 LED 区、白熱灯区の 6 区画で産卵率の比較実験を行った。なお、すべては生徒自身がローテーションを組み休日も出校し産卵された卵の数を調査するという地道な実験は 177 日間にも及んだ。
●青・赤色 LED 電球において高い産卵率
青色 LED92.1%、赤色 LED90.9%と高い産卵率であった。80%を超えると採算が合うようになるといわれている産卵率で、90%を超える値は高いと言える。
●(参加人数)約5年間において50名ほどの人数が携わっている。現在は 4代目と 5代目のチームが活動中である。
●(大学との連携)北里大学獣医畜産学部から様々なアドバイスをいただき、大学の研究レベルからみた改善などを生徒自身が工夫を凝らしながら活動している。
成果・実績
●「赤・青色 LED 電球による鶏卵生産」という新しいエコで高生産性の照明方法を提案できた。
●青・赤色 LED 電球はエコで、さらに経費削減につながる
仮に全国の鶏卵生産で青・赤色 LED 電球が使われたなら、一般家庭、3 万 6 千世帯の年間使用電力分を削減したこととなり、CO2 に換算すると 7 万 4 千トン削減したことになる。私達の研究は消費電力 94%削減という結果からみても、環境問題解決に大きく貢献するものと言える。
●研究的にみても高い独自性
光色(波長)による生物代謝への影響は、植物においておおく研究されているが、本研究のように動物分野ではまだ少数である。また、動物の中でも光に大きく影響される鶏に着目した点は、高校生の柔軟な発想が導き出したものといえよう。
●学会高校生ポスター発表部門への参加
日本鳥学会、日本動物学会、日本土壌肥料学会、日本植物学会、中部大学科学フェアの高校生発表部門に参加し、多くの研究者の方と意見交換をし、優秀賞を受賞している。