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元気あふれる故郷再生活動 ~とりもどせ里山の原風景・伝統文化~

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元気あふれる故郷再生活動~とりもどせ里山の原風景・伝統文化~

栃木県立栃木農業高等学校

活動内容について

とちぎ水土里づくりプロジェクト班の活動内容はこちらよりご覧ください。

目標・展望

本校周辺の山麓一帯では 400 年以上も前から麻の栽培が行われてきました。麻は、伝統行事や神社など日本人の生活文化に欠かすことのできない工芸作物です。しかし、麻の集落は山間地農業の低迷とともに過疎化が進み、それに伴い集落では野生動物が農作物を食い荒らす被害が増え続け、農村生活まで脅かす問題となってきました。さらに、山村では、用水路の洪水対策、景観作物の復活など多くの問題を抱えています。そこで私たちは、平成 17 年度より、農地・水・環境の 3 つの保全活動を目標に、全国で唯一残された麻の郷とちぎの自然再生プロジェクトに取り組みたいと考えました。麻は、草丈 3 m以上に生長し、1ha 当たり 13 tの CO 2を吸収する環境作物です。まず、麻のその性質を環境改善に生かしたいと考えました。次に、麻の植物繊維の持つ抗菌作用や、保温性などの利点を活かした土壁や断熱材など環境に優しい麻のエコ建材作り、また、麻の強靱さを生かした野生動物対策を検討しました。さらに、農業高校生の視点から、麻の産地を、人・自然・動植物が共存できる里山里地を目指したいと考えました。

活動内容

私達は、毎年20数名の部員が援農ボランティア活動や山村の自然環境をとりもどす村おこし活動に取り組んでいます。主な活動は次の4点です。
1点目は、山村の河川保護活動です。山村の用水路はススキ、竹などの雑草でおおわれ、洪水や土砂崩れの原因となっています。そこで雑草を刈り取り、焼却を行わず「堆肥」として利活用する方法を農家と協働で考案しました。
2点目は、麻の機能性を活かしたエコ建築材の開発です。麻の繊維を取り除いた麻ガラやくず麻を住宅の断熱材、土壁建材として利用する方法を考えました。
3点目は、麻縄の素材とトウガラシなどを組み合わせた野生動物対策です。麻縄にトウガラシ、ハーブなど刺激性のある植物の抽出液をしみ込ませたロープを考案し、イノシシ、シカ、サルなどの被害対策として実用化試験に取り組んでいます。
4点目は、里山里地の原風景を取り戻す農村の景観作りです。このような麻の郷とちぎの元気あふれる里山作りを目指したとちぎ「水土里」(みどり)づくり活性化プランを立ち上げ、集落、JA、NPO法人などと地域ぐるみで活動しています。

成果・実績

1点目の山村の河川保護活動については、山あいの用水路でススキ、竹などを刈り取り、焼却を行わずに堆肥に利活用することができました。そして、誰でも手軽にできる雑草堆肥作りの作業工程を考案して冊子にまとめ、農家に配布しました。この堆肥は、化学資材を使わず米ぬかなどの自然の素材を使った熟成方法で行い、「里山の恵み有機堆肥」と名付け、山村の蕎麦、麻、こんにゃく畑の土作りに役立てられています。
2点目のエコ建築材の開発については、麻の殻をチップ化させ、住宅の断熱材、床下材として利用する新しい製品作りを考案しました。くず麻を使用した日本古来の土壁の復活です。くず麻を土壁素材に3%混合させて麻壁を復元し、日本住宅への活用、古民家再生事業への導入を始めました。現在、麻の抗菌作用や保温性などの利点を生かし、CO2を排出しない環境に優しいエコ素材として普及を目指しているところです。
3点目の野生動物対策については、麻縄にトウガラシ、ハーブ、ニンニクなど刺激臭のある植物の抽出液を染みこませたロープを考案し、イノシシ、シカ、サルなどの被害地域で実用試験を行いました。この方法は、電気柵に比べて取り外しも簡単で経費も安く、高齢者にも手軽に使うことができ好評でした。そして、この抽出液入り麻縄を「環境に優しい里山ロープ」と名付け、農林水産省のエコマークをいただきました。ベンチャー企業と共同で製品化し、現在、全国各地の野生鳥獣被害地域に試作品を送り、実用化を目指しています。
4点目は農村の景観作りについてです。秋の野山に咲き誇る彼岸花の球根には、アルカロイドなどの有毒物質が含まれ、野ねずみ、モグラ駆除ができると言われてきました。この性質を生かし、水田の畦畔に彼岸花の球根を5年間で3万株植え付けました。彼岸花の球根は里山で増え続け、秋の彼岸には、真っ赤に咲き誇る彼岸花、黄金色の稲穂、白い蕎麦の花のコントラストが里山の景観作物となり、「日本の原風景100選」に選出されて話題となっています。
さらに、現在、農村の高齢化、過疎化により農家の空き家が多くなり、大きな社会問題となっています。一方、多くの団塊世代が退職する中、第二の人生を自然豊かな農村で過ごしたい人や農業を始める人々も増加しています。私たちは、その両者を結ぶ空き家オーナー制度や故郷移住活動などに協力し、村おこし活性化の一助とすることができました。

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