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天然高分子によるアオコの
凝集と肥料化の検討

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天然高分子によるアオコの凝集と肥料化の検討

【大阪府】清風高等学校

活動内容について

生物部の活動内容はこちらよりご覧ください。

目標・今後の計画

清風高校生物部では、ニッポンバラタナゴという絶滅危惧種の魚の保護活動を行っている。しかし、池には毎年アオコが発生し、ニッポンバラタナゴの保護への悪影響が懸念される。アオコは強い毒性物質ミクロシスチン(microcystin、以下MC)をもつ。それにより悪臭や景観の悪化、さらにアオコを含む池の水を飲んだ動物の死亡事故も多数報告されている。そこで本研究は、世界中の富栄養化した湖沼で問題となっているアオコの凝集・除去を目的に、凝集剤の開発に挑んでいる。

活動内容

従来のミョウバンを用いた凝集剤は、アルミニウムイオンが含まれており、植物の根に悪影響を与えるため、新たに硫酸第二鉄を用いた凝集剤を開発した。硫酸第二鉄凝集剤は炭酸カルシウム(ホタテチョーク)を用いることで中和させることができた。しかし、硫酸第二鉄凝集剤には化学反応の際に熱が発生するので、より自然への負荷が少ない凝集剤の開発を始めた。そこで、目を付けたのがモリンガの種子である。モリンガ凝集剤の実用化に向けて、アオコの濁度とモリンガ凝集剤の最適な濃度比を明らかにした。そして、硫酸第二鉄凝集剤とモリンガ凝集剤をプランクトン・水質・細菌数の3項目で比較した。すると、硫酸第二鉄凝集剤は大幅な水質変動により生物への悪影響が懸念され、プランクトン数、細菌数を大幅に減少させることが分かった。一方、モリンガ凝集剤は水質の改善が見られた。アオコの発生の原因となる藍藻類の除去により発生を抑制できることが分かり、細菌数を減少させず、池の生物の餌となる珪藻類を増加できた。
硫酸第二鉄やモリンガ種子を用いた凝集剤は一定の効果を示したが、環境への悪影響や材料が高価だという問題などがある。そこで、安価で自然への負荷が少ない凝集剤としてミカンの皮に含まれる天然高分子を利用した凝集剤を開発した。また凝集後のアオコの有効活用方法として肥料化を試みた。ミカン凝集剤の有用性を確かめるために、以前開発した二つの凝集剤使用後の水とミカン凝集剤使用後の水をプランクトン・水質・細菌数の3項目で比較実験を行った。またアオコの肥料化に向けて、アオコの生成するMCの無毒化・アオコに含まれる栄養分の測定・ホウレンソウを用いた栽培実験を行った。

成果・実績

プランクトンの比較では、硫酸第二鉄凝集剤使用後はほとんどの個体を凝集・除去するため、生態系の破壊が懸念される。一方モリンガ凝集剤・ミカン凝集剤使用後はアオコの発生原因となる藍藻類をほとんど凝集・除去するが、生物のエサとなる珪藻類は凝集しないということが分かった。
水質の比較では、硫酸第二鉄凝集剤使用後は生物に害となる硫酸イオンが大幅に増えるため、生態系への悪影響が懸念される。モリンガ凝集剤使用後はリン酸イオンやアンモニウムイオンが急激に上昇するため、池の富栄養化が進行する可能性がある。しかし、ミカン凝集剤使用後はニッポンバラタナゴの保護池の水質に近いため、使用による悪影響はないと考えられる。
細菌数の比較では、硫酸第二鉄凝集剤使用後は99.9%除菌するため、生態系を壊してしまう可能性がある。しかしモリンガ凝集剤・ミカン凝集剤使用後は使用前と比べて、ほとんど個体数の変化が無かったため生態系への悪影響は小さいと考えられる。
アオコの肥料化に向けたMCの無毒化実験では、アオコをある割合で培養土に混ぜ、2週間天日干しすることでMCが検出されなくなると分かった。栄養分の測定により、アオコには少量の窒素化合物と大量のリン酸が含まれており、肥料として十分利用できると分かった。ホウレンソウを用いた栽培実験で培養土にアオコを混ぜて栽培すると、混ぜなかったものよりも葉の枚数・葉の乾燥総質量ともによく育ち、市販の肥料と同等の結果となった。
プランクトン数においてモリンガ凝集剤やミカン凝集剤がアオコ(藍藻類)のみを凝集した理由は、凝集成分が電荷の低い金属イオンで、負の電荷を帯びたアオコとしか反応できなかったためだと考えている。
水質では、ミカン凝集剤使用後の水は保護池の水質と最も近い値を取り生態系への悪影響は極めて小さいと考えられる。細菌数では、硫酸第二鉄凝集剤と違い、モリンガ凝集剤とミカン凝集剤使用後では使用前と比べてほとんど個体数の変動がないため、生態系への影響は小さいと考えられる。無毒化実験において、「天日干しのみ」と比べ「土壌に混ぜて天日干し」の方が早く無毒化する理由は、土壌中の細菌が作用しているためだと考えている。アオコ中の成分分析で、アオコがリン酸を多く含むという結果から、肥料としての有効活用が可能だと考えられる。
本研究は第7回高校生バイオサミットで優秀賞を、第9回坊っちゃん科学賞(研究論文コンテスト)で優良入賞を受賞した。

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