奇跡のミカン・プロジェクト
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【奈良県】天理高等学校
活動内容について
園芸部の活動内容はこちらよりご覧ください。
目標・今後の計画
奈良県天理市は、記録に残る日本最古の道「山の辺の道」の中心部に位置する。奈良盆地の東端に位置し、ミカンやカキなど栽培の適地で、里山と果樹園、棚田など日本の原風景をかたちづくっている。ところが近年、高齢化によって農家の後継者不足が深刻になり、果樹園、棚田などの耕作放棄地が増えている。このため、ハイカーで賑わう山の辺の道の景観に悪影響が及んでいる。
私たちはこの現状を解決するためのヒントを映画の「奇跡のリンゴ」から得て、「奇跡のミカン」プロジェクトを実践している。「奇跡のリンゴ」のストーリーは、無農薬栽培が難しいといわれているリンゴの無農薬栽培に成功する話である。除草などの作業を最小限にして、生物の多様性を保つことで害虫の天敵を増やし、土壌を豊かにすることで肥料の量も減らす方法だ。私たちは農作業を減らすことで、後継者不足を解消し、安全安心なミカンを生産できないかと考えた。ミカンは通常の栽培でも、リンゴに比べ農薬の量が少なくてすむので実現性も高いと思う。多少虫食いなどの発生が予想されるが、地元で販売することで安全安心をアピールし、付加価値が期待されている。
約1年前から、山の辺の道沿いのある果樹農家と協力し約20本のミカンで実験を始めた。無農薬栽培の面積を少しずつ広げ、無農薬栽培のモデル化にしていくことが目標だ。将来的には、栽培放棄地を減らし、山の辺の道沿いの景観を守りたいと考えている。また、安全安心な農産物生産にも貢献し、地産地消や地域作りにも貢献したい。
活動内容
1.本プロジェクトに直接関係する活動
4〜9月除草作業…果樹園全体ではなく、ミカンの木の周辺のみを月1回程度除草し(ツボ刈り)、雑草を残すことで土壌の乾燥を防ぎ、生物多様性を生かしながら、害虫の被害を防ぐ。この作業は地元NPO団体にも呼びかけ、参加者を募った。
7月天理大学「まほろばエコロジー講座」(一般市民向け)で本プロジェクトの概要について発表した。
8月摘果作業…不良な実を間引き、できるだけ良いミカンを収穫するための作業。この作業も地元NPO団体にも呼びかけ、参加者を募った。
10月クローバーの種まき…クローバーはマメ科植物で根が根粒菌と共生している。この根粒菌が空気中の窒素を肥料に変える働きを持っている。
11月〜12月収穫…街路樹の落葉を敷き詰め堆肥化する。
1月〜3月剪せんてい定など…地元NPO団体の主催で、講師を招き行った。
2.本プロジェクトに関連する活動
このプロジェクトは、園芸部が長年取り組んできた街路樹プロジェクトから生まれた。街路樹プロジェクトとは、次のような活動から成り立っている。
・街路樹の落葉清掃活動への参加
天理市には約1000本のイチョウ並木があり、見事な景観を形成している。しかし、落葉が大量に発生するため、問題になっている。そこで、地元のNPO団体が清掃活動等を行い、イチョウ並木の保全を行っている。私たちもこの活動に参加してきた。
・街路樹調査
先の活動と並行してイチョウ並木の健康度調査を10年前から実施し、その成果を数年ごとに発表している。
・街路樹の一番の問題点である落ち葉の堆肥化
イチョウ並木から出る大量の落葉の処理についても堆肥化実験などを行ってきた。
・各種発表会等で活動報告
2年に1度の天理市環境展や、各種コンクールへの応募
成果・実績
果樹園での実験は、慣行とほぼ同じ収量で、糖度14度、酸度pH3.8とバランスのとれた味であった。
7月には、天理大学の「まほろばエコロジー講座」で発表し、大学生や一般の方にも興味、関心を持っていただいた。また、園芸部員以外の高校生や大学生にも作業に参加していただいている。
このプロジェクトと連携している街路樹プロジェクトは、2008年ボランティア・スピリット・アワード(プルデンシャル生命保険主催)や2016年全国学芸サイエンスコンクール(旺文社主催)など各種のコンテストでも入選し、新聞報道されるなど高い評価を得ている。本活動は、この成果を実用的に発展していくものだと考えている。