小浜湾アマモマーメイドプロジェクト
TOP > 子どもたちの健全な育成 > イオン エコワングランプリ > 過去の受賞活動 >小浜湾アマモマーメイドプロジェクト
福井県立小浜水産高等学校
活動内容について
ダイビングクラブの活動内容はこちらよりご覧ください。
目標・展望
本校では平成 16 年よりアマモマーメイドプロジェクトに取り組んでいる。これは生徒の「生き物が産卵に戻ってくるきれいな海でダイビングがしたい」という思いから始まった、かつて小浜湾内に群生していたアマモ(海草)場を再生する活動である。アマモは海の水質と底質の改善に役立ち、別名「海のゆりかご」とも言われ稚魚や小さな生き物の住み処となっている。
活動当初は海に関する活動のみであったが、海のことを研究するにつれて海を健全な状態にするには、山や川についての問題も考えなくてはいけないことが分かった。現在では、地域の方々と共同で山や川など地域全体の環境に関する講演活動や学習会を開催している。これからもこの活動を通じて地域の方々の海や環境の関心を高め、美しい福井の海を取り戻していきたいと強く願っている。
活動内容
アマモ場再生のために、アマモの苗を育て海底に定植する活動を行っている。1 年間の取り組みは次の通りである。
6月、アマモ場再生のために必要なアマモの種子を集める。まだ水は冷たいがウエットスーツを着用し、アマモから種を回収する。回収した種は、成熟させるために、栽培漁業センターの水槽で秋まで管理する。
11 月以降、アマモの苗を育てるために、生徒が講習会を開き、一般の住民の方々、漁業者、小・中学生対象に「アマモ育苗キット」というアマモの種子と砂、海水を入れた瓶を製作していただいている。特に小浜市商店街では苗を育てる活動が恒例行事となっており、12 月になるとアマモの苗がショーウィンドウの一角を飾っている。キットは年間 500 〜 1000 個程作製する。翌 3 月から 4 月にかけて、育ったアマモの苗をスクーバダイビングを用いて生徒やボランティアのダイバーにより海底に定植する。
それぞれの活動には、ダイビングクラブの生徒だけでなく、JRC など多くの本校生徒や地域住民や漁業者、小中学生などが毎回約 100 人集まり、海浜清掃、再生したアマモ場の整備なども行っている。今までに通算約 1 万人の方々に定植活動に参加していただいた。
これ以外に不定期ではあるが、アマモを中心とした海洋環境に関する啓発活動として、アマモの役割や海洋環境についての出前授業を小・中学校や公民館等で行っている。授業内容は、生徒自身が指導案を作成し、教師役となって授業を行っている。
この「アマモマーメイドプロジェクト」は地域や漁業関係者を中心に活動の輪が広がり、平成 17 年には支援者の中から「アマモサポーターズ」という活動を支援する団体も組織された。さらに地域の方々の海や環境の関心を高めるために、アマモサポーターズと共同で地域の山、川、海で活動する NPO や研究者を集め「WAKKA フォーラム」というイベントを開催し、200 人を超える市民や研究者などの講演や意見交換を行い、海だけでなく地域全体の環境保全活動に広がりを見せた。その他にも「若狭・里海探検隊」を結成し、月 1 回砂浜の生物調査や漁業体験を企画し地域の方々への啓発活動も継続して行っている。
成果・実績
8 年間の定植活動により、今までに約1000 平方メートルのアマモ場が再生でき、海の底質の改善や多様な生物が確認されるなど環境が大きく改善された。
キット作りの講習や出前授業などの啓発活動を通じて本校生徒の環境に関する知識や技術も身につき、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力の向上にもつながった。
また、福井県立大学、水産試験場、栽培センター、民間企業と共同で、「アマモの発芽率向上」、「アマモの分布調査」、海洋観測等を行っている。「アマモの分布調査」では、昭和 30 年代に比べ小浜湾内のアマモ場が 2 割ほどしか残っていないことや層別刈取り法により小浜湾のアマモ場の群落組成を解明した。今夏には絶滅危惧 I 類のホソエガサ(海藻)の生息を確認した。「アマモの発芽率向上」においては、平均 2 〜 3%であった小浜湾産アマモ種子の発芽率を約 20%まで向上させた。どの研究においても新規の知見の発見や技術の確立に至っており、日本水産学会など各種学会で発表を行い、新聞などのメディアにも多く取り上げられている。
今年の秋には本校を舞台に全国アマモサミット2012 が開催され、全国から環境に関心のある方々が参加され、地域の方にも全国のアマモなど環境改善に関する取り組みなどが紹介される。