未利用ジャガイモ資源を
有効活用した循環型農業の確立
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北海道倶知安農業高等学校
活動内容について
農業クラブの活動内容はこちらよりご覧ください。
目標・展望
未利用ジャガイモ資源を有効活用し、循環型農業の確立と地域を元気にする取組
倶知安町は日本有数のジャガイモの産地で、本校も男爵をはじめ 55 品種のじゃがいもの栽培をしています。しかし、市場に出せない規格外品はその 15%にもおよぶといわれています。また、町内ではジャガイモを利用した澱粉の生産が盛んです。そして、ジャガイモから澱粉を採った後の澱粉粕は産業廃棄物として処理されています。
2000 年度より倶知安町内にある「くっちゃん産業クラスター研究会」と連携し、規格外ジャガイモの活用について取り組んでいます。
現在は、①規格外ジャガイモを利用したポテトペーストの製作と、それを利用したスイーツによる町おこし、②澱粉粕を利用した養豚方法の開発、について取り組んでいます。
この取組が成功すれば廃棄物となっているジャガイモや澱粉粕を有効活用することができ、環境への負荷の少ない循環型農業への一歩となるとともに、地域の産業活性化につながると考えています。
『ジャガイモの栽培−澱粉−澱粉粕−養豚−糞尿の肥料化』が実現できれば循環型農業の一例として環境に優しい農業が盛んになる可能性もあります。
活動内容
①規格外ジャガイモを利用したポテトペーストの製作と、それを利用したスイーツの商品化について
2000 年度より、くっちゃん産業クラスター研究会と連携して規格外ジャガイモの活用に取り組んでいます。その過程でポテトペーストの開発がおこなわれました。
ジャガイモは越冬させると糖度が高くなります。そのジャガイモを蒸かし、裏ごしをかけ、酵素を利用してデンプンをオリゴ糖などに変え、甘いペーストにします。今までにジュースやジャムなどの商品化に取り組んできました。
毎年、全校生徒で分担し、ポテトペースト作りがおこなわれています。ジャガイモの栽培からはじまり、収穫、選別、保存、ペースト作りと 1 年をかけた作業になっています。
くっちゃん産業クラスター研究会馬鈴薯部会の中から、ポテトペーストを積極的に利用して町おこしにつなげたいと 「ふうど LABO ようてい」という組織が立ち上がりました。3 年生、生活班の 8 名もその組織に加入し、町おこしに何ができるか考えています。その結果、今年度の活動として、11 月にヒルトンニセコビレッジで開催される「羊蹄山麓味覚フェスティバル」においてポテトペーストを使用したスイーツコンテストが開催されることになりました。
②澱粉粕を利用した養豚方法の開発について
ジャガイモより澱粉をとった後の澱粉粕も栄養が残っています。通常の配合飼料に澱粉粕を加えることで澱粉粕の消費と養豚に係る経費の削減につながります。しかし、生産する豚肉の品質が低下した場合、養豚方法としては普及しません。そのため、澱粉粕を利用し、環境に対する負荷を減らし、良い肉質の養豚法を確立する必要があります。
現在、澱粉粕を利用し始めてから 5 年が立ちました。2 年・3 年の畜産班の生徒を中心に、通常の飼料と澱粉粕の配合の割合と肉質の関係について調べています。豚の肥育は結果がでるまでに時間がかかります。肥育は 5月から 9 月、10 月から 2 月の 2 回のサイクルでおこない、サイクル毎に澱粉粕の割合を変え育てています。日常の活動は、毎日の餌やりと管理が主な仕事です。しかし、澱粉粕は水分が多く、そのままでは餌としては使えず、水分をいかに少なくするかも餌作りの課題の 1 つです。
さらに、今年度は休耕田を利用した飼料米の栽培も始めました。放棄された水田を活用することで里山の自然回復もできます。フードマイレージを少なくすることのできる取り組みを増やしていきたいと考えます。
成果・実績
ポテトペーストの製法は北海道立総合研究機構食品加工研究センターとくっちゃん産業クラスター研究会とで特許としての登録もされ、ペーストを利用した商品開発も始まっています。
本校では生活班の生徒を中心にポテトペーストを利用したスイーツのレシピ開発をおこないました。その結果、町内の菓子店と共同し、ペーストが入ったプリン「ぽてぷりん」の商品化に成功しました。この商品は平成 19年より本校のアンテナショップ「農高のおみせ」で販売しています。
11 月のスイーツコンテストでは生活班の生徒も出品しますが、地元の菓子店などのプロも含めたコンテストになります。優勝作品はレシピを公開し、倶知安町の新たなスイーツとして販売することになっています。
規格外で捨てられていたジャガイモで町おこしができれば素晴らしいことだと思います。
子豚の体重は 10Kg 未満ですが、澱粉粕を配合した飼料で 5 ヶ月育て、110kg 程度まで成長させ、出荷します。出荷した豚は学校でおこなう収穫祭や町のイベントのなかで豚丼として販売しています。また、「農高のおみせ」では精肉としても販売しています。豚丼を食べたお客さんからは「肉が柔らかくて美味しい」との感想を頂いています。この活動の途中経過は農業クラブ実績発表大会の全国大会で発表しました。また、北海道新聞主催のエコ大賞で奨励賞を受賞しました。
捨てられていたジャガイモ、産業廃棄物となっている澱粉粕。どちらも私たちにとっては魅力的な資源です。地域の産業を活性化し、環境に優しい農業を目指して全校生徒での取組を進めています。