海からの贈り物
水産廃棄物「ウニ」を有効資源としてリユース
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鹿児島県立鶴翔高等学校
活動内容について
農業科学科の活動内容はこちらよりご覧ください。
目標・今後の計画
鹿児島県は全国有数の農林水産生産物産出額を誇っています。一方で、一次産業の廃棄物などの有機物も大量に発生しています。県の北西部に位置し、水産業が盛んな阿久根市は、漁場の藻場育成の対策として駆除したウニが年間20トンほど廃棄されています。そこで、水産廃棄物をリサイクルすることで地域の課題と地元の農業に貢献するための研究を行いました。
今後は大学でPCR法による菌の特定を行い、より科学的な研究につなげます。そして知的財産として権利化することで廃棄するウニを地域の農家さんに安く提供できる経済活動につなげたいと考えています。糖蜜主体の液肥を作製している会社と連携を取れないか確認します。また、他のウニの廃棄で困っている地域を探し、連携範囲を拡大します。
活動内容
捨て場に困っているウニや魚、植物体内の植物生育促進細菌による発酵液を作り、イネの栽培に活用しました。またハクサイやパパイヤメロンの糖度向上の活性液として利用しました。農家さんに協力してもらい、第三者のプロの目で実験データを検証してもらっています。
1.発酵液作り
作製期間…平成28年5月から約2カ月間発酵、平成29年5月から約2カ月間発酵
試験場所…本校作物実習室
試験内容…未利用資源である廃棄ウニを細かく砕き、糖蜜・原塩・海藻粉末・水を利用し、密封できるポリタンクで嫌気性発酵させました。また、免疫機能を活性化させる植物体内共生菌を増やすために、植物を細断し種菌として事前に発酵させたものを投入します。水は畑灌用水を利用します。500ℓ培養する時の各資材の分量は次の通りです。水78.5%、培養物(ウニ)10%、糖蜜10%、原塩0.3%、海藻粉末0.2%、発酵液1%
2.野菜の糖度向上試験
栽培期間…平成28年5月から
試験期間…平成28年7月から(期間中計4回以上散布)
試験場所…本校圃場
試験内容…栽培圃場を無処理区、50倍区、75倍区、100倍区の希釈倍率区で発酵液を葉面散布。外葉や果実を採取し、葉柄部の糖度を計測しました。
3.コメの収量増加試験
栽培期間…平成28年5月~10月(栽培日数約140日)
試験期間…平成28年7月〜10月(期間中計4回以上施用)
試験場所…本校水田
栽培品種…普通米ヒノヒカリ(モミ購入)
施肥及び施肥量(10a当たり)
・基肥骨粉入り264…37kg(慣行栽培比20%減)
・追肥たわわ80号6-3-3…9.2kg(液体肥料)
・BBNKC77…6.1kg(固形肥料・NPK成分量において慣行栽培比50%減)
・米作り一番…7.7kg(固形肥料・NPK成分量において慣行栽培比50%減)
4.コメの食味向上試験
栽培期間…平成29年5月~10月(栽培日数約140日)
試験期間…平成29年7月〜10月(期間中計4回以上施用)
試験場所…本校水田
栽培品種…普通米ヒノヒカリ(モミ購入)
施肥及び施肥量(10a当たり)
・基肥骨粉入り264…37kg(慣行栽培比20%減)
・追肥たわわ80号6-3-3…9.2kg(液体肥料)
・BBNKC77…6.1kg(固形肥料・NPK成分量において慣行栽培比50%減)
・米作り一番…7.7kg(固形肥料・NPK成分量において慣行栽培比50%減)
5.その他の地域連携
北薩摩漁協にウニの確保(漁師さん他12名)、阿久根市の水産会社へ水産廃棄物の状況調査(10名)、アグリキッズスクール小学生おむすび作製(約30名)、阿久根小学校へ食育出前授業(約90名)、阿久根幼稚園と本校1学年で田植え(約110名)、鹿児島大学農学部への研修会(6名)、知的財産教育研修会(約40名)、農家への普及活動(6名)、地域での販売会(約30名)、地元製粉会社での米粉加工依頼(2名)、地元イケダパンで米粉パン作製(約90名)、本校産米粉のパン販売会(9名)
成果・実績
ハクサイの栽培圃場を無処理区、50倍、75倍、100倍の希釈倍率で4つの区分に分け、発酵液を葉面散布。収穫前に外葉をとり、葉柄部の糖度を計測しました。その結果、発酵液による糖度上昇効果は、100倍区では3.53Brix%、75倍区では3.43Brix%であり、無処理区より糖度が高くなりました。
水稲への効果を実証するため、発酵液を水田に流し、収量を比較。総収量はモミ重量で6,260kgとなり、前年度の4,853kgから29%の増収となりました。これは昨年の県平均収量を上回る結果で、肥料費の削減も期待できます。本校のモミ販売価格35kg6,500円で計算すると、前年度に比べ10a当たり3万円以上、水田全体では約40万円以上の売り上げ増につながりました。なお、栽培したコメはパッケージを写真入りで作製し、240俵を地域の方々が購入してくださいました。
パパイヤメロンの試験でも明らかな糖度上昇効果を確認できました。