公益財団法人イオン1%クラブ

花咲く神石高原町「ミツバチ」から
広がる交流・地域活性化

TOP > 子どもたちの健全な育成 > イオン エコワングランプリ > 過去の受賞活動 >花咲く神石高原町「ミツバチ」から 広がる交流・地域活性化

花咲く神石高原町「ミツバチ」から広がる交流・地域活性化

広島県立油木高等学校

活動内容について

油木高校ミツバチプロジェクトの活動内容はこちらよりご覧ください。

目標・展望

私たちの住む,広島県神石郡神石高原町は人口10,862 人で(平成 24 年 7 月町役場調査),その内高齢者人口が 4,584 人,高齢化率 42.2%であり年々過疎化・高齢化が進んでいます。地域産業は,農業ですが農業従事者の高齢化や担い手の減少による農業生産の減少,耕作放棄地の増加と町を取り巻く環境は厳しさを増しています。人口減少が一番の問題であり,それを食い止めるために,地域産業を活性化させることとして選んだのが『ミツバチ』です。2 年前より活動を始めました。
「ミツバチ」は様々なものを作っています。蜂蜜やローヤルゼリー,蜜蝋などこれらをまとめて「直接養蜂生産物」と言います。そしてこれらの他にミツバチが間接的に関与して作られるものがあります。それは,野菜や果物です。野菜や果物が実るためには花粉交配が必要で,農作物を作る際にわざわざ行う作業です。この花粉交配に活躍するのがミツバチです。ミツバチの働きぶりは,蜂蜜以上に野菜や果物に影響します。町全体でミツバチを飼育することで農産物の生産の手助けを行うと共に,「ミツバチ」は「環境指標生物」といわれ,農薬などの影響を受ける一番弱い生き物です。ミツバチが飛び交う環境は,安全・安心の認証なのです。環境にやさしいミツバチの里として,ミツバチからの恵みの蜂蜜・野菜・果物を活かした観光プランの提案にとどまらず,さらに,景観そのものを変えることを考えました。
◎研究の目標
(1)ミツバチの飼育方法を学び,増殖方法を研究する。
(2)養蜂のビジネスモデルを確立する。
(3)間伐材を利用した巣蜜専用巣枠を考案する。
(4)耕作放棄地の有効活用方法を考案し,観光へつながる取組みを行う。
(5)耕作放棄地を再生,地域へ養蜂業を普及する。
(6)ミツバチ飼育技術を東北支援へ活用する。

活動内容

(1)ミツバチの可能性及び増殖研究
野菜や果物が実るためには花粉交配が必要です。この花粉交配に活躍するのがミツバチで,その働きぶりは,蜂蜜以上に野菜や果物の生産に影響し,そのシェアはとても大きいのです。世界中のミツバチが激減しており,農林水産省が交配用ミツバチ不足対策として,各都道府県あたり,2000 万円つまり 9 億 4000 万円の補助金を投入してミツバチを生産しようとしたほど,国内の花粉交配用のミツバチが不足しており,高額で取引されます。これは,ビジネスチャンスと考えました。
昨年よりミツバチを導入し,ミツバチの増殖について研究しました。地元養蜂家の協力により,1 群 3 万匹を短時間で増やす方法を考案し,実践しました。自然に群を増やすには,働き蜂が新しい女王蜂を誕生させ,今までいた女王蜂は半分の働き蜂を引き連れ飛び出し,新しい群を作ります。これを分蜂といいます。この分蜂を人間がコントロールすることで,どんどん増やすことができるのです。この方法を実践することで,ミツバチを増殖させることができました。さらに,この成功は神石高原町の気温にありました。神石高原町は標高が高く,朝夕の気温が夏でも下がるため,女王蜂の産卵ペースが落ちず,ミツバチの増殖に適していることがわかりました。これならば,夏にミツバチを増殖させ,秋にミツバチの出荷が可能です。
(2)ビジネスモデルプランの確立
ミツバチ飼育は毎日世話を必要とせず,他の家畜の飼育に比べ,労力がかかりません。また,国産蜂蜜の生産が少ないため高額で販売可能で,初期投資も少なく,お年寄りや子供でも養蜂を始めることができ,増えたミツバチは花粉交配用として販売し,収入増加につながります。自分の目標金額に合わせてミツバチの巣箱を増やせば十分神石高原町でも養蜂で生活することができます。
(3)間伐材を利用した巣蜜専用巣枠の考案
日本は,蜂蜜を「はちみつ類」として販売することで,砂糖を加えた蜂蜜も「純粋はちみつ」として販売することができます。安心して食べていただくために,ミツバチが蜂蜜を集めたそのままの状態の「巣蜜」を販売することを考えました。これなら,人が手を加えることができないからです。巣蜜のまま販売することで暑い時期に行う採蜜作業を大幅に軽減することができます。巣蜜用巣枠製作を地域からでる間伐材を利用し,里山保全と新たな産業になると考え,実験を重ねました。その結果,考案した巣蜜専用巣枠は実用でき,木製であるため自然派志向の方に喜ばれる商品として販売できることがわかりました。蜂蜜を食べた後に残る蜜蝋をハンドクリームにできるキットも合わせて販売することで食べた後も楽しめる商品になりました。この巣枠を産業課と協力しながら特許申請を行う準備し,神石高原町ブランドの巣蜜用巣枠を全国に販売する計画です。
(4)耕作放棄地の有効活用方法の考案・地域活性化観光プランの提案
ミツバチを増やすために花は欠かせません。この花を地域の問題である耕作放棄地を活用し,育てること考えました。今までの耕作放棄地対策は,土地が集約されなければできないプラン,牛の放牧・メガソーラーシステムなどがありました。それらのことを行うには耕作している土地まで差し出さないとできません。しかし,ミツバチは飛ぶことができるので,耕作放棄地が点在していても大丈夫です。また,花が咲けば景観もよくなり,花を見るために訪れる観光客を呼び込むこともできます。そこで,蜂蜜がたくさん収穫できるレンゲ選び,種まきからイベントまで行うことで,労働力の確保と耕作放棄地の再生を行います。年々,面積を広げていけば町内全域で花が咲き,花とミツバチの町として全国にアピールすることができます。観光に訪れた方は少なからず,おみやげ物を購入してくれます。地域の特産である蜂蜜を使ったお菓子ならなおさらです。実際に行った,レンゲ種まき祭りには,0 歳から 76 歳の方まで多くの方が参加してくださり,大盛況でした。町の人にとって農作業もレジャーになり,花が好きな人は多く,このようなイベントは楽しみでまた参加したいことがわかりました。このアイディアを地元ホテルの協力により,1 泊 2 日でレンゲの種まきと蜂蜜を使ったコース料理・エステサービスを行うプランを考え,文部科学省後援の「観光甲子園」に応募したところ全国 134 プランの応募の中から全国大会出場 10 チームに選ばれ,8 月 21 日に神戸市で行われた全国大会に出場し,耕作放棄地対策を観光へ活かすプランとして高い評価を得て,グランプリ・観光庁長官賞を得ることができました。さらに,この観光プランは地元ホテルで実際行うことが決まり,高校から蜂蜜の提供とイベントのサポート,おみやげ物の考案を協力することになりました。現在 100 名の方が参加してくださり,町内外の方の交流の場を作るとともに,観光業の活性化にもなりました。
(5)耕作放棄地を再生,養蜂業の普及
私達の活動を知り,神石高原町永野南村から耕作放棄地を花畑に変えたいと依頼がありました。その広さ5ha,東京ドームより広い面積です。さらに,永野南村の耕作放棄地は 20 年以上放置されており,パイプハウスはさび付き,人が抱えられないほど幹が大きくなった木々が生えている状態でした。とても畑にもどるはずはないと地元の方のあきらめていた土地です。自然の力に圧倒されそうでしたが,地元のお年寄りの笑顔のために,学校で学んだ農業機械(草刈り機・チェーンソー・トラクター・ユンボ)を使うことで,草を刈り,木を倒し,株を撤去し,土を耕しました。そして,そばの種をまき,20 年ぶりに花畑を作ることに成功したのです。私たちの奮闘する姿を見て,お年寄りの方々も何かしなくてはと思ってくださり,3 件の家でミツバチの飼育をはじめられました。地元のお年寄りの方々が元気を出され,生き甲斐を持たれ生活をされている姿は,私たちにとって何よりもうれしいことです。今年,採蜜もでき,道の駅で販売も始まっています。この活動は,町議会で耕作放棄地対策として有効であることが認められ,町内の耕作放棄地にレンゲを植える場合,種代は町の予算で購入することが決まり,町全体へレンゲ畑を広げる活動になりました。
(6)東北支援
昨年,宮城県の被災地を訪問しましたが,その衝撃は言葉では言い表せないほどでした。地元に戻り,被災地から遠く離れた私たちができることは何だろうと何度も話し合いを行いました。そんなとき,ニュースで宮城県亘理町のイチゴ畑が津波で壊滅的な被害を受けたことを知りました。「知識や技術は人から人へ伝えれば永久の財産になるんだよ」と地元の方から教えてもらったことを思い出し,学校で学んだミツバチの飼育技術を伝えることでお役に立てないかと考えました。イチゴ栽培でミツバチは花粉交配用として必要ですが,生物でありながら花粉交配用のミツバチは農業資材として販売され,花粉交配時期が終われば,焼却処分されます。イチゴ農家へミツバチを代替させ永久に使用できる技術を伝えることで,経費削減ができ,ミツバチも大切にしてもらえます。しかし,この活動には多大なお金が必要です。そこで地元養蜂家さんへ手伝いに行き,蜂蜜をいただき,9月に銀座ミツバチプロジェクトさんの協力の元,東京で販売し活動資金にすることにしました。また,私たちの活動を知り,地元ラジオや卒業生など多くの方が協力を申し出てくださり,活動資金は 100 万円になりました。活動資金により,ミツバチをイチゴの交配時期の秋までに増殖させ送ることができます。今まではミツバチを500 箱,つまり 1500 万円のお金が必要でしたが,今年からは広島から宮城へ旅立ったミツバチが基礎となり,年々増殖して,購入ミツバチ「ゼロ」をめざします。今,亘理町のイチゴ農家さんと連携を取りながらミツバチの増殖とともに,ミツバチ飼育マニュアル,動画による飼育方法の解説を製作し,届ける準備をしています。地域の活性化のためにはじめたミツバチ飼育は耕作放棄地を花畑という宝にかえ,そこで活躍するミツバチは,地域を飛び越え新たな東北支援活動になろうとしています。私たち広島県立油木高校産業ビジネス科全生徒(85名)は,ミツバチを中心に里山保全・地域活性化を目指して活動を行ってきました。私たちの学校は町内唯一の高校ですが,高齢化が進み,生徒数も激減していますが,「高校は町の宝」として町の予算で活気ある高校生活を援助していただいています。この活動を通して地域の方へ少しでも恩返しがしたいです。そして,地元だけでなく東北支援を通じて,少しでも日本の農業が元気になるため,活動を続けていきます。

成果・実績

(1)ミツバチの増殖方法,巣蜜専用巣枠を検証し,新たな産業の可能性を創設できました。
(2)ミツバチによって儲かる農家プランを学校で実践し,確立することができました。
(3)ミツバチのために耕作放棄地を活用する方法を提案し,町内外の方の交流の場を作ると共に,観光資源につながる活動ができました。
(4)耕作放棄地 5ha を再生し,花畑に変えるとともに養蜂業の普及ができました。
(5)活動が町議会で認められ,レンゲ畑を町全体で作る里山保全活動に広がりました。
(6)ミツバチ増殖,飼育方法を活用し,東北イチゴ農家支援につながる活動を行えました。

戻る