落ち葉を森に帰そう! ~ペットボトル苗でつくる自然林ビオトープ~
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岩手県立盛岡農業高等学校
活動内容について
環境科学科 林業班の活動内容はこちらよりご覧ください。
目標・今後の計画
私達の先輩は、平成20年から市街地のゴミとして出てくる落ち葉と使用済みペットボトルを使って、地元の自然林を構成する広葉樹の苗木作りに取り組んできました。私達はこの苗を使って子どもでもできる簡単、確実な植林方法を考案し、これを広めると共に地域のみんなで自然豊かな環境づくりを図りたいと考えました。
活動内容
1.ペットボトル苗の育成ペットボトル苗は次の手順で作ります。
①ペットボトルの底の部分をカッターで切断。
②逆さまにして飲み口の部分に小石を入れ、腐葉土、赤玉土1:1の用土を入れる。
③種子は秋の採種直後に砂を入れたパレットにまき、春開芽後にペットボトルに移植。
④移植したペットボトルを育苗棚で地面につかない状態で管理し、数年間育成する。
夏の乾燥、病虫害の発生など様々な課題がありましたが、それぞれ先輩方が工夫して乗り越え、現在は2~3年で1m以上の苗木を作れるようになっています。
2.ペットボトル苗の特徴育成したペットボトル苗には廃棄物の有効活用の他に次のような長所があります。
①植樹の際は、根を土ごとペットボトルから抜くので根の切断がなく、四季を通していつでも安全に植えられる。
②育成中容器の底から根が飛び出すと、先端が枯れて枝分かれを繰り返し、細かい根が周囲を覆った根系となり、植えつけ後苗が安定する。
③500mlペットボトルの長さ約20㎝分の根系ができ、植えつけ後苗が安定する。
④苗木をペットボトルに入ったまま運べるので、持ち運びやすく苗の傷みも少ない。
⑤苗の根系はすべて同一形状となり、穴を空けて差し込むだけで簡単に植えられる。
⑥植栽にあたって土の掘り返しがなく、土壌浸食が起こりにくい。
3.ペットボトル苗を使う簡単自然林造成私達は先輩方が作ったペットボトル育苗を受け継ぎ、苗木作りに励みながら効果的に自然林ビオトープをつくる方法について考えました。市街地の小さな空間に、目に見えるスピードで、簡単に自然林に近い森をつくるにはどうしたらよいかが課題です。この結果、次のような植林方法を考えました。
①地元天然林から採った種子の苗木のみ用いる。
②植えつけは電気ドリルを用いるなど、簡単で子どもの興味をひく方法にする。
③植栽地の環境に合った樹木がどれかあらかじめ判定するのは困難であり、ビオトープとしての生物多様性も考える必要があることから、最低6種類以上、陽樹陰樹を含め性質の異なる樹木を混ぜて植える。
④森づくりを速めるため、苗高60㎝以上の大苗を6,000本/ha以上の高密度で植える。植え位置は規則的にしない。
⑤森林管理の楽しみと環境変化の指標として、地域の山野草を同時植栽する。
これらの方針に従って私達は腐葉土作り、苗木や山野草の育成、ドリルの改良などを行ってきました。
4.紙芝居づくり小さな子どもたちにも森づくりの意味を分かりやすく伝えたいと考え、紙芝居を作成しました。「森山ナラ太郎とその仲間達」と題した紙芝居は、ドングリのふるさととその冒険の話をとおして木を育てることの大切さを伝える内容です。
成果・実績
1.植林結果
平成23年12月、先輩方は県営運動公園の一角(6×12m)をお借りして、ペットボトル苗による植林試験地を造成し、私達はその生育調査を継続的に行ってきました。植えつけの際、平均樹高が約56㎝だった苗木53本は、現在48本が生存し、平均樹高155㎝まで成長しました。樹種によって生育に大きな差があり、最大は434㎝、小さいながらも森の景観が備わってきました。昨年からは植えた苗木以外の天然木が発生し、4種14本が新たに森林ビオトープの仲間に加わっています。私達が今年6月校地内につくった試験地でも26本植栽中、24本が根づいています。
2.小学校での森づくり体験会
今年9月、盛岡市立玉山小学校で3年生13名を対象に森づくり体験会を行いました。紙芝居を上演した後、約6×8mの区画を設け、7種類32本の苗木を植栽しました。高校生がお手伝いをしましたが、小学生は自分で植えようと熱心に取り組み、サルメンエビネ、ギョウジャニンニク各3株の植栽まで含めて約40分で完了しました。グラウンドの一角に森の赤ちゃんが誕生したという感じです。生物多様性や資源の循環、地球温暖化に関わる森づくりの意味が十分伝えられたと思いますし、私達の植林方法が誰でも楽しく取り組める方法であることを実証できたと考えています。今後さらに活動を続け、豊かな自然環境をつくることの大切さを地域の皆さんと一緒に考えていきたいと思います。