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イノシシから圃場を守れ 〜農業廃材利用による侵入防護柵の製作〜

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イノシシから圃場を守れ 〜農業廃材利用による侵入防護柵の製作〜

群馬県立利根実業高等学校

活動内容について

生物生産科生物資源部の活動内容はこちらよりご覧ください。

目標・今後の計画

群馬県北部の中山間地では、イノシシによる圃場への侵入被害が深刻です。イノシシの侵入被害を防ぐには、耐用年数が長い防獣フェンスを使用することが有効です。しかし、初期投資に費用がかかります。そして、構造物のため、一旦設置を行うと移動ができません。また、電気柵は、設置と移動が容易ですが、フェンスと同様に費用がかかります。
現在、その問題解決と環境への配慮を目的とした、農業廃材を再利用した移動が可能な仮設型侵入防護柵の製作を目標とし、研究成果を地域に普及できるように取り組んでいます。

活動内容

現在、生物生産科生物資源部12名で活動を行っています。主に、課題研究の授業と放課後を利用して研究を行っています。
研究フィールドは、利根郡昭和村の赤城山演習林です。イノシシが生息しており、平成20年より、トレイルカメラを使用したカメラトラップ法によるイノシシの生態・行動調査とイノシシへの新奇刺激実験を行っています。そして、そのデータを基に、環境に配慮した農業廃材を利用した侵入防護柵について研究しています。
平成24年5月に、本校の赤城農場に養蚕廃材の「回転まぶし」を利用した侵入防護柵を設置しました。廃材利用のため費用はかかりませんが、設置後の移動が難しいことが課題でした。その問題解決として、移動が可能な仮設型侵入防護柵の研究を始めました。
平成24年11月下旬に、廃材ロープに新奇刺激として廃棄軍手をぶら下げた「軍手式ロープ柵」を設置し、58日間侵入を防ぎました。その後、設置した軍手にカプサイシンを散布し、更に、51日間侵入を防ぎました。
平成25年11月に、廃材ロープを巻き付けた「ぐるぐるロープ柵」を設置しました。平成26年12月までの402日間侵入を防ぎました。
次に、平成26年4月以降の研究活動について説明します。イノシシの色覚の特徴を利用した侵入防護柵の研究に取り組みました。
イノシシは、桿体細胞は発達していますが、明るい場所で働き色彩を区別する錐体細胞が発達していません。人間は、3色型色覚であるのに対し、イノシシは、2型2色型色覚です。そして、赤緑色盲のため、青色以外の色は色別できません。
そこに着目し、「イノシシが青色を認識してどのような行動を起こすのか?」を農業廃材の青色ポリポットを使い実験しました。平成27年1月28日に、「青色ポリポット柵」を設置しました。その後、120日間侵入を防ぎました。次に、比較実験として、2月28日に「赤色ポリポット柵」を設置しました。設置5日目にイノシシの侵入がありました。
結果として、イノシシに青色は新奇刺激効果があるが、赤色にはないのではないかと推測しました。
次に、防護柵実験と並行して、平成27年1月28日から2月24日まで、イノシシの忌避効果実験を行いました。
Webページ等では「トウガラシは、忌避効果がある」と取り上げられていました。そこで、実際に効果があれば防護柵に取り入れたいと考え検証しました。実験は、餌の周囲にトウガラシを置き、カメラトラップ法により調査を行いました。
実験1日目、イノシシが餌を食べずに逃げました。しかし、4日目以降は餌を食べました。実験を繰り返しましたが、餌を食べ続けました。
結果として、トウガラシに忌避効果は期待できないことがわかりました。つまり、侵入防護対策として有効ではないことがわかりました。
平成27年5月より、これまでの研究結果を基に、農業廃材を利用した仮設型侵入防護柵として「青ポリ軍手柵」の製作に取り組みました。
防護柵は、農業廃材の青ポリポットと廃棄軍手を組み合わせ、それをロープに取り付けて製作しました。そして、実際にイノシシの侵入被害があった水田に、田植が終了した6月1日に設置しました。今年は、10月の収穫までイノシシの水田への侵入はありませんでした。

成果・実績

実験を通して、イノシシの行動特性を利用し、新奇刺激を与えることは侵入防護方法として有効であることがわかりました。
また、新奇刺激による効果は一時的でしかありません。しかし、新奇刺激を組み合わせることにより、長期間にわたりイノシシの侵入を防げるのではないかと考察できました。
今年、水田に設置した仮設型侵入防護柵は、新奇刺激として青色ポリポット・軍手・カプサイシン散布を組み合わせています。実験データより、田植期から収穫期まで、イノシシの侵入被害を防ぐことが可能です。昨年は、田植後にイノシシの侵入がありましたが、今年は、田植より収穫まで侵入を防げました。
この防護柵の長所は、①農業廃材を再利用しており環境に配慮している、②廃材利用で安価、③軽量で移動も容易なことです。
今後は、この防護柵の圃場での検証を行い、地域農家に興味を持ってもらうことが普及への一歩として重要だと考えています。そして、普及活動の一環として、発表活動や報告会に積極的に取り組んでいきたいと思います。

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