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テントウムシによる環境に優しい
農業の実現を目指して

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テントウムシによる環境に優しい農業の実現を目指して

千葉県成田西陵高等学校

活動内容について

地域生物研究部の活動内容はこちらよりご覧ください。

目標・今後の計画

日本はOECD加盟国の中で、耕地面積当たりの化学農薬の使用量が「世界第2位」です。現在の農業は化学農薬に頼っています。しかし、戦後、化学農薬に抵抗性をもったアブラムシが大量発生し、農薬が効かない害虫が生まれました。そこで私たちは、アブラムシの天敵として知られるナナホシテントウやナミテントウを生物的防除資材として利用できないか検討することにしました。殺虫剤を散布する前にテントウムシを畑から救出し農業分野に導入する研究をスタートすることにしました。しかし、成虫は高い飛翔能力を有するため畑に放飼してもその場に留まらず、減農薬農法における生物的防除資材としての利用が困難でした。そこで研究目標として、テントウムシの翅をホットメルト接着剤で固定して飛翔を制御し、生物的防除資材として利用しました。テントウムシにも環境にも優しい農業を実現することを目指しました。
今後の計画として、開発した生物的防除資材は、すでに特許を出願していますが、特許取得後、研究成果をまとめ、海外の学術誌「Bio Control」に論文を発表します。そして、地域と連携して「飛翔制御したテントウムシ」を「テントウムシ」と「コントロール」を組み合わせた「テントロール」Tentrolという商品名で農家に普及させたいと考えています。

活動内容

私たち地域生物研究部は、テントウムシを農業分野で活用するため、部員 30名が研究に取り組みました。農薬散布前に畑から 300 匹以上のテントウムシを救出し、飼育繁殖をおこない、個体数を数千匹に増やしました。飛翔制御したテントウムシを作出するために、翅を瞬間接着剤やマニキュアなどで固定し、畑に放して定着率の調査を実施しました。しかし、3 日後には接着剤が剝がれ、飛んで逃げてしまいました。翅には撥水性があり、接着剤が付きにくく、失敗を繰り返しました。試行錯誤の末にたどり着いたのは手芸用でよく使われるグルーガン(ホットメルト接着剤)でした。グルーガンで翅につけるとしっかりと固定でき剝がれることはなくなりました。なおかつ、ホットメルト接着剤は約 2 ヶ月後には自然と剝がれ、再び飛ぶことができるテントウムシにも優しい技術です。ホットメルト接着剤の主成分は樹脂であり、自然界で分解しやすい環境に優しい素材となっています。しかし、大量生産ができなければ実用化することができません。そのため「飛翔制御する昆虫処理装置」を開発しました。掃除機の吸い込み口に網を付けた装置により、テントウムシの動きを止めて、1分間に 30 匹の飛翔制御固体を作り出すことに成功しました。工夫した点は、安価で身近にある材料を使用して誰でも簡単に作れる装置であることです。私たちの開発した飛翔制御したテントウムシの新技術は、特許を出願しています。出願理由は、多くの方々にこの技術を使っていただきたいからです。一企業などが技術を独占すると、その技術を使用した商品を開発できなくなってしまいます。私たちは、そのモデルとして、地元農家とのコラボレーションにより、「テントウムシが育んだ美味しいイチゴジャム」をつくり、成田空港や直売所さらには、成田市の農政課と連携し、成田市の新商品として、海外のマカオでも販売されました。成田市のブランド商品となり、地域の活性化にもつながっています。

成果・実績

今までの研究の成果をまとめると、
①接着剤を使用し、テントウムシを飛翔制御する方法を確立することができた。
②飛翔制御にする昆虫処理装置を開発し、大量生産が可能となった。
③施設栽培における生物的防除資材の使用方法の確立をすることができた。
④生物農薬として登録されているテントウムシよりも大幅なコストダウンが実現できた。
⑤特許申請によるブランド商品を開発したことにより、6 次産業化を達成できた。
⑥農薬散布前に救出したテントウムシを生物防除資材として農業分野に活用し、化学合成農薬を一切使用しないテントウムシにも環境にも優しい農業を実現できた。
今までの研究成果を千葉県成田山書道美術館において発表したところ、フランス領ポリネシアタヒチ政府の農業省大臣の MOUTAME 氏から詳しい内容を知りたいとお話しがありました。タヒチでは無農薬有機栽培に力を入れており、とくにバジルやミントの栽培でこの新しい技術を使ってみたいとのことでした。
実績として、①平成 25 年 11 月 24 日、全国高校生みんな DE 笑顔プロジェクト決勝大会「全国大会優勝」②平成 26 年3月 28 日、第 58 回日本応用動物昆虫学会高知大会「ポスター賞受賞」。ポスター賞最年少記録を樹立しました。マスメディアなどでも多く取り上げられ、注目を集めており、10 月19日と10 月 25 日 に は、南沢奈央さんが出演しているNHK番組「サイエンスZERO」においても私たちの取り組みが紹介されました。

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