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ナマズ養殖による
地域活性化と地域環境保全活動

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ナマズ養殖による地域活性化と地域環境保全活動

広島県立油木高等学校

活動内容について

ナマズプロジェクトチームの活動内容はこちらよりご覧ください。

目標・展望

神石郡神石高原町は広島県の北東部にあり、高齢化率は 43%に達し、過疎化と高齢化が深刻です。町の主な産業は農業ですが、急傾斜な棚田状の水田が多く、高齢化と減反政策から、耕作放棄地は至る所に存在し、町内の耕地面積の 20%を超えています。工業も商業もなく農業を通して町の活性化や将来を考えるしかないこの町にとって、これは非常に深刻なことです。
私たちは町内唯一の農業高校として、増え続ける耕作放棄地を有効に活用し、町の活性化や将来に繋がっていく研究や実践ができないか 3 年前の 4 月から挑戦しています。
耕作放棄地を草等で荒らさず、手間をかけず、収益が上がる方法を色々考えた末、たどり着いたのがナマズの養殖です。ナマズは泥水に強く、耕作放棄地を深さ 80cm 程度の池に変えられれば、10 aで 3000 匹以上養殖できます。神石高原町のきれいな山水や河川水で育てたナマズは安全で安心な高級食材といえ、地域の特産物として育っていく可能性があります。
また、耕作放棄地を池に変えれば、整備された水田が本来持っている、洪水防止機能や水資源涵養機能といった、地域全体の環境保全機能が格段に向上するはずです。さらに、棚田状の水田の上流部で養殖すれば、ナマズの出す大量のふん尿で汚れた水を、下流部の水田で次々利用していくことで、化学肥料を節約しながら、安心で安全な「ナマズ米」の生産も可能になると考えました。

活動内容

まずナマズの生理生態について研究しようと考え 3年前の 4 月より、生徒 40 人で校内に 10m × 9m で深さ1m の池を、100%自分たちの力だけで完成させ、10 月には 8cm 程度のナマズの稚魚 600 匹を放しました。また 2 年前には、廃校になった小学校のプールを町から借り、10 年ぶりのプール掃除、約 2000 匹のナマズの稚魚放流を学校と地域の自治振興区が一緒になって行いました。
ナマズは白身の魚で刺身、蒲焼、天ぷら、照り焼きなど様々に調理でき、味は確実に一級品で、ビタミン B1やE、コラーゲンが多く、美容や滋養強壮にも効果があるとされています。私たちはナマズの美味しさを広くアピールするため、3 年前から毎年 6 月の学園祭、7 月の地域の夏祭り、10 月の広島県最大の食の祭典「ひろしまフードフェスタ」で、天丼や蒲焼、フリッターなど調理し販売してきました。評判は上々で、テレビや新聞で何度も取り上げられ、私たちの活動は地域では非常に有名です。
今年になり、高校がこんなにナマズを頑張っているのに、地域が何もしないわけにはいかないということから、プールのある草木地区自治振興区ではナマズ学習会が始まり、地域の耕作放棄地 7 aを池に変え、ナマズ養殖を始めることが決定し、9 月から池作りの工事が始まっています。また学校のある油木地区にも同じような動きがあります。
今年の 5 月には、湯崎広島県知事の「地域のお宝トーク」という大会があり、ナマズの実践を発表し、ナマズで作ったカマボコを食べていただきました。6 月下旬には広島県議会で「油木高校のナマズを食べる会」が行われ、県議会の昼食として、本校のナマズを蒲焼、唐揚げ、天ぷらに調理し、県議 70 人に食べていただくとともに、県議会本会議場で本校のナマズ養殖の実践について話をする機会を頂きました。8 月には「広島県農業フォーラム」という県の農政部が主催する大きな大会があり、そこでもナマズ養殖についてプレゼンをする機会を頂きました。地域だけでなく、県知事さんや県議、県の農政部も私たちのナマズの研究や実践について非常に注目してくださっています。

成果・実績

非常に難しいとされている、ナマズの産卵と孵化、共食いとの戦いになる稚魚の生産ですが、今後技術を向上させ何万匹という稚魚の生産に挑戦していきます。地域の大きな会社が、大規模にナマズ養殖を始めたいと考えておられ、それ以外でも学校がナマズの稚魚生産に成功したら、地域全体で特産化していこうという声は地域の至る所に広がってきています。また今年の 2 月ウナギが絶滅危惧種に指定され、価格が高騰しています。ウナギに変わる蒲焼の材料として、食品加工会社が軌道に乗る月 5000 匹出荷して欲しいという話もあります。
ナマズ養殖で、池を作る地域の建設会社、ナマズの加工を行う食品加工会社、ナマズの商品を動かす運送会社やスーパー、またナマズ料理の食べられる地域の旅館やホテルなど多くの場所で雇用を生み、ナマズ養殖を行う農家や自治振興区だけでなく、ナマズに関わって地域全体を活性化したいと考えています。 また将来的には、ナマズ池が地域に広がることで、地域全体の環境保全機能を高めていきたいとも考えています。地球温暖化により台風の大型化など異常気象はますます深刻になります。地域だけでなく川下に住む多くの人の安全を守るためにも、このことは非常に重要なことです。

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