モルト粕飼料からはじまる
地域のリサイクルループの確立
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神奈川県立中央農業高等学校
活動内容について
養豚部の活動内容はこちらよりご覧ください。
活動内容
日本では年間約1700万トンもの食品廃棄物が廃棄されています。私たちは地域から廃棄される未利用資源を活用した養豚用飼料やオリジナルブランド豚肉を開発し、それらによって食のリサイクルを実践しています。同時に循環型社会について地域に発信することを目指し日々プロジェクト活動に励んでいます。
今回、私たちは近隣の地ビール会社から大量に排出されるモルト粕を活用し新たな食資源循環を構築しようと考えました。モルト粕とはビール製造過程の中で麦を粉砕、ろ過した際の残ざんさ渣で、ビール工場から大量に廃棄されています。これらを独自の方法で「中農B.Y飼料」として飼料化し、学校で飼育する肥育豚に給与しました。
「中農B.Y飼料」を給与した豚は、地元海老名市近辺で古くから飼育され、「高座豚」として良食味で知られる「中ヨークシャー種」と生産性に優れた「ランドレース種」を掛け合わせた私たちのオリジナル交雑種LYです。中ヨークシャー種は特に脂肪の質や筋繊維のやわらかさに特徴があり、食品残渣の利用性にも優れています。しかし、中ヨークシャー種は増体が悪く、脂肪が付きやすく歩留まりが悪い等の欠点があり、近年は飼育頭数が激減し、「幻の豚」といわれるまでになりました。
そこで私たちはこの中ヨークシャー種(Y)の精液をランドレース種(L)の母豚に人工授精しオリジナル交雑種LYを作出しました。ランドレース種は大型で増体もよく、かつ胴長のため豚肉で最も重要なロースやバラ等の部位が多く生産することができます。これらのランドレース種を中ヨークシャー種とハイブリッドすることにより、中ヨークシャー種の食味の良さや食品残渣の利用性の高さは生かしつつ、生産性も兼ね備えた豚となりました。
「中農B.Y飼料」を給与した、環境に優しくおいしいオリジナルブランド豚肉「ちゅのとんY.Y.Bu−」は、学校生産物販売会や地元デパートでひろく地域の方々に還元しました。また、海老名市役所地下レストランで「ちゅのとんY.Y.Bu−」を使った叉焼麺、担々麺を提供し、市民の方々に親しまれています。これらは地元情報誌「YokohamaWalker」や「タウンユース」でも紹介されました。さらには「ちゅのとんY.Y.Bu−」から生まれたボリュームたっぷりの豚串「ちゅのとん串」を日本最大の利用客を誇る東名高速道路海老名サービスエリアで提供しました。その際、パネルなどを掲示しつつ私たちが直接販売する機会を設けていただき、訪れた全国の方々から温かい声をかけていただきました。これらも日本テレビ「ヒルナンデス」で紹介され、大変好評を得ました。このような普及活動は海老名市役所地産地消課と連携しつつ行っています。
以上の活動を通し、新たな地域の食のリサイクルループを生み出すとともに、地域の方々に食のリサイクルや循環型社会についてひろく啓発することができました。
成果・実績
肥育試験の結果、食いつきもよく食べ残しも見られないため、「中農B.Y飼料」は嗜好性が高く豚に適した飼料であることが分かりました。1頭当たりの飼料コストは約50%、生産コストも約36%削減することができました。肉質実験の結果、特に脂肪交雑、いわゆる霜降りを示すマーブリングスコアでは市販の豚肉の2に比べ6と、優れた結果を得ました。食味検査でも脂の甘み、味などの項目で市販の豚肉よりも高い評価、「やわらかい」「脂がのっている」などの感想をいただきました。こうして、地域から排出される未利用資源であるモルト粕とオリジナル交雑種から生まれた、環境に優しいだけでなく低コストでおいしい、新たなオリジナルブランド豚肉「ちゅのとんY.Y.Bu−」が完成しました。そして、地域から排出されるモルト粕を飼料化し、おいしい豚肉として地域に還元するという新たな地域のリサイクルループが完成し、一方で私たちの活動をとおし、地域の方々に食資源循環や循環型社会について伝えることができました。また、これらの活動を環境省主催「Re-styleFes!」やRe-styleのホームページ上でも紹介させていただき、リサイクルの輪を広げることができました。
目標・今後の計画
「中農B.Y飼料」の成分のさらなる向上、低コスト化、肉質の向上、新たな加工品の開発等を、海老名市役所や地域企業と連携しつつ実践し、食資源循環や循環型社会の啓発に向けて取り組んでいきたいです。またモルト粕以外にも、地域から排出される未利用の食品廃棄物の飼料化に向けた研究を進めていきたいです。
具体的には、現在モルト粕をいただいている地元地ビール会社サンクトガーレンと提携し、「ちゅのとんY.Y.Bu−」からできたソーセージとサンクトガーレンの地ビールのギフトセットを企画しています。それらを、全国の方々に届けることによって、リサイクルの輪を全国に広げていきたいと考えています。