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守り、そして伝える虹ノ松原 ~永久に続く地域文化遺産へ~

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守り、そして伝える虹ノ松原 ~永久に続く地域文化遺産へ~

佐賀県立唐津南高等学校

活動内容について

虹ノ松原プロジェクトチームの活動内容はこちらよりご覧ください。

活動内容

地域遺産である虹ノ松原の『保全・有効資源活用』
国の特別名勝であり、日本三大松原でもある虹ノ松原を保全することを目的として、15年前に「松しょうろ露プロジェクトチーム」が発足し、虹ノ松原の再生保全活動を行っています。さらに清掃活動をした際に回収される松葉や松ぼっくりを廃棄せず、固形ペレットや観光資源として活用するための取り組みも行っています。
保全活動では、松原内に滞積する松葉を回収する「松葉掻き」や松ぼっくり拾いなどを唐津市観光課や地元のNPO法人KANNE(かんね)、そして私たちが主催しています。大規模なものでは、地元市民を中心に年間延べ1200人以上の方が参加される保全活動「KPP〜KeepPineProject」があります。これは私たち松露プロジェクトチームが名付けたもので、参加者のサポートや啓発活動を中心に1年を通して行っています。保全活動を行うと大量の松葉や枝、松ぼっくりが回収されます。松葉は年間に1000tが苗床や肥料として地元のタバコ農家に活用されていますが、枝と松ぼっくりは年間86tが廃棄物として焼却処分され、それ以外のものはそのまま松原内に放置されているのが現状です。枝は唐津市が燃料としての研究を進め、改善されつつありますが、松ぼっくりは使い道がない状態です。この現状を改善するため以下の研究を行っています。
1.松葉の活用
清掃時に回収された松葉を適当な大きさにそろえ、ペレタイザーで粉砕し、円筒状に固めペレットとして活用しています。そしてそのペレットを木質バイオマスとしてボイラーやストーブ燃料などに使用。熱エネルギーを生産する「エネルギー利用」とマルチや肥料として利用する「マテリアル利用」に取り組んでいます。このペレットの熱量平均値は4620kcal/kgとなり、灯油の0.4倍の熱量を持つことが分かりました。またボイラーやストーブなどの化石燃料の代替品としてペレットを使用した場合、ペレットストーブは灯油ストーブの約4分の1の量である18g/MJの二酸化炭素を排出しますが、カーボンニュートラルの考え方から二酸化炭素の発生量はゼロとカウントされます。
また、プロジェクトメンバーの中に実家が養鶏農家を営んでいる生徒がいたことから、養鶏業で産業廃棄物として廃棄されていた鶏糞を松葉ペレットに添加し、鶏糞ペレットも製造することになりました。松葉ペレットでは、松葉に含まれるファイトアレキシンにより除草効果が果たせ、マルチの代用として利用していましたが、そこに鶏糞が加わることで土壌改良効果もプラスすることができました。現在は福岡大学の戸高先生にサンプルテストをしていただき、商品化へと研究を進めています。
2.松ぼっくりの活用
若年層が興味をもつように「SNS映えする」「高校生目線でかわいいものを」「新しい唐津のお土産に」をコンセプトとし、松ぼっくりを使用した商品を考えた結果、松ぼっくりに香りを添加したものをガラス瓶の中に飾りつけし、「松ポップリ」と名付け芳香剤としての製品化に成功しました。今後は唐津を訪れた観光客の方々にワークショップ形式でポプリ作りを体験してもらい、唐津の新たな観光資源として商品化を目指し、その収益を保全活動に生かしたいと考えています。
これらの活動は唐津市観光課やNPO法人をはじめ、ボランティア団体、唐津市の小・中学校などと連携をとりながら行っています。これらの団体と私たちは、唐津市長が代表を務める「虹ノ松原対策協議会」に所属しており、互いに松原でどのような活動を進めていくのかなどについて議論しています。虹ノ松原保護対策協議会は本年より虹ノ松原の世界遺産へ向けた活動を呼びかけ、活動を進めています。

成果・実績

保全活動の参加者は年々増加し、現在では年間4回のKPP活動に約1200人の方が参加しています。松葉ペレットの研究は、福岡大学工学部の重松教授が興味を持たれ、今後も連携を図り、研究を進めていくことになりました。また、九州学校農業クラブ連盟意見発表の部で優秀賞を獲得しました。「松ポップリ」の製品化は、佐賀県が主催する「佐賀最高企画甲子園」で研究成果が高く評価され、最優秀企画賞を受賞し、副賞として今年3月にオランダで行われる発表大会への参加が決定しました。
さらに、唐津市の知名度向上に貢献したことなどが認められ、唐津市長より感謝状をいただき、表敬訪問も行いました。地元のテレビ局や佐賀新聞、西日本新聞などでも活動が取り上げられる機会が増えました。そして、岩手県陸前高田市「高田の松原」復興植樹祭に全国の高校では唯一参加依頼をいただき、学校で管理している黒松を、高田の松原と高田高校に記念植樹しました。今年度はさらにPRを続け、日本ユネスコ連盟の「日本未来遺産」への登録を目指しています。

目標・今後の計画

虹ノ松原区域内を区画割りし、保全活動を行う団体に自由に活動してもらう唐津市の制度「アダプト登録」について、現在の25%から50%に伸ばしたいです。そのためにも楽しみながら松葉掻きができる仕組みや、地元商工会議所と連携し、新しいお土産「松ポップリ」を実際に体験できるお土産コーナーを運営していきたいです。また、地元旅館組合と連携し、料理に使用する固形燃料の代替として松ぼっくりを炭化させた燃料を製作して、さらなる有効資源の活用を目指したいです。そして400年続いてきた唐津の宝である虹ノ松原を私たちの手で後世につなげていきたいです。

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