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廃棄されるホップの主蔓を活用した
和紙の研究と普及

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廃棄されるホップの主蔓を活用した和紙の研究と普及

岩手県立遠野緑峰高等学校

活動内容について

草花研究班の活動内容はこちらよりご覧ください。

目標・今後の計画

平成 21 年度から農業系資源の有効利用として廃棄されるホップの蔓を活用した研究が開始されました。
岩手県は日本一のホップ生産量を誇る一大産地です。その中でも遠野市は県の 43%のシェアを持っており、全国の市町村別でも 1 番の生産量を誇っています。しかし、ホップの生産量は、高齢化による担い手不足の問題もあり、32 年前は 112ha 以上もあった作付面積が現在では 32ha まで減少し、ホップ農家の存続が危ぶまれています。そのため、ホップ生産に魅力を感じてもらう 1 つの手段に、新規事業となる付加価値製品の開発が急務であり、生産者の農業所得向上へとつなげ若い担い手を育成していかなければなりません。そんな中ホップの使い道は、ビールの香りと苦みに毬花(きゅうか)が使われているのがほとんどです。10m 以上もある蔓は、毎年、手間をかけて粉砕し堆肥として一部が再利用されている以外、地区によっては3ha で 18 トンも焼却処分されている現状にあります。そこで私たちは、廃棄されるホップ蔓を使い農業資源として有効利用させることで遠野ブランドとなれる和紙を開発しホップ農家の活性化に貢献したいと思い研究を立ち上げました。
研究目標は、(1)廃棄されるホップ蔓を使いホップ100%の和紙を開発する。 (2)ホップ和紙で商品開発し郷土の特産品として商品化を目指す。 研究計画は、1年目は、ホップ蔓を活用し農家が納得するホップ和紙を開発する。2年目は、ホップ農家に名刺として普及。さらに新製品の開発と販路の確立。以上のことを計画し研究を進めることにしました。

活動内容

(1)ホップ農家の声をリサーチ
はじめに、平成 25 年 8 月 27 日、研究班 8 名でホップ農家の工場見学を行い飯豊ホップ生産組合長の安部純平さんから、ホップの蔓は、フキノメイガの防除のため全て焼却処分している現状を知りホップの主蔓を回収してきました。
(2)ホップの主蔓から繊維の抽出実験とホップ和紙の製作
当初は、固い蔓を切断しボイルし、高圧釜で処理するなど、何度挑戦しても繊維を取り出すことができませんでした。できた紙はとても紙とは言えず、プリンターに引っ掛かるなど失敗の繰り返しでした。何とか蔓を柔らかくさせ、それを繊維と判断して名刺第一号として作ったのは、ホップ繊維が1割しか入っていない名刺でした。安部さんから「たった1割ではホップ和紙ではない」という指摘を受け、振り出しに戻り試行錯誤を繰り返した結果、ホップの主蔓の皮に繊維が詰まっていることを発見しました。
この8カ月間の研究により繊維抽出方法を確立することができ、一般の和紙より2日間も早く作ることに成功しました。この繊維を発見 し た こ と で10%から 100%の配合で和紙を作ることができ、表面の質もよく、風合いのある和紙が遂に完成しました。
(3)和紙の強度を考えた科学性の追求
歩留まりの比較をしてみました。ホップ繊維は 6.4%と天然素材と比べても 1.6 倍と高く、豊富な農業資源として再利用できることが分かりました。 さらに繊維の長さや形状を調査したところ、天然素材で 1 番長いとされる楮(こうぞ)とほぼ同じ 7.5mm の繊維長で、形状は繊維幅を見ても 10 ~ 20μmとほぼ同じということが分かり、和紙としての強度も強いことが言えます。
(4)地域への普及活動
この和紙作りの技術を生産者に広げるため安部さんと一緒にやってきたのですが、安部さんはたどり着いた成果に驚きと夢の実現に感動していました。また、遠野市ホップ農協の組合長をはじめ役員の皆さん 10名に名刺 100 枚をプレゼントしてきました。生産者の皆さんは「ホップらしさのある名刺で気に入りました。ぜひ活用したいです」との感想を頂き胸が熱くなりました。現在も追加注文を受けています。
これまでの活動が実り、現在はキリンビール幹部に名刺を提供、さらに遠野市郵便局、行政などと連携してホップ和紙の利用拡大を計画しています。さらに遠野市と連携しながら地元のふるさと学校で民芸品を作っているお年寄りの皆さんに技術を提供し、地域産業の振興に向けて動き出しています。今後はさらに効率よくホップ繊維の量産化ができるよう研究を継続しながら普及拡大を目指していきます。

成果・実績

(1)焼却処分されていたホップ蔓から繊維を見つけ、その繊維 100%で和紙を作ることに成功し、新たな遠野の特産品としてホップ栞を商品化することができました。(2)廃棄されるホップ蔓 60kg 分を和紙に再利用させ、名刺や栞などに製品として販売することができました。(3)今まで焼却処分している 4 世帯 18t 分の蔓だけみても、1t 以上の繊維を抽出でき、A4 和紙が 14 万枚生産、ホップ農家 1 世帯 1ha 当たりで 3 万 5 千枚でき、さらに工業化することで A4 判 1 枚 50 円の売価で年間 175万円の売上げが見込まれます。安部さんのホップ売上額に和紙をプラスすると 38%増しの 635 万 円 に なることが分かりました。

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