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焼酎粕と乳酸を原料とした
新しい水溶性・生分解性プラスチックの開発

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焼酎粕と乳酸を原料とした 新しい水溶性・生分解性プラスチックの開発

鹿児島県立曽於高等学校

活動内容について

科学部の活動内容はこちらよりご覧ください。

きっかけ

「世界的な環境課題であるプラスチックごみの問題と、地元鹿児島の産業廃棄物である焼酎粕の問題を、一気に解決する方法はないか」。鹿児島県立曽於高校科学部の活動は、そんな課題意識をきっかけに始まった。鹿児島では名産品の焼酎を造る際に出る焼酎粕の量が、生徒が調べた酒造会社一社だけでも年間約8,000トンあり、処理費用は約4,400万円にのぼる。そこで、プラスチックゴミの問題と焼酎粕の問題を共に解決するため、焼酎粕を用いて環境にやさしい生分解性プラスチックを作ろうと研究を開始した。

活動内容

研究は、まず乳酸15mLに焼酎粕の上澄みを任意の量加え、ホットプレートを用い230℃で2時間加熱しポリマー化することからスタート。そこでできた「焼酎粕-ポリ乳酸プラスチック」の強度を焼酎粕の量の違いで比較すると、焼酎粕が7.5mLのとき強度が最大になることがわかった。
次に、乳酸が硬化する理由について、焼酎粕に含まれるグルコースまたはタンパク質が熱により脱水縮合し、結合を強化するのではないかと仮説。グルコース水溶液やタンパク質の代わりのグリシンを使った実験で結合力が上昇することを確かめ、仮説が正しいのではないかと考察した。
さらに、「焼酎粕-ポリ乳酸プラスチック」は水中で生分解性を示すのではないかと考え、ミジンコと共に水に入れて放置。ミジンコの増加が確認でき、分解により焼酎粕由来の栄養成分が水中に放出されたことが示唆された。こうした特性を持つポリ乳酸プラスチックの例は調べた限り事例がなく、世界初の可能性もあった。

成果

産業廃棄物となっていた焼酎粕に乳酸を加えることでプラスチックを作ることができ、植物を原料とする従来のポリ乳酸よりも丈夫で、かつ水溶性があることで栄養成分を水中に放出することがわかった。これらの特徴から、このプラスチックの活用方法として漁具の材料や、海洋の建設現場で現行のプラスチックの代替利用などが考えられた。また、水田の稲などに食害被害をもたらすスクミリンゴガイの卵にこのプラスチックを塗布することでふ化を阻害し、その後プラスチックが雨で分解され水田のミジンコの養分となる使い方も考えられた。

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