竹の有効利用と地域貢献
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岡山県立津山工業高等学校
活動内容について
工業化学科の活動内容はこちらよりご覧ください。
活動内容
日本国内に豊富にある天然資源である竹は、日用品や食用などに利用されてきました。しかし、現在では安価な石油製品によって竹材需要が減少し、高齢化や担い手不足によって放置される竹林が増加しています。授業で放置竹林は山林を侵食し、土砂崩れを引き起こす恐れがあり、大きな問題となっていることを学びました。地元美みまさか作でも多くの竹林が放置されている状態であり、私たちは工業化学科の特色を生かした循環型資源活用を目指し、地元竹林の整備により伐採された竹資源の有効活用に取り組みました。3年生の課題研究の授業を通じて、先輩から後輩へと引き継ぎながら、以下の活動を3年6カ月行いました。
1.森林体験
地域の問題を考え、環境を改善していく取り組みとして、津山森林組合と協働しました。阿波森林公園での散策では豊かな森を確認し、森林組合の指導で間伐材の伐採を行いました。
2.竹林整備
近隣の勝央町の竹林整備を行い、放置竹林の現状を体験しました。この活動が報道され、竹林の所有者の厚意で、学校から徒歩10分の竹林整備を継続してできるようになり、竹材の確保が容易になりました。
3.竹材の実用的活用
竹材の基礎的活用では、竹紙、フィルター、バイオエタノール、竹炭などが可能であることがわかりました。実用には、竹を微粉砕することで、牛舎敷料や脱臭剤としての活用が見えてきました。
竹粉の牛舎敷料としての検証実験は、津山市農業振興課、みらい産業課、つやま和牛振興協議会と協働で実施しました。価格が高騰しているおがくず敷料の代替として、竹粉とおがくずを混ぜたものを牛舎に敷くと使用した牛舎の方の感覚で消臭効果が見られ、また役目を終えた牛舎敷料の成分分析を公的機関に依頼した結果、生物由来の遅効性土質改良剤として用いることができる目途がつきました。
竹粉の消臭効果は牛舎敷料で実証済みですが、主観的なもので、科学的な裏付けが必要です。そこで臭いセンサーを用いて検証しました。機器を用いた相対的な脱臭の比較では、ペット用猫砂がアンモニア原液の28.8%の臭いを吸収するのに対して、竹ペレットは83.2%と数値的には2.9倍の脱臭効果であり、他の資材に比べてもかなり高い効果を示しました。また、乾燥竹ペレットは自重の57%の水分を吸収し、ペット用の猫砂としても活用できると考えます。
成果・実績
①森林体験や竹林整備を通して、自然の豊かさだけでなく地域の環境保全の大切さを知ることができ、環境意識を高めることができました。
②竹林の現状から地域で何ができるのかという課題を考え、地域の方と協働することによって自分たちの役割を認識するきっかけとなりました。
③竹林整備を行い、協力すればできるという達成感を得ましたが、わずかばかりの竹林整備であり、地域の根本的な課題に直面しました。
④1年生は3年生から森林の役割について事前指導を受け、森林活動や竹林伐採を行いました。活動を通して得た知識が先輩から後輩に引き継がれています。
⑤竹の有効利用により、将来の竹林活動において貴重な竹材の知識・利用方法を習得できました。
⑥竹を微粉砕することによって、高騰したおがくずの代替として牛舎敷料とすることができ、役目を終えた敷料が窒素、リン、カリウムを含み遅効性の土質改良剤として見込まれ、循環型資源活用の目処がつきました。また笹も丸ごと粉砕するため、竹を全て使いきることができたのは大きな成果だと考えます。
⑦竹ペレットの脱臭効果が予想以上で、吸水力にやや課題はあるものの、猫砂として活用が見込まれます。モニターのほとんどから「市販の猫砂より消臭効果があった」と回答が得られています。
⑧吸着、密度測定、アルコール発酵、粉砕、ふるい分析など学んだ実習の手法を用いて科学的なデータの裏付けができました。
⑨竹資源を分析する過程で、インターネットから得た「確からしい情報」ではなく、実験によって測定したデータを「確かな情報」として得ることができました。自分たちの手で得た「生きた情報」は重要でした。
⑩教科書に示された実験方法で、再現性を確認しました。さらに実験を地道に繰り返し、信頼性を高めました。将来の技術者としての姿勢を学びました。
⑪土質改良剤としての実用的な活用の目処はつきましたが、植物への阻害の成分は無いか、品質を一定に保てるかなど取り組むべき課題は多く、後輩たちにも引き継ぐ予定です。
目標・今後の計画
整備活動によって密集した竹林は光が差し込む竹林へと再生され、同時に地域の課題を知ることもできました。取り組みの4年目は担い手不足という、どこの地域でもある課題にぶつかりました。竹林を整備し、竹の有効利用を通して、やがては「地域の核」となれるように引き続き活動を継続していきたいです。また竹を縦方向と横方向に接着させ、板材として活用できないか取り組んでいます。