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3Cの力で永続的な農林業の開拓!

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3Cの力で永続的な農林業の開拓!

宮城県農業高等学校

活動内容について

農業経営者クラブの活動内容はこちらよりご覧ください。

活動内容

1.緒論
宮城スギは県内2744haの森林に植えられています。森林を管理するために間伐作業を行うと大量の樹皮が生じ、産業廃棄物として処理されます。平成28年度に黒川森林組合から「宮城スギを守るのを手伝ってほしい」と連絡をいただき、産業廃棄物の樹皮を農業に利用できないかと研究を開始しました。現在、樹皮に化学肥料や鶏糞を入れて発酵させるバーク堆肥がありますが、発酵が不十分なため微生物が窒素を大量に使用して再発酵を起こして窒素飢餓を起こすことから、農家には敬遠されがちです。そこで、本研究では産業廃棄物の樹皮から環境に優しい完全有機資材を開発し、商品化することを目的としました。
2.理論の構築
農業利用としてはじめに着目したのは樹皮に含まれる炭素(C)で、作物の必須構成元素です。産業廃棄物として樹皮に大量に含まれる炭素を効率良く畑に入れることで収量と食味を上げ、土壌改善を促進すると理論を構築しました。
3.基礎研究
まず炭素(C)の力を探るためにCを多く含む砂糖で液肥を作り、トウモロコシに与えますが差が認められませんでした。これは、砂糖の分子量が大きすぎて根の細胞膜を透過できないためだと考えました。そこで、分子量を小さくする二つの酵素に着目。砂糖水に納豆菌を加えるとブドウ糖まで分解してくれました。更に、イースト酵母菌はブドウ糖をアルコール発酵させエタノールを生成してくれました。ブドウ糖とエタノールを炭素液肥としてキャベツに与えて変化を調査しました。炭素区の乾物重量は低く、水分割合が多くなればキャベツの重量が増し、大きく生育する可能性が示唆されました。次に食味調査を行うと、茎の糖度7度と試験区に比べて2倍以上の結果がでました。炭素液肥を与えたことで植物体がアミノ酸を合成し、生育を早め糖度上昇と収量増加につながりました。
4.発展研究
次に窒素飢餓にならないように樹皮を完全発酵させる方法を考えました。森林組合からは「発酵には4年以上かかる」と言われましたが、1年以内の堆肥化を目指し、微生物の力に着目。微生物は温度、酸素、湿度の環境を整えることで爆発的に増殖してくれます。菌は宮城スギが植えられた山から糸状菌を採取した時の土着菌や食品や販売されている菌を使用しました。乳酸菌、酵母菌、イースト菌、光合成細菌、乳酸酵母菌、麹菌、糸状菌を樹皮に添加してインキュベータ内36度の環境で変化を調査しました。分解スピードは乳酸菌が最も速く、発酵過程で酸を放出し高い分解力が認められました。しかし、2週間で分解が進まなくなりました。樹皮には炭素は豊富に含まれていますが、分解エネルギーに必要な窒素が存在しなかったのです。なんとか自然界から窒素が得られないか悩んでいる時、偶然ゲリラ豪雨が発生し稲妻が鳴りました。なぜ雷を稲の妻と書くのか調べてみると「稲光は稲をよく育てる」と言われていたことを知りました。雷が鳴ると空気中の窒素と酸素が反応して窒素酸化物が生成され、それが雨水に溶けて硝酸態窒素となり稲に吸収されることを知りました。つまり、空気中には窒素が大量にあることになります。枝豆は空気中の窒素を根に固定することを思い出し、樹皮に枝豆を播種し、樹皮だけで育てた根粒菌を得る実験に成功。1年で発酵させることができました。
この実験と並行して堆肥化した樹皮を使って実際に植物が生育するかを確認する試験を行いました。樹皮と培土の割合を100:0、75:25、50:50、25:75、0:100に設定し、バジルの生育実験を行いました。樹皮割合が多いと主茎長、根重、根長が大きく、肥料についても長持ちすることが分かりました。土を除去し根の状態を確認すると樹皮100%が0%に比べ4倍の根重、2倍の草丈という結果が得られ、仮説通り炭素が好影響を与えていると立証することができました。

成果・実績

実験と研究により、発酵を短時間で進め資材の高い効果を得ることに成功しました。この活動を広めるために黒川森林組合に間伐材をいただき、プランターを40個作りました。これにバジルを植えて楽天球場内で試験・展示し、データ収集を行いながら情報発信を行いました。収穫したバジルは球場内のピザ屋さんで販売を行い、生物多様性や樹皮培土の将来性を併せて広報しました。楽天球団からは高く評価され、活動への継続性と発信力に自信を持つことができました。スギ樹皮だけを発酵させて作った資材は「イデアルグリーン」と呼んでいます。この商品は大東環境株式会社さんで実際に販売して畑や花、果樹、野菜にも使用されて、「生育が良すぎる」と消費者からうれしい言葉をいただいています。さらにラジオや新聞でも取り上げていただくことで、販路拡大につながっています。

目標・今後の計画

農地に炭素を供給することで農作物へ好影響を与えることが分かりました。また、純粋な樹皮の分解発酵に必要な窒素を根粒菌から得ることに成功。樹皮培土の割合と生育には比例関係があることが分かりました。
今後の課題として樹皮の環境への影響を明らかにして、発酵1年を目指したフローチャートを作成します。本研究で工夫した点は林業において過剰な炭素を枯渇している農業に利用し、二つの産業の欠点を補完しあう関係にしたことです。そこで、私たちは3つのCを提唱します。永久的な農林業の可能性を発掘してくれるCarbon。環境と人体に優しい農法を目指しClean。農業と林業の新たな文化を作りだすCulture。CarbonCleanCultureの3Cを心に秘め、今後も活動と研究を行っていきます。

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