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Our Green Innovation utilizing area resources
(地域資源を活用した私たちのグリーンイノベーション)

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Our Green Innovation utilizing area resources (地域資源を活用した私たちのグリーンイノベーション)

秋田県立大曲農業高等学校

活動内容について

きのこ研究グループの活動内容はこちらよりご覧ください。

目標・展望

近年、消費者の健康に対する意識の増加から、栽培きのこが林業生産額に占める割合は年々増え続けていることに加え、きのこや山菜などの特用林産物は山村の地域経済に大きく貢献しており、特にきのこ栽培は農山村における貴重な収入源となっている。一方で、コーンコブなどの培地基材や、おから・フスマなどの添加栄養材の大半を外国産に依存していることから、遺伝子組み換えやポストハーベスト農薬など、食の安全面に対する課題も考えられている。
このような背景を受け、今後は、既存の添加栄養材に変わる新たな材料の開発に注目が集まっている。私たちは、昨年度から秋田県内に豊富なバイオマス資源を用い、未利用地域資源を活用したきのこの開発を進めてきた。具体的には、利用過程において廃棄されている秋田県産の米ぬかや酒粕、規格外大豆などを培地の栄養材として再利用し、生産コストの低下はもとより、安心・安全なきのこの生産を目的としている。
この研究において、秋田県森林技術センター、秋田県立大学、仙北地域振興局、そしてきのこ農家さんを含むオール秋田での取り組みを実践することができた。今年度は秋田県においてコメに続いて上位の産出額を占めるシイタケに着目し、菌糸成長に関する特性解明と効率的生産技術の開発をメインテーマに研究を進めることにした。研究を開始してから 2 年目の継続研究である。

活動内容

1. 最適培地組成の検討
供試菌株は、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus )山越(生産者保存菌株)、森 M39 号(森産業株式会社)の2 菌株を用いた。培地基材としてスギおが粉、栄養剤として一般的に使用されている精選フスマ、乾燥オカラと秋田県産の米糠、中白米糠、酒粕、規格外大豆の4 種を用いた。秋田県産の栄養剤を対象に合計 16 処理区を設定し、培地基材と栄養剤を絶乾重量比でおが粉と栄養材を 2.5:1に混合したものに水道水を加え、含水率 65% の培地を調製した。供試培地はポリプロピレン製 850ml ビンに 550g を充填し、直径 12mmの接種孔を中央に 1 カ所あけた。その後、培地を118℃、60 分間の条件で高圧滅菌した。放冷後、供試菌を一ビンあたり約 10 g接種した。培養は、温度22 ± 1 ℃、相対湿度 65 %、暗黒下に設定した培養室で、35 日間実施した。培養が完了した時点で、菌掻き後、温度 15 ± 1 ℃、相対湿度 90 % 以上、照度200 〜 500lux の環境下で子実体形成を促し、きのこを生育させた。収穫は、傘が 7 分開きで直径 20mm前後のとき、株ごとビンから引き抜いて採取し、蔓延に要した日数、収穫までに要した日数、発生量および子実体形態調査を行った。
2. 子実体中のアミノ酸およびグアニル酸の分析
各16処理区から発生した子実体をビーカーに入れ、子実体生重量に対してその 10 倍量の蒸留水を加え、5 分間沸騰させた煮汁を冷却後、遠心分離を行い、上澄み液をφ 0.22mm フィルターでろ過した。サンプル 100 μ l に 0.02N HCl 900 μ l を加え分析用サンプルとし、自動アミノ酸分析装置(Hitachi L-8900)を用いて分析した。
3. 菌糸成長速度実験と子実体発生調査
適正培地の検討とアミノ酸分析実験結果を踏まえ、シイタケへの移行実験を行った。供試菌株は H607 号、H705 号(株式会社北研)と KV-92、森 XR1 号(森産業株式会社)を用いた。さらに供試材料には酒米精米過程で生じる赤ぬかを加え、適正培地の検討を行った。各栄養材を絶乾重量比で 1%から 10%の範囲内で配合し、攪拌後、試験管に充填しオートクレーブで高圧滅菌処理した後、クリーンベンチで種菌の接種を行った。培養槽で 25℃、暗黒条件下で培養し 3 日おきに菌糸生育先端部分の測定を行った。また、H607号と KV-92 に関して、子実体発生調査を行った。
4. 地域連携
今年の活動の大きな目玉の 1 つに生産農家への普及活動が挙げられる。大仙仙北地域から横手市雄物川地域に至るまで、複数の農家や法人でこの栽培方法を取り入れ、現在栽培を進めている。大事なことは、学校としての PR で終始するのではなく、地域農業・地域経済を支えている生産農家さんのために高校生としてどれだけ貢献できるのかが私たちの目指すプロジェクトでもある。具体的参加人数を数値で表すのは難しいが、冒頭にも述べたように関係機関及び生産農家との連携、商品化による地域の大型商業施設等での販売を通じてこの活動の地域波及効果は大きいと思われる。

成果・実績

発生量および子実体形態調査の結果、オール秋田県産の培地として、発生量・形態および栽培に要する日数において、規格外大豆を 50% +中白米ぬか25%+酒粕 25%を添加した培地が最も適していると考えられる。また、菌糸成長測定データで見るとKV92 の供試菌株が最も菌の蔓延速度が速く、中でも規格外大豆 5%添加の試験区が良好な成長を示す結果であった。発生個数に関しては規格外大豆と中白米ぬかの組合せが多く見られ、2.5Kg 菌床1袋あたり規格外大豆 100g 以下で良好な発生を示すことと、中白米ぬかは子実体の大型化に影響することが確認できた。
この研究成果は、昨年の 8 月に秋田市で行われた東北森林科学会においてポスター発表、9 月には東京農業大学を会場として行われた「日本きのこ学会」でプレゼン発表をし、多くの評価を頂くことができた。また、秋田県産業教育フェア研究発表部門においても最優秀賞を獲得。さらに、株式会社ヤマダフーズからお声が掛り、今後ビジネスパートナーとして共同研究や販売・流通面でのサポートを頂くことになっている。
今年も9月に県立広島大学で行われた日本きのこ学会にて発表を行い、「実用的な研究だ」「大学の博士論文でも十分通用する」などの評価を頂いた。さらに、私たちの活動が秋田県全体を動かし、次年度以降大型プロジェクト化が決定している。11 月以降は昨年のヒラタケに続き、低コストで機能性に富んだ新しいシイタケの生産にも成功している。今後も関係者と連携しながら、秋田県全体を巻き込んだ私たちの新しいグリーン・イノベーションで、さらなるきのこの成長戦略を考案し、実行していきたいと思っている。

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